第71話 首都の情報
俺は皆を集めて首都を調査していた配下の話を聞いた。
配下にはヨーラムさんに頼らない情報収集をするよう指示していたので、首都でも情報収集をしていた。
俺のもとへの帰還方法は、わざと死ぬことだ。
俺が毎日朝晩、魔石を砕かれて死んでいる配下がいないか確認して、死んでいる配下がいたら復活させて事情を聞く。
この配下も朝確認したら死んでいたので復活させた。帰還のために別の配下に魔石を砕かせてわざと死んだそうだ。
この方法なら遠くにいても俺のもとへの移動時間はほとんどかからないので、この情報は最新のものだ。
配下の情報はこうだ。
レイライン王国のギルバーン討伐軍は、俺達の拠点があるレバニールに向かっていたが、突如方向を変えてゴルドバの首都に攻め込んだ。理由は不明。
西側主要国による世界会議の決定のもと送り込まれてきた軍であったため、この国の上層部は完全に油断していて、首都はあっさりと占領された。
ヨーラムさんと繋がりのあった有力者も捕らえられてしまい、ヨーラムさんは従業員とともに首都に隠れている。
貸し出しているアンデッド作業員は見つかると浄化されてしまうので、水中に隠した。
今のところまだ討伐軍はレバニールに向かう様子は無いので、討伐軍がいつレバニールに来るかは不明。
ヨーラムさんからの伝言で、ヨーラムさん達は自力で脱出してレバニールに向かうので、レバニールにいる家族と関係者の避難をお願いしたい。避難の方法は事前にヨーマ君に伝えてある。
この配下が持っていた情報は以上だ。
ギルバーン討伐軍がゴルドバ商業連合国を攻撃するとは完全に予想外の展開だ。レイライン王国とは関係が悪いと聞いていたが、この国は多くの国が拠点を作って商売をしているので、この国を攻めると多くの国を敵に回すため、攻めることはできないと聞いていた。
なぜこんなことになったのか配下達の予想を聞いてみた。配下の予想はこうだ。
恐らくレイライン王国は、最初からゴルドバを占領して我が物とするのが目的だった。
世界会議参加国がそんなことを認めるとは思えないので、世界会議も騙されていたのだろう。
これまでは多くの国を敵に回すことになるので攻めることができなかったが、多くの国を敵に回しても勝てる戦力を手に入れたのだろう。
そして、それはおそらく大勢の日本人だろう。
これが配下達の予想だ。配下達はこれまで情報収集していたし、色々な国の出身者がいて各国の色々な事情を知っている。レイライン王国の出身者も多い。恐らくかなり精度の高い予想だろう。
日本人が原因かよ・・・
俺達も日本人が7人いるが、すでに世界上位の強さを持つ集団になっている。
勇者や聖女がいるとはいえ7人だけでこれなのだから、強力なユニークスキルを持つ日本人が何十人もいれば、多くの国を敵に回しても勝てると判断しても不思議ではない。
「話は分かったわ。早急に動く必要があるわね。ヨーマ君。避難方法というのはどういう方法なの?」 俺が色々考えていると、ヨゾラさんが話を進めた。
「はい。父とは家族や関係者を守ることに失敗した場合の対策を話し合っていました。案はいくつかありますが、今の状況で使える方法は、船で南東の島に避難することです。」
「南東の島?」
「はい。レバニールから南東には、南東大陸との貿易の中継地点になっている小さな島があります。そこには食料などが補給できる小さな港町があります。討伐軍は船を持っていないので、島に避難すればひとまず安全だと考えています。」
なるほどな。討伐軍は陸路で来たから海へ逃げれば追って来れないということだな。ヨーマ君はいつもの口調ではなくなっている。ヨーマ君も余裕が無いようだ。
「お父さん達は大丈夫でしょうか・・・」 ヨーコちゃんは心配そうだ。
「首都に追加で配下を送り込みます。ヨーラムさんは自力で脱出する方針のようですが、偵察や連絡役は必要でしょうし、いざとなったら配下に救出させましょう。」
潜入が得意な配下を首都にに送ろう。今後も連絡のために死に戻りで戻ってくるだろうから、送り込まないと首都の人員が減ってしまうしな。
「すみません。よろしくお願いします。」
「まあヨーラムさんも高レベルなので大丈夫でしょう。」 ヨーコちゃんを安心させるために俺は言った。皆も少し安心したようだ。
「そうね。じゃあさっそく私達はレバニールに向かいましょう。」
俺達は最低限の防衛要員を残して、レバニールに向かった。侯爵や執事達などの非戦闘員の主要配下も相談相手にしたいので連れて行く。
晴れているが、時間が惜しいのでダメージを無視してカイザーゴンドラで飛んだ。再生を使いながらであれば晴れていても行動できる。MPが減り続けるが、カイザーはMPも多いし、俺の配下回復もあるので長時間活動可能だ。
数時間飛んで旧拠点に到着した。直接町に行きたいが、カイザーが行くと大騒ぎになるので仕方がない。ヨーマ君とヨーコちゃんはすぐに避難準備のために町にあるヨーラムさんの商会に向かった。念のため配下も何人か同行させた。
俺は主要配下を出して相談して、夜になったら首都の近くまでカイザーゴンドラを飛ばして偵察配下を運ばせることにした。しかしどんなユニークスキルを持っているか分からないので、俺は首都には近づかない。カイザーも首都から見えない位置までだ。ドラゴンには警戒しているだろうからな。夜でも察知されるかもしれない。それと貸し出していたアンデッド作業員が100人ほど首都にいるので、今後は何もなくても毎日作業員を死に戻りさせて定期連絡をさせることにした。定期連絡が無かったらトラブルが起きているということが分かるからだな。
ヨーマ君とヨーコちゃんにも定期連絡のことは配下に伝えにいかせた。二人も基本毎日定期連絡の内容を聞きにくるそうだ。来られない時は配下が伝えに行く。
ヨゾラさんとユリアさんは俺と一緒に話を聞いている。二人とも考え込んでいる。ヨゾラさんは首都に乗り込むとか言わないか心配だな。
「二人は何か意見ありますか?」 一応聞いておこう。
「結局討伐軍はこっちには攻めてくるのかしら?」
「主目的がギルバーンではなくこの国だったみたいなので、続報を確認しないと分かりませんね。ただ、この国の全土を占領する気なら、いずれはここもレイライン王国になってしまうので、ここにはいられなくなるとは思いますが。」
「やっぱりそうよね・・・」 この町にいられなくなるのが悲しいようだ。
「新しい拠点に、念のため他の人の避難用の家を建て始めてはどうでしょうか? 悪天候などで船が出せないこともありますし、すぐ避難できる場所は必要だと思います。」 ユリアさんが言った。
確かに船が出せない事態はありえるな。この世界の船は悪天候に弱そうだし。それにもともといざとなったらヨーラムさんの奥さんと従業員を避難させるという話だったしな。
「そうですね。念のためすぐに建て始めます。」
大工は新拠点に置いてきているので、遠隔命令のスキルで大工に適当な空いている場所に避難民用の家を建てるよう指示した。
俺はヨーラムさんの無事を祈りながら、今後どうするか悩んだ。




