第10話
ネコマタが人間社会で生活しようとすれば『ヒト型』を取る事になるけれど、本来の姿ではない以上、くつろげるものではないんだろうね。
「……そういえば、さ」
「どしたのかにゃ?」
「鎮守の森って、初めからああだったかな?」
「そう言えば、最近は遊びに行かなくなったニャあ。で?」
学校の西側には鎮守の森がある。鎮守の森というからには、当然のことながら小さいながらも神殿があるし、一柱の武神が祀られている。
そしてその中ほどにある小さな丘だけど、高さは10メルトルくらいはあるので、校舎の屋上からよく見えるのだ。
その先には高校があり、クバツに向けての街道が… って、今はいいか。
「なんか丘の形が変わったような気がしたんだ。近くにあったクスの木が倒れちゃったせいかな。ずいぶん太い木だったから、樹齢もすごいんだろうね」
「あの木は古かったよ~ 1000年生きてたって、ばーちゃんが言ってたニャ」
「秘密基地なんか作るんじゃなかったかな」
「爺様が森の神様にお願いしてあるニャ…… お供え物もバッチリなのニャ」
「お団子や飲み物とか?」
そう言えばこんな時のお供え物って、どうすればいいんだろ。
鎮守の森って、神様のいるところだもの。ホントはこんな事をしたらダメなんだと思うけど、なんか… こう、居やすいんだよね。
お供え物をしてるなんて知らなかった。
変なところで迷惑かけちゃったのかな。
「食べ物じゃ御利益が薄いので、天城クンの庭に干してあったぱんつを……」
……ちょっと待った。
いま、聞き捨てならない単語が混ざってたぞ。
「……犯人はおまえかあぁあっ!」
「たった今思いついた嘘ニャ。もしかしてホントに盗まれた?」
「思い出したくもない……」
いつもと同じようなとりとめの無い与太話だけど。
……いつもと同じ?
いやちがう。
何かが違うような気がする……
「可愛いというのも大変なんだにゃぁ……」
加藤は、大きく欠伸をすると丸くなった。
「やっぱ疲れてるんニャ。そういう時は昼寝が一番ニャ」
「そう、かな… 昨日の記憶が飛んじゃってるくらいだから」
「…あの副会長のアタックは尋常じゃなかったからニャ~」
まあ、いいか…… って、加藤! 起きろ、起きてくれ!
僕は抱き枕じゃな……
まあいか。
もふもふだし、あったかいし。
幸いな事に、佐奈も来てないし。
……おやすみ。
鎮守の森…… 神社の周りにある森というか林というか。
明治神宮のそれは、まだ完成していないとか。なんでも100年計画を組んでいたとか。
今の日本で100年先の事を考えて計画を考えるなんて…… そんな能力あるわけないですね(笑)