幕間~佐奈の昼休み
午前中の授業は、集中できなかった。
つい感情的になって使ってしまった攻撃魔法が失敗したため。実際には発動していたはずなのに。そして、石橋が病院に担ぎ込まれたこと。
私ではない誰かが使った氷結の魔法のせいだ。
そして何より気になるのは、みんなの記憶が、曖昧になっている事。
共通しているのは、昨日の午後から今朝にかけて…… なのよね。
なんだかんだで昼休みになった。
とりあえず気持ちを切り替えて、と。
瑞希くん、今頃はお弁当の包みを開けて、ビックリしているんじゃないかしら。
だって、中身はミリタリー・レーションだし。
これは乾パンとチューブ入りのマーマレードと金平糖に、おかずが付いているという、栄養満点だけど味は微妙というか、保存食料よりはずっとマシという程度のものだから。
あくまでこれは普通一般のモノだからね。
でも、今回のレーションは特別製。
この前の海軍記念日のイベントで、付属のコンロで温める缶詰がセットになっている陸戦隊用のものを見つけたので、使ってみたわけ。
中身はポークシチューと、ソーセージのスープ煮だ。
「……でもさすがに意地悪だったかな」
本物のお弁当を取り出すと、1年生の校舎にレッツg『連絡します。生徒会長は、ただちに校長室まで来てください。繰り返します……』ちょっと待って?
ヤな校内放送を聞いたような気がする。
「さ~な?」
「なぁに?」
「また呼び出されちゃったわねぇ?」
「何もこんなタイミングで呼ばなくても、って思っちゃうけどね」
「仕方がないでしょ。お弁当は校長室に持ってくしかないわねぇ」
そう言って笑っているこの子はちょっと苦手。
名前は愛川・文香……あいかわ・ふみか。私よりも頭一つ小さくて、茶筒よりもスレンダーな体型という可哀想な人です。
それを補って有り余るのは、その行動力でしょうか。
実行力というか、とにかく元気な姉御肌。
「今度は何をしたのかな? おねーさんに言ったんさい?」
「さて何の事やら、お代官様。かいもく見当もつきませぬ」
「あんたが校長室に呼び出される時って、ぜ~んぶあの子がらみでしょうに」
「と、いうより…… いつ出来たんでしょうね、あの穴」
ためしにボケてみた。誤魔化せればラッキー♪
「えええええ? あれ佐奈がやったんじゃないの?」
「だいいち出来たのはいつの事なのよ」
「そういえば、そうね…… 朝は無かったような気がするし……」
やっぱりだ。文香の記憶も曖昧になってる。失敗に終わった魔法とはいえ、それなりに音や光は出ている。陸上部の朝練で校庭にいた文香が気が付かないわけがない。
というか、きっちり注目を浴びていたような気もするし。
「陸上部は朝練があったでしょ? 気が付かなかったの?」
「……そういえばそうね。あんた達は、いつも通りいちゃつきながらの登校だったし」
「そういう事。じゃあ、ちょっと行ってくるわね」
瑞希くんが屋上でネコまみれになっている時の別視点でした。