静かな隣
放課後の図書室。
言葉を交わすこともなく、ただ隣に座って本を読む時間。
静かな空間の中で、彼女の些細な仕草や息づかいが、少年の心を大きく揺らしていく。
何も起こらないはずの一瞬が、確かに特別だった。
静かなはずの場所で、心だけがうるさかった。
放課後の図書室は、いつもより静かだった。
机の並びに沿って座ると、隣には彼女がいる。
外の喧騒は届かず、空気は柔らかい。
僕たちだけが世界に閉じ込められたようだった。
彼女はページをめくるたびに、指先を丁寧に動かす。その仕草は音さえ立てないようで、静けさの一部になっている。髪が肩にかかるたび、無意識にかき分ける。
その一つひとつが、図書室の中で宝石のように輝いて見えた。
マスク越しの呼吸に合わせて、時折メガネが曇る。白くもやのかかったガラス越しの瞳が、ほんの少し隠れるその瞬間に、胸がきゅっと締めつけられる。
見てはいけない気がして視線をそらそうとするのに、気づけばまた彼女を追ってしまう。
周囲には、本をめくる音と、遠くの空調の気配しかない。
それなのに、僕の心臓は大音量で打っていた。
静けさが、彼女の儚さや美しさを際立たせ、同時に僕の鼓動を無慈悲に浮き彫りにする。
ページをめくる音、指先の微かな動き、息づかい、そのすべてが僕の意識を独占する。
図書室はどこまでも静かで、僕の心の中だけが嵐だった。
僕はただ、隣で時間を共有する。
この瞬間を、静かに引き延ばしたい。そう思いながら、本の文字を追うふりをして、彼女の一挙手一投足を胸に刻んでいた。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
この作品の感想やブックマーク、評価をして下さるとありがたいです。筆者が泣いて喜びます




