第14話
教室の後ろの壁からは、無数の触手が生えている。何か、いや、アレックスが壁の少し手前の空間に出口を作って、そこからこちらを窺っているようだ。
姿かたちを一言で表現すればイソギンチャクだけど、そこから生えている触手は何本あるのか分からない。変なものを召喚したなぁ。
「どっ、どうする?」
「逃げよう!」
「逃がさないわヨ♪ あなたたち」
ひゅんっ!
行く手を遮るように、一本の触手が身体に絡み付こうとした。が、身体に当たる寸前の場所で、鈍い音とともに、触手が弾き飛ばされる。
……あれ? 触手が飛んできたあたりの空間が濃い緑色に波打ってる。池の中に石を放り込んだ時のような感じだ。
ナニコレ?
濃い緑色の波紋の向こう側では、触手は天井に当たってばらばらに砕け散っていた。
よく見ると、黒焦げどころか完全に炭になっている。燃え残った? ところは、うねうねと動き回ってる。
「防御結界とはヤるわネ。コれならどうかしラ」
今度は無数の触手が襲い掛かる。
だが、それは途中で凍りついたまま動けなくなっていた。
「……助かったよ」
「どういたしまして」
大地がデリンジャーを使ったようだ。
それも普段は麻痺の魔法が発動するようになっていたはず。そりゃあ氷結の魔法が組み込んであるけど、よくもまあ咄嗟に当てる事ができるなぁ。
「じゃあ、休憩という事で」
僕もデリンジャーを取り出すと、先生に向けて引き金を引いた。
「のおおぅ!」
2本の光条は、先生の身体に吸い込まれた。
………………
…………
……
「ほんっ、とに、あなたたチ…… もウなんかどうでもョくなってキた……」
マルシア先生は回復用のポーションを飲み乾すと、がっくりと肩を落とした。
…………悪ノリし過ぎたかな?
「先生?」
「何かしら」
「校庭の穴についてですけど… 避難命令が出ていませんでしたっけ」
そういえば校庭の穴には、未反応の魔力塊が埋まっているという話ですけど。
「ああ、それなら心配しなくてもいいわヨ」
「え?」
「そろそろ解除されても不思議なイし」
「なんでそんな事が分かるんですか?」
「うふふ、それは秘密」
この世界でも土曜日は学校はお休みです。
昔はお昼まで授業があったと聞いたことがありますけど、それって都市伝説のたぐいでしょうか。