外伝15 再び戦いへ
私は、使節団の事務室に戻りアインと使節団の担当者に勇者との話し合いの結果を伝えた。
私が引き抜かれてしまったことにアインと使節団の担当者は残念そうな顔をしていたが、予想されていたことの一つだったので、話はスムーズに進んだ。
本国から正式な命令が下るまではアインは私の秘書として働いてくれるらしく、勇者達からの製作依頼の事務処理もいつも通りやってくれた。
次の日、案内された製作施設で待っていると、製作するアイテムの材料と共にミレイがやってきた。
製作するアイテムは、即死を防ぐタリスマンと魔法の靴とマジックバッグを4人分、それと欠損も治せる最上級の回復ポーションだった。材料はかなり貴重な物のはずだが、すぐに出てきたということは、この状況を予想して事前に用意してあったのだろう。
ミレイは相変わらず私を睨んでいて、警戒しているようだ。まあ仕事はしてくれるようなので問題ない。
作業をしているとミレイが話しかけてきた。
「アタシはまだアンタを仲間と認めたわけじゃないんだからね。」
まあ勇者に近づくなということだろう。仕事の邪魔をされると面倒なので興味がないことを伝えておこう。
「勇者に近づくつもりはないから安心して。」
私はそう言うとミレイはキョトンとした顔をしている。そんなに意外だったのだろうか?
「そうなの? う~ん。ホントかな~?」
なぜか怪しんでいる。
「失礼します。」
作業場にアインが入ってきた。
「こちらは検品に出してよろしいですか?」 私が作ったタリスマンを確認しながら言った。
「ええいいわ。」 アインは完成した品を提出するために持って行った。私が作った物は、この国の鑑定士が確認することになっている。
「アンタの秘書さんちょっと頼りないけどカワイイ系の凄いイケメンじゃん。なるほどね~ ああいうのが好きなんだ~ 確かにコーキとは少しタイプが違うね~ 私はコーキの方がいいと思うけど~」
誤解しているが面倒なのでそのままにしておこう。
「じゃあさ、じゃあさ、仲間と認めてあげるからさ、協力してくんない?」
「協力? 勇者と付き合っているんじゃないの?」
「それがさ~ コーキにもアタシにもさ~ 色々言ってくんのよ~ 政略結婚ってやつ? をさせたいらしくてさ~」
「なるほど。」 ありそうな話だ。
「コーキは大丈夫って言っているけど~ 絶対色々仕掛けてくると思うんだよね~ たぶん戦いにも女がついてくると思うし~ だからさ~ お願い! ね? いいでしょ?」
・・・面倒だけど断ったらもっと面倒そうだ。
「分かったわ。ただしユージの討伐が終わったらね。ちゃんと協力してくれるならこっちも協力するわ。」
「やった!死霊術士くらいうちらなら余裕だって、アスカっちは心配症だな~」
・・・まあいいか。協力してくれるなら問題ない。
その日はタリスマンとマジックバッグとポーションを作り終わった。今までは1日で1つか2つが限界だった。装備品は製作と合成と付与で1つ作るのに3日かかったりしていた。これだけの数を余裕で作れるようになるとは、やはりMP無限の恩恵は凄まじい。
魔法の靴は使う本人の足を確認した方が良い物ができるし、武器や防具も使う人の能力などを細かく確認して作った方が良いので、皆に集まってもらうことにした。
次の日製作施設に日本人が集まった。
「やあアスカ。製作は順調だそうだね。この国の担当者も君の能力には驚いていたよ。事前に聞いてはいたが想像以上だったそうだよ。」 勇者コーキが言った。
「ミレイのおかげよ。以前はこうはいかなかったわ。」
「フフン。ミレイちゃんにまかせてよ。」 ミレイは大きな胸を張っている。
ミレイはエロカワ系の男が好きそうな見た目をしているので、男どもがミレイの胸をチラチラ見ている。ミレイも慣れているのか気にしていない。
「それよりよくタリスマンの材料が分かったわね。」 私は作業をしながら、気になっていたことを聞いてみた。
魔法の靴やマジックバッグは私がメルベルにいた時に鑑定した物なので、この国がレシピを知っていてもおかしくないが、タリスマンはルディオラ太陽神国の教主の装備だ。簡単に材料が分かるとは思えない。
「ああ、実は俺達が神の指示を受けてこの世界に来たことや、魔王復活のことはすでに国に伝えてあるんだ。最初はいくら勇者の言うことでも半信半疑だったようだけど、この世界に元からいたエルフの国の預言者や獣人の国の占い師も似たようなことを言っていて、聖女も魔王については神託として国に伝えていたらしい。色々な情報から信じてもらえた。魔王のことは各国にも共有されていて、魔王と戦う勇者に協力するのは国際的な義務のようになっているそうだ。だから勇者が使う装備の情報も教えてくれるんだ。」
「そうなのね。」 この世界の国は結構連携がとれるようだ。魔王相手に共に戦った歴史があるからだろうか。
魔法の靴を作り終わった私は、作る必要がある武器や防具の確認を行った。勇者の武器と鎧はすでに伝説級の物があるらしく、靴だけあればいいようだ。伝説級の物は恐らく作れないが後日鑑定させてもらうことにした。他の3人は武器防具も私が作った方が強いようだったので、武具の形状や種類を確認して材料を手配した。
そうして装備を作りながら出発を待ったが、調整は思ったよりも時間がかかった。
各国が勇者のパーティメンバーに人を送り込みたがったためだ。勇者の初めての戦いの旅ということで、政治的な思惑が色々あったらしい。しかも聖女を殺した死霊術士を討伐するので、ルディオラ太陽神国からも人が送られて来た。太陽の炎のギリアス隊長と前回も参加したエルフの弓士フェリオールだ。話を聞くと、太陽の炎は聖女を守り切れなかった責任を負わされているため、隊長自ら出撃となったようだ。今回は祓魔師ゲインは来ていない。ゲインは隊長の留守中の指揮を任されているようだ。
前回の戦いでゲインは私を助けなかったので、最初は恨んだりもしたが、冷静に考えられるようになるとゲインの判断が間違っていたとは言えない。ゲインは嫌な男だが、無能ではない。ゲインは終始様子見ばかりしていて前半もあまり戦っていなかったが、予備戦力として重要な局面で戦うために待機していたと考えれば妥当だし、後半のあの危機的な状況でゲインは打開策を考えつつ指揮をとっていたらしい。本陣は混乱していたがゲインのおかげで前線は戦いを継続できていたそうだ。指揮を放棄して私を助けることが正しい判断とは言えないだろう。実際ゲインが撤退の指示を出さなければ全滅していた。
そしてようやく調整が終わり、作戦会議が行われた。
今回の勇者パーティのメインメンバーは11人だ。
勇者コーキ
大魔導士ミレイ
祓魔師キヨヒコ
山賊ヤマト
錬金術師アスカ
人間の聖騎士クライン
ドワーフの盾士グラン
猫獣人の斥候ニャニ
エルフの神官ミレーヌ
太陽の炎の隊長聖騎士ギリアス
エルフの弓士フェリオール
ギリアス隊長とフェリオールは今回限りのメンバーだが、他は今後もずっとパーティーメンバーとして行動する予定だそうだ。
この他にも最寄りの町まではサポートメンバーが10人ほどついてくる。アインもついてくるようだ。
作戦はシンプルだ。アンデッドが出てきたらキヨヒコがまとめて浄化して、ユージは遠距離攻撃担当が死体収納の射程外から攻撃する。攻撃が効かない女が現れたら、ヤマトがスキルを無効化する。他のメンバーは不意打ちなどから後衛やヤマトを守ったりアンデッド以外の敵が出たら戦う。基本はこれだけだ。
勇者コーキのユニークスキルの英雄闘気は、私の詳細鑑定によって即死も防げることが分かった。そのため、屋内や障害物などでユージに遠距離攻撃を当てるのが難しい状況の場合は勇者が近づいて仕留める。
英雄闘気は発動すると全ステータス2倍、HP自動回復、状態異常無効と即死無効の状態になる。非常に強力だ。発動中はMPを消費しつづけるが、勇者はMPも多いので、1時間以上発動しつづけられる。そしてミレイがいれば発動時間は無限だ。経験値も入るのでレベル上げもできるようだ。
勇者はステータスが多く上がるようで、まだレベル33だが総合的なステータスは私とあまり変わらない。これが2倍になり、さらに聖剣の力で物理攻撃と魔法攻撃が1.5倍になるらしい。物理攻撃と魔法攻撃は3倍になるということだ。物理攻撃は5000くらいになる計算だ。勇者が正面からの戦いで負けることはないだろう。
会議の後、メンバーの実力を把握するため、得意技を見せたり手合わせをしたりした。
今回初めて会った4人は、魔法の靴を使った高速戦闘に驚き、説明すると皆魔法の靴を欲しがった。今後も仲間として共に戦う予定の4人なので、材料を用意できたら作ると約束をした。
対ユージ用の槍投げを披露すると、これにも皆驚いていた。どうやら今回も一番威力がある遠距離攻撃は私の槍投げのようだ。とはいえ範囲は魔法の方が上だし、連射力などは弓の方が上なので、他のメンバーと比べてそこまで極端に強いわけではない。遠距離攻撃以外も含めれば勇者の攻撃が一番強い。
準備が整い出発することになった。
勇者の出撃は特別な行事のようで、出発式とパレードが行われた。市民に対しても勇者をアピールしたいのだろう。
私は目立ちたくなかったが、勇者パーティの一員になってしまったので、他のメンバーと一緒に目立つ位置に立たされてしまった。勇者とミレイは笑顔で手を振ったりしている。私はヤマトやキヨヒコと一緒に無表情でやりすごした。二人も目立ちたくないようだ。
移動中は馬車に乗っているだけなので特に何もなかったが、宿に宿泊する際にミレイが話しかけてきた。
「アスカっち。やっぱり美女が送り込まれてきたよ。ニャンコとエルフだよ。コーキを狙ってるんだよ。」
どうやらパーティメンバーのニャニとミレーヌが気になるらしい。確かに二人とも美人の若い女性だが今のところ色仕掛けなどをしてくる様子はない。
「そう? 二人は大丈夫そうに見えたけど。」
二人とも勇者パーティのメンバーに選ばれた高レベル者だ。命をかけてレベル上げをしてきた一流の人材のはずだ。プライドもあるだろうし、色仕掛けのようなことはしてこないのではないだろうか。
「だって。めちゃめちゃカワイイよ。ありえないでしょ。」
まあ偶然美人だったわけではないだろう。本人の意思はともかく派遣した人はそういう狙いもあるだろう。
「そうね。でも本人達は今のところその気は無いみたいだし、しばらくは大丈夫。それよりサポートメンバーで付いてきている人達の方が怪しいわ。」
一緒に戦う仲間と仲たがいをされても困る。とりあえず簡単に入れ替え可能なサポートメンバーとやりあってもらおう。
「あ~確かに!あっちの人達も美人が多いしコーキを見る目も怪しいかも~」
サポートメンバーは指揮官のおじさん以外は美男美女ばかりだ。明らかに狙っているだろう。勇者だけでなく全員がターゲットだと思われる。
「そういえば感謝してよね。アスカっちの秘書君も一緒に引き抜くよう言ってあげたんだから。」
・・・知らない間にアインも引き抜かれていたようだ。だからついてきたのか・・・
悪いことをしてしまった。私が誤解させたままにしたせいだ。あとで聞いてみて、本人が帰りたいようならルディオラに戻してあげよう。
「・・・知らなかったわ。今度から先に教えてよ。」
「え? あ!ごめ~ん。そっちで色々しちゃってた? ドラマティックな展開とかを邪魔しちゃったかな? 今度から言うようにするね。」
また何か勘違いをしているが、今は置いておこう。ユージを殺してからだ。
その後、移動中にニャニとミレーヌにも確認してみたが、やはり勇者に言い寄るつもりは更々無いようだ。
こじれると面倒なので、二人にも事情を伝え、ミレイと仲直りさせた。まあ仲たがいしていたわけではないが。ミレイはサポートメンバーを警戒中だ。
アインにも話を聞いてみたが、伝説の勇者のお手伝いができると喜んでいたので、そのままにすることにした。
ゴルドバにも問題なく入国することができた。どうやらゴルドバはユージの討伐をしてほしくないようだったが、多くの国が後ろ盾になっている勇者の意向には逆らうことはできないようだった。
詳細は不明だがユージはゴルドバの中枢にも食い込んでいるらしい。やはり油断ならない相手だ。アンデッド以外の邪魔が入ることも考えた方がいいだろう。
移動中は特に問題はなく、私達はレバニールの町についた。
前回の戦いの雪辱を必ず晴らし、今度こそユージを殺して見せる。
季節はすっかり春になり、私達が異世界にきて2年が経っていた。
私のレベルは41になっていた。
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名前 アスカ
種族 人間Lv41
年齢 20
職業 錬金術師Lv41 鑑定士Lv40 槍士Lv39 戦士Lv33
HP 11611/11611
MP 14261/14261
身体能力 63+7
物理攻撃 2171+300
物理防御 1391
魔法攻撃 911+450
魔法防御 870
ユニークスキル
詳細鑑定
スキル
錬金
錬金レシピ
修復
付与
合成
複製
大量錬金
錬金術魔導書作成
鑑定
鑑定結果記載
鑑定記録
偽装解除
鑑定妨害
鑑定魔導書作成
槍術
パワースラスト
ハードチャージ
スマッシュジャベリン
ブロウスイング
ポールハイジャンプ
フォーリングアサルト
身体強化
物理攻撃強化
物理防御強化
魔法防御強化
威圧
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