外伝14 勇者の仲間
外交官などの使節団と共にレイライン王国の首都に向かった。
途中私が最初にいた町のメルベルにも一泊したので、その際にお世話になったユリウスさんやゼペックさん達にも挨拶をした。
皆突然いなくなった私に対して何も言わずに無事を喜んでくれた。アンデッド討伐部隊に所属していることを伝えると少し微妙な表情をされたが、歓迎してくれた。私の退職は穏便に済むようユリウスさんがうまく処理しておいてくれたそうだ。メルベルは今、侯爵の跡目争いが起きているせいで荒れているらしい。ユージの悪影響がこんなところにも出ている。
私は皆に仕事が終わったら改めてお礼に来ることを伝えた。皆をあまり心配させたくないので濁したが、仕事というのはユージへの復讐のことだ。ユージを殺したらまたここに来ようと思う。
レイライン王国の首都に着くと、歓迎の式典やパーティーが行われた。
私は用意された女性上級神官用の礼服に袖を通し、秘書のアインを連れて式典とパーティーに出席した。
幸いアインは私に言い寄ってきたりすることもなく真面目に働いている。本人は何も言われていないのかもしれない。悪い人間ではなさそうなので、変なことをしてこないうちは、仕事では頼らせてもらおうと思っている。
式典やパーティーはいかにも中世貴族といった豪華な物で、町とはまるで別世界だ。ルディオラ太陽神国では私はパーティーに出たりする立場ではなかったので、豪華なパーティーに出るのはゴルドバとここで2回目だが、私はこういった豪華なパーティーは、国民の税金を無駄にしている気がしてしまい、あまり好きになれない。まあ実際には外交上の意味があって無駄ではないのかもしれないが。
アインと共に隅の方で食事をしていると、会場の前方中央で勇者が紹介された。
やはり勇者は黒髪黒目の日本人のようだ。長身で顔もスタイルも良く、爽やか系で日本ならアイドルができそうな容姿だった。豪華な衣装もまるでアイドルのステージ衣装のように見える。
周囲の反応を見てもやはり女性に人気があるようだ。男性からの反応も悪くない。人気を得るために色々しているのかもしれない。
私も外交使節団の一人として勇者に挨拶することになった。
「アンデッド討伐隊「太陽の炎」所属、上級討伐隊員のアスカと申します。」 私は教えられたとおりに挨拶をした。
「勇者のコーキです。こちらの申し出を受けてくれてありがとうございます。後日話し合いましょう。」 勇者は爽やかな笑顔で言った。やはり爽やか系のようだ。
「ええ。よろしくお願いします。」 私は無難に済ませてその場を終えた。
勇者は他にも多くの人と挨拶をしていて忙しそうだ。この場では話す時間はないのだろう。
勇者の後ろを見ると黒髪黒目の男女がいた。男2人と女1人だ。おそらく日本人だろう。日本人を集めているのかもしれない。
次の日は、各部署への挨拶と事務手続きで1日が終わった。基本はアインに任せているので、私は軽く挨拶して書類にサインするだけだ。
そしてさらに次の日、勇者との話し合いの場が設けられた。
どうやら勇者との話し合いの場に入れるのは私だけらしい。日本や神の話をするのかもしれない。アインや他の使節団の人達は残念そうにしていたが、特に抗議したりするつもりはないようだ。勇者の機嫌を損ねたくはないのだろう。
案内された部屋は豪華な応接室の様な場所だった。中には勇者を含めて4人の日本人がいた。パーティー会場で見た人達だ。
「やあ待っていたよ。礼儀とかは気にせず座って楽にしてくれ。」 勇者が声をかけてきた。公式の場のような態度ではなく普通に話したいのだろう。
「ええ。わかったわ。」 私は答えた。
メイドがお茶を出した後、部屋から下がっていく。これで部屋にいるのは日本人だけだ。
「念のため最初に伝えておくが、俺達は君のこの世界での経歴や職業、ユニークスキルの詳細をすでに知っている。誤解しないで欲しいんだけど、別に無理に調べさせたわけではなく、君のことを知りたいと言ったら、君の国から聞いていないことまで詳細が送られて来たんだ。この国ではユニークスキルの情報は隠すのが当たり前だったから驚いたよ。」
どうやら私の事はかなり詳しく知られているようだ。おそらく私を追い出したい勢力が情報を送ったのだろう。
「・・・そうなのね。心当たりがあるから問題ないわ。」 勇者に文句を言っても仕方がない。
「分かってもらえて良かった。ちょっと気にしていたんだ。こちらだけ一方的に知っているのも今後のことを考えると良くないから、自己紹介もかねて軽くこちらのことも教えておくよ。まず俺は勇者のコーキ。ユニークスキルは英雄闘気だ。攻防ともに凄く強くなるスキルだ。」
ユニークスキルも教えてくれるらしい。やはり私を仲間にしたいのだろう。ユニークスキルはシンプルに強くなるスキルのようだ。
「アタシは大魔導士のミレイ。ユニークスキルは無限魔力。MPが無限に使える。」 ミレイは小悪魔系のかわいい女の子だ。勇者にくっついて座っていて少しこちらを睨んでいる。
勇者の恋人だろうか。睨んでいるのは勇者を取られないように牽制しているつもりかもしれない。少し面倒だが気にしなければいいだろう。MP無限の大魔導士は強そうだ。
「僕はエクソシストのキヨヒコ。ユニークスキルは広域展開。超広範囲に魔法やスキルが使える。」 キヨヒコはキッチリとした髪型の神経質そうなタイプの男だ。
「祓魔師だろ? いい加減中ニ病みたいなこと言うのやめろよ。」 もう一人の男がからかうように言った。
「うるさい!神の部下がエクソシストと言ったんだ!神の部下が言ったんだからエクソシストが正式な読み方だ!君たちやこの世界の人が間違っている!」
エクソシストとは祓魔師のことらしい。どうやら本人は正しい読み方に拘っているようだ。どちらでもいいが祓魔師なら浄化ができるはずだ。広域展開の性能次第では一人でアンデッドの軍勢を浄化できるかもしれない。かなり期待できそうだ。
「へいへい。俺は山賊のヤマト。ユニークスキルは能力強奪だ。スキルを奪うことができる。ぶっちゃけ俺のスキルが一番強い。ユニークスキルも奪えるぜ。」
「ユニークスキルを奪う?!」 恐ろしく危険な能力だ。
・・・私が仲間になることを断ったらスキルを奪われるかもしれない。
「おいおい。あまり警戒させるようなことを言うなよ。大丈夫だ。安心してくれ。奪うといっても一時的だし、相手のHPを0にしたり殺したりしたらスキルも消えるから、スキルのために人を襲ったりすることはないよ。戦うと強いというだけだ。」 勇者コーキが言った。
「おいおい。まだ仲間になると決まっていないのにバラすなよ。」 ヤマトが勇者に抗議した。演技には見えない。どうやら事実のようだ。
・・・それならスキルのために人を殺したりすることはないか。一時的というのがどのくらいの長さかにもよるが、私が断ったとしても敵対していなければ私に能力強奪を使う意味はないだろう。
ヤマトはがっちりとした体型で、ぼさぼさ頭の粗野な感じの男だ。失礼かもしれないが、山賊と言われればそう見える。
「仲間にしようという相手を怖がらせてどうするんだよ。というか仲間になってくれと申し込む前に言うなよ。」 勇者も困り顔だ。
放っておくと話が進まなそうなので、私から声をかけよう。
「一応私も自己紹介しておくわ。錬金術師のアスカよ。ユニークスキルは詳細鑑定。知っていると思うから説明は省くわ。」
「ああ。ありがとう。それでぜひ俺達の仲間になってほしい。俺達はいずれ魔王と戦わなくてはならない。その時に君の強い装備を作ったり、相手の弱点を見抜いたりする能力があれば凄く心強い。戦っても強いと聞いているしね。」 勇者が言ってきた。
どうやら装備作りだけでなく戦闘で相手を鑑定する役目も考えているらしい。恐らく攻撃があまり効かない敵などに出会うことを想定しているのだろう。確かにユージと戦った際も、私が敵の張っていたドームを鑑定できていれば対処できた可能性はある。魔王や配下の魔物も似たような能力を持っているかもしれない。戦闘でも私のユニークスキルは重要だろう。
だが今の私にとって重要なのは魔王よりユージを殺すことだ。予定通りユージを殺すことに協力してもらおう。ユージを殺すことができるのであれば魔王退治の仲間になってもいい。
「仲間になっても良いけど条件がある。」
「うん。どんな条件だい?」 勇者は聞いてきた。
すでに予想できているような顔だ。ユージの情報も得ているのだろう。
「死霊術士のユージを殺すことよ。それに協力するなら仲間になるわ。」
「ユージの詳細は聞いているよ。この国の貴族を殺したし、罪のない人を大勢殺したようだね。実は俺達がここにいるのもユージに間違われて鑑定されたからなんだ。」
どうやらユージに間違われて国に見つかったようだ。
「黒髪黒目の男だというだけで疑われたからね。大量虐殺をするなんて同じ日本人として信じられないよ。」 キヨヒコも間違われたようだ。
「おいおい悪いヤツなんてどこにでもいるぜ。日本人とか関係ねえよ。」
「ヤマトも悪人だもんね。悪人どうし気持ちが分かるの?」
「誰が悪人だ!一緒にするんじゃねえよ!」
「でも山賊なんだから犯罪者じゃん。」
「うるせえ!山登りが好きなだけだ!犯罪なんてしてねえ!」
・・・とりあえずユージのことは知っているようだが、協力する気はあるのだろうか?
「あ~みんな、アスカさんが困っているよ。まあ何だ。実はアスカさんの要求は予想していて、事前に話し合っていたんだ。ユージは野放しにはできないから退治しようという結論になった。聖女もやられてしまったようだし、このままだと俺達日本人の立場も悪くなるからね。戦いの詳細も見たけど俺達の能力なら問題なく勝てるだろう。」
どうやら協力してくれそうだ。
「僕の能力ならアンデッドの大軍も簡単に倒せるからね。」 キヨヒコが言った。
やはり広域展開はかなり範囲が広いようだ。それならまとめて浄化できるので、アンデッドは問題ないだろう。
しかし、バリアを張ることができて攻撃も効かない女がいるが大丈夫だろうか。他の生き残りの目撃証言でバリアを張ったのも攻撃が効かないのも同じ女だということがわかっている。
「バリアを張る攻撃が効かない女がいたけど、知っている?」
「ああ聞いてるぜ。そいつは俺の能力を使えば問題ないぜ。」 山賊のヤマトが答えた。
詳しく聞くと、能力強奪は光弾を放って光弾が当たった相手のスキルをランダムで一つ奪うスキルで、放出系のスキルや魔法に当たった場合は当たったスキルや魔法を奪うらしい。バリアに当てればバリアを出しているスキルを奪いバリアは消えるそうだ。それなら敵のドームを消せるだろう。やはり非常に強力なスキルだ。
「でも山賊は弱いんだよね~」 ミレイが言った。
・・・山賊は弱いらしい。
「うるせえ!スキルを借りれば強ええよ!何なら俺が全員のスキルを借りて一人で戦っても勝てるぞ!」
どうやら山賊が弱いのは本当のようだ。まあ所詮は山賊なので騎士や剣士よりは弱いのだろう。しかし全員のスキルを一度に借りたりできるようだ。一時的とはいえユニークスキルを一人で大量に所持できるのは破格の能力だ。
「え~ヤマト一人じゃ不意打ちされてあっさりやられそう~」
「う!いや、感知系のスキルをその辺の斥候から借りれば大丈夫だ!」
「でも忍者とかいるらしいよ~。忍者だよ~。普通のスキルじゃ無理なんじゃないの~」
「う、うるせえ!」
「キャハハ!」
「まあまあ俺達全員で行った方が確実だろう。アスカさんには念のため即死を防ぐアイテムや装備などを色々作ってもらいたい。材料は用意させる。」
「分かった。でもMPの関係で装備を作るのは結構時間がかかるわ。できればユージの討伐を優先してほしいわね。」
「もちろん先延ばしにしたりはしない。調整がつき次第出発しよう。装備作成はそれまでの間でいい。あとMPの問題ならミレイがいれば大丈夫だ。ミレイはMP譲渡のスキルも持っている。ミレイも協力してくれよ。」
「え~分かった~。その代りコーキもアタシのお願いきいてよね~」
「ああ。」
MPが譲渡できるのか。それなら実質仲間全員MP無限みたいなものだ。無限魔力は予想以上に強いかもしれない。
その後いくつか確認をしてその場は解散となった。
勇者の仲間になることになってしまったが、今度こそユージを殺すことができそうだ。
しかし油断してはいけない。今度こそ確実にユージの息の根を止めなければ。しっかり準備しよう。




