外伝13 勇者の要請
私は泣いた。
私の胸の中は、敗北感と仲間を失った悲しみとレオスに会ったショックがごちゃ混ぜになっていた。
乗ってきた船で割り当てられた自室で泣いていると、いつの間にかルディオラ太陽神国に戻ってきていた。
港から首都の大神殿に戻ると事情聴取を受けた。私は自分の行動と見たものを全て伝えた。
聖女の死の責任を負わされるかと思ったが、ギルバーンを仕留めた功績があったためか、何も言われなかった。
国の上層部は紛糾しているようだが、私が呼ばれることはなく、特に罪に問われたり、責任を負わされたりはしなかった。
悲しみが落ち着いてくると再び胸の黒い炎が憎しみで激しく燃え上がるのを感じた。
戦場で会ったレオスのことを思い出す。あれは間違いなくレオスだったが、私に対して何も反応していなかった。私は顔を隠したりはしていない。まともなレオスの意識があれば私に声をかけたはずだ。やはりレオスの意識を乗っ取りアンデッドにして操っているのだろう。セイラとガオルも同じ様に操られてしまったのだろうか。考えるだけで苦しくなる。
「ぐぅぅ・・・」 私は思わずうめき声をあげた。戦いのことを思い出すたびに胸が締め付けられ、憎しみが増していく。
このままでは終わらせない。絶対に許すことはできない。あの男を殺すまでは絶対に止まれない。
燃え上がる復讐心に突き動かされ私は行動を開始した。
まず私はアンデッド討伐部隊「太陽の炎」の隊長に面会を申し込んだ。再度ユージの討伐隊の派遣を促すためだ。
2日ほど待たされたが、面会が叶った。
「失礼します。」 私は隊長室に入った。
「うむ。」 隊長は執務机に座って事務仕事をしているようだった。
アンデッド討伐部隊「太陽の炎」の隊長は、ギリアスという名の聖騎士で、年齢は40を超えていて、そろそろ肉体が衰え始める時期だが、未だ太陽の炎で最強と言われている。
大柄でオレンジ色の髪と目をした、鋭い目つきの強面の男だ。
「話があるそうだな。忙しいので手短に頼む。」 あまり歓迎はされていないようだ。
「はい。死霊術士のユージの討伐予定について確認に来ました。」
「未定だ。まだ上層部が揉めているからな。そんなことを聞くために来たのか?」 面倒そうな態度だ。
「まさかセイラを殺されたのに、泣き寝入りするわけではありませんよね?」
「聖女を戦いに連れ出したお前がそれを言うのか?」 ギリアスがギロリとこちらを睨む。
私の要望でセイラが討伐に出たことは、一般には知らされていないが、上層部やセイラに近い位置にいる人達は知っている。
「最初から隊長も出撃していれば良かったのでは?」 負けずに言い返す。
「ふん。お前と口喧嘩をするつもりはない。もちろん聖女を殺されて黙っているなどありえない。上層部と調整がつき次第、討伐軍を派遣する。その点は上も依存は無いだろう。」
「それならば問題ありません。もちろん私も出撃します。」
「お前が敵の主力を仕留めたことは聞いているが、錬金術や鑑定の仕事もしてもらう。これを拒否するようでは、お前の希望は受け付けない。」
どうやら私を働かせたいようだ。私が責任を問われなかったのも、錬金や鑑定をさせるためなのかもしれない。まあ次の討伐に参加できるのであれば拒否する理由は特にない。
「分かりました。ユージの討伐と私の参加を約束してくれるなら、錬金や鑑定の仕事を受けます。」
「うむ。それは問題ない。お前には事務仕事ができる神官を一人付けるので、協力して仕事にあたるように。」
「分かりました。」 事務仕事ができる神官? 秘書やマネージャーのようなことをするのだろうか? まあいい。
その後別の職員に私用の仕事部屋に案内された。例の神官もいるようだ。
私の仕事部屋が用意されていたということは、面会を申し込んだ時点でこの話はすでに決まっていたのだろう。私が従うと思われていたことが少し気になるが、まあいい。
部屋に入ると若い男の神官が挨拶してきた。
「このたび、アスカ様の仕事をお手伝いすることになりました。アインと申します。」
アインは、若くて頼りない印象のいかにも新人神官といった感じだ。細身で身長は平均くらい、金髪で青い目をしている。
容姿がかなり良いので、おそらく私を懐柔する目的もあるのではないだろうか?
まあ気にしなければ問題無いだろう。何かしてくるようなら叩きのめせばいい。
「アスカよ。錬金と鑑定の仕事を頼まれたわ。」
「はい。私は依頼やスケジュールの管理、材料の手配、検品手続き、その他雑用などを行う予定ですので、何かありましたら私に何でも言ってください。よろしくお願いします。」
やはり秘書兼雑用といったところのようだ。
「神官だそうだけど、あなたは戦場に出る予定はあるの?」
ユージ討伐に出るかは聞いておこう。
「はい。アスカ様がアンデッド討伐に出る場合は私も後衛としてついていく予定です。」
「そう。じゃあ戦闘訓練もしておいてね。」
「はい。もちろんです。」
あまり強そうには見えない。戦力としては当てにしないでおこう。
その後、私は錬金と鑑定の仕事をしながら、討伐軍の出撃を待った。
しかし討伐軍の出撃予定はまったく決まらず、時間だけが過ぎて行った。私は太陽の炎の討伐予定管理の担当職員に何度も確認したが、未定のままだった。
そんなある日隊長からの呼び出しがあった。
私は良い機会なので、問いただそうと急ぎ足で隊長室に向かった。
「失礼します。」 私は隊長室に入った。
「うむ。よく来てくれた。」 隊長は前回と同じように執務机で事務仕事をしていた。今回は向こうから呼び出したせいか、一応歓迎している風なことを言ってきた。
「それより、なぜユージの討伐予定がいつまでも決まらないんですか?」 私はさっそく問いただした。
「ああ。それなんだが、ゴルドバ商業連合国側が拒否しているからだ。私も外務担当に抗議しているが、難航しているようだ。」
「そんな・・・なぜですか?」
国が死霊術士の討伐を拒否しているの?
「詳しくは不明だ。大勢の軍を入れたくないのか、ユージという男を庇っているのか、今探らせているところだ。」
どういうこと? ユージは国を味方につけるほどの立場を得ているの?
「今回呼び出したのは、それとも少し関係する話だ。」
「何でしょうか?」 呼び出された理由は聞いていない。
「隣のレイライン王国で勇者が見つかったらしい。」
「勇者が?」 日本人だろうか?
「ああ。勇者は世界のために働いてもらう予定だそうなんだが、その関係で勇者の仲間として聖女が候補に挙がったために連絡がきた。しかし聖女は殺されてしまった。そのため上層部はとりあえず聖女が殺された状況と経緯を伝えたそうだ。」
もしかしたら魔王と戦うための仲間集めをしているのかもしれない。勇者の仲間としては聖女は適任だっただろう。
「お前の情報もある程度伝えたのだろう。勇者はお前と話がしたいそうだ。」
「・・・そうですか。」 勇者が私に話か。私の能力をどの程度伝えたかによるが、仲間になれとか装備を作れとかそのあたりだろう。
「お前の派遣には賛否両論だったが、とりあえず派遣することに決まった。」
現在この国での私の立場は微妙なものになっている。私の能力を重要視している者や恩恵を受けている者は私を手放したくないと考え動いていて、そうでない者は聖女が死んだ原因を作ったとして嫌っていたり、追い出そうとしていたりする。今回も私を引き抜かれたくない勢力と追い出したい勢力の争いがあったのだろう。
「そうですか。それでユージとはどう関係するのでしょうか。」
それよりユージを殺せるのかが重要だ。
「お前は勇者と直接話すことが決まっているし、レイライン王国もユージには恨みがある。お前や共に行く外交官がうまく説得することができれば、勇者やレイライン王国の協力を得ることができるかもしれない。」
「なるほど。」
「我々も長くユージを放置したくない。可能ならお前が勇者と共にユージを討伐するか、あるいは勇者の力でゴルドバに圧力をかけてもらい、討伐軍の入国を認めさせるかしてほしい。もちろんお前以外の人員も色々動く。」
それなら私は勇者の説得に動くべきだ。討伐軍の派遣を考えていたが、勇者がユージとその軍勢に勝てるくらい大きな力を持つようなら、勇者と共に少人数で戦っても良い。少人数なら入国できるだろう。隊長もそれを考えているようだ。隊長の言い方からすると、隊長は私が出て行ってもいいと考えているようだ。争いの要因になっているので仕方がない。私もユージが殺せるなら出て行ってもいい。
「分かりました。勇者を説得してみます。」
「うむ。期待している。」
そして私は外交官と共にレイライン王国の王都に向かった。
季節はまもなく冬も終わり、少しずつ春の気配が近づいていた。
私のレベルは40になっていた。
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名前 アスカ
種族 人間Lv40
年齢 19
職業 錬金術師Lv40 鑑定士Lv38 槍士Lv37 戦士Lv30
HP 10136/10136
MP 13278/13278
身体能力 62+7
物理攻撃 1920+300
物理防御 1217
魔法攻撃 869+450
魔法防御 790
ユニークスキル
詳細鑑定
スキル
錬金
錬金レシピ
修復
付与
合成
複製
大量錬金
錬金術魔導書作成
鑑定
鑑定結果記載
鑑定記録
偽装解除
鑑定妨害
鑑定魔導書作成
槍術
パワースラスト
ハードチャージ
スマッシュジャベリン
ブロウスイング
ポールハイジャンプ
フォーリングアサルト
身体強化
物理攻撃強化
物理防御強化
魔法防御強化
威圧
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