前編:こうしてバトルは始まった
「いっっっ……!!」
今日だけでもう何度目だろう。左足に激痛が走った。
「ごめーんっ!タクト、大丈夫?」
お嬢様が手を合わせて謝罪しているが目が笑っている。どうせ反省はしていないのだろう。
「どうしていつもここのタイミングで足を踏むんですか!?一体何度私の足を踏めば……」
ここはきちんとお説教をすべきだと判断したのだが、タイミング悪くメイドが入ってきた。
「失礼します。お嬢様、旦那様がお呼びです」
「はーい!……それじゃあ私は行くから、タクトは休んでてねっ」
そう言うと廊下を駆けて去っていった。
仕方ない、休憩だ。前もって用意していた湿布を足に貼る。
「……っ」
冷却効果が神経にも効いたのか、腹立たしさがおさまった。
今週末にはお嬢様が通うダンス教室で試験が行われる。受かれば社交界デビューし、結婚することになるだろう。
「社交界デビューなんて絶対に阻止してやる……!」
そんなオレの思いに反し、1時間後旦那様の書斎から戻ったお嬢様が勢いよく扉をあけ放ち言った。
「タクト!ダンスの練習を始めるわよ!!」
「どうしたんです、お嬢様?」
「いいから練習よ!特訓よ!次の試験には絶対に受かってみせるんだからね!!」
(旦那様に何を言われたのだろう?)
あんなにやる気のなかったお嬢様をその気にさせるとはどんな手を使ったのだか。
とりあえず練習を再開した。
「!?」
まだ危ういところはあったが、一度も足を踏まれることがなかった。
(今まで足を踏まれなかったことは無かったのに……)
「お疲れさまでした、お嬢様。さ、車に乗ってください」
ダンス教室でも高評価だったのだろう。お嬢様は上機嫌でスタジオから出てきた。明日はいよいよ試験。おそらく合格するだろう。
助手席のドアを開け座らせる。危ないから後部座席へ、と何度言っても「二人きりの時だけは」と言い張るのでここはお嬢様の定位置だった。
運転席に乗り込むと、お嬢様が言った。
「タクト、何かあった?」
ここ数日オレに元気がないことを見破っていたお嬢様が心配そうに見上げてきた。
「……社交界に出られたら、お嬢様はご結婚されるのですか?」
「まあ、いずれはそうなるのかな?」
頬を染めるお嬢様を見て、無意識に口づけていた。
「……タクト?」
驚く彼女を抱きしめる。
「そんなこと、させねーよ」
翌日。
「それでは行きますよ、お嬢様」
「うん!頑張ろうね」
お嬢様がオレの手をとる。
この試験、何としても足を踏ませてやる!
「なろラジ」の「タイトルは面白そう!」で紹介していただいた作品です。
男性目線になっています。
お嬢様目線の短編もありますので、2人のすれ違いを楽しんでいただけたら幸いです。
後編ではその後のお話も書く予定です。




