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転生して死霊術士になったけど敵が多すぎてヤバイ!  作者: はくさい
第三章

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第52話 悠々自適


 家に戻って数日後、カイザーゴンドラの改良やヘリポートの整備状況の確認などをしながらのんびりしていると、ヨーラムさんが訪ねて来た。


 Aランク魔物の白い虎の買い取りを打診したからだろう。

 さっそくリビングに案内した。

「ヨーラムさんいらっしゃい。ゆっくりしていってください。」

「ユージさんお邪魔します。」

「今日は虎の魔物の確認ですか?」

「それもありますが、気になる情報がありましたので、ユージさん達にお知らせしにきました。」

「気になる情報?」

「はい。近くでドラゴンの目撃情報があったんです。」

「・・・ドラゴンですか?」 カイザーのことだな・・・ 誰かに見られていたらしい。

「はい。複数の貿易船が、黒いドラゴンが海に近い魔の森の上空をレバニールの方角に向かって飛んでいるのを目撃したそうです。」

「そうですか・・・」

 ・・・海沿いを飛んだからな。貿易船から見えていたのか・・・

「万一こちらに来た場合は、ここも危険かと思い、知らせに来たのですが・・・ すでに何かご存じでしたか。」

 気取られてしまったようだ。まあいいか。

「詳しくは申し上げられませんが、町や我々に危険はありませんので、ご安心ください。」

 ドラゴンを配下にしたことが広まると面倒そうだから黙っておこう。

「・・・そうですか。分かりました。危険が無いのであれば問題ありません。」 ヨーラムさんは神妙な顔で頷いた。

 察しの良いヨーラムさんは聞かないでくれるようだ。

 ガチャ

「そうなのよ。ヨーコちゃんも一緒にどう?」

「いいんですか? ぜひお願いします!」

 ヨゾラさんとヨーコちゃんがリビングに入ってきた。

「あ!お父さん来てたんだ!聞いてよ!今度私もドラゴンに乗せてくれるって!」


 俺とヨーラムさんは固まった。


「飛べるんだよ!凄いよね!」

 ・・・そういえば特にヨゾラさんやユリアさんに口止めとかしていなかったな。

「・・・そうか。気をつけるんだよ。」 ヨーラムさんは苦笑いで言った。

 とりあえず笑ってごまかそう。

「ハッハッハッ!バレてしまいましたか!」 ちょっと不自然だがまあいい。

 もともとヨーラムさんならバレても良いと思っていたし、

「何よ。秘密にするつもりだったの? ヨーコちゃん達が一緒に住んでるんだから無理に決まってるじゃない。」 ヨゾラさんは何でもないことの様に言った。しかしまったくもってその通りだ。

「いえ、まだどう伝えるか相談していなかったので、保留にしていただけです。教えるつもりでしたよ。」 一応配下に相談しようと思っていただけだ。

「あ!すみません!てっきりもう知っていると思って私!」 ヨーコちゃんが慌てている。

「いやいいよ。逆に早めに言えて良かったよ。」

「しかしドラゴンまで従えてしまうとは、薄々気づいてはいましたが、ユージさん達はおとぎ話の英雄のような存在なんですね。」 ヨーラムさんが気を利かせて空気を変えてくれた。

 まあ実際神の部下に魔王を倒せと言われているし、あながち間違いではないな。さすがにそれは言わないでおくか。

「いえいえ。たまたま運が良かっただけですよ。」

「はっはっはっ。運があっても能力が無ければドラゴンを従えることはできないでしょう。」 笑い飛ばしてくれるのは助かるな。こちらの気持ちを分かっているのだろう。さすがヨーラムさんだ。

「いえいえ。まあまだ安全面などを確認中ですが、数名であれば飛んで移動できるようになったので、何かあったら協力するので言ってください。」

「それは心強いですね。まあドラゴンで飛ぶ必要があるようなことは思いつきませんが。」

「あら。何もなくても乗せてあげれば良いじゃない。眺めも良いし楽しいんだから。」

「いえ普通の人は結構怖いと思いますよ。」

「そうかしら? ジェットコースターだって楽しいと感じる人の方が多いんだから大丈夫じゃない?」

「そうですかね?」

「そうよ。」

 ジェットコースターは安全だと分かっているから楽しめるような気がするが。まあ安全確認が済んだら乗せてあげよう。

「じゃあ。安全な座席が用意できたらヨーラムさんも試しに乗ってみますか?」

「お父さんも一緒に乗ろうよ!」 ヨーコちゃんはノリノリだな。

「・・・ちょっと怖いですが、よろしくお願いします。」 ヨーラムさんも恐る恐るだが乗る気になったようだ。

「ちゃんと落ちないようにしますし、万一落ちても配下がいれば着地できますから大丈夫ですよ。あ、一応他の人にはできるだけ言わないようにお願いします。言う必要があるなら相談してください。」

「はい。それはもちろんです。」

 その後、ユリアさんやヨーマ君も合流しドラゴンの話で盛り上がった。ユリアさんの感想を聞いて怖がっていたが、結局3人とも乗ることにしたようだ。

 ヨーラムさんは、後日ドラゴンに乗る約束をして、白い虎の魔物を買い取って帰っていった。白い虎の魔物はアイスホワイトタイガーという魔物で、美しくて珍しいので、毛皮やはく製はかなり高額で取引されるそうだ。首都の権力者とつながりを作るために使うらしい。太陽の炎など他国からのアンデッド討伐隊の派遣を国で断ってもらうようにするそうだ。

 ますます俺の安全性が増すな。


 カイザーゴンドラが完成すれば行動可能範囲が劇的に広がるが、どこか行きたい所がないかヨゾラさんとユリアさんに聞いてみよう。

「ヨゾラさん、ユリアさん、二人はどこか行きたい所はありますか?」

「何よ急に。」

「いえカイザーゴンドラがあれば、どこでも行けそうじゃないですか。」

「そうねぇ。正直どこに何があるのか、よく知らないから思いつかないわね。とりあえず色々な町に行ってみるのはどうかしら。」

「確かにこの世界の観光地とか知りませんからね。娯楽目的の旅行も一般的ではないみたいですし、試運転もかねて近場から順に町を巡ってみましょうか。」

「でもドラゴンで人のいる場所を移動して大丈夫でしょうか?」 ユリアさんは心配そうだ。

「見られたら大騒ぎになるでしょうけど、夜に移動すれば大丈夫じゃないでしょうか。元々アンデッドに乗って移動する時は夜が基本ですし。ここに来る時も夜にアンデッド馬に乗ってノワリンと一緒に走ってきましたが、騒ぎにはなりませんでしたから。」 

「そうね。それで良いんじゃないかしら。でも寝たいから、夜の移動は数時間にしてよね。徹夜は嫌よ。」

「そうですね。数時間でも国内の町なら1回で行けそうですから大丈夫じゃないでしょうか。たぶん時速200キロ以上は出てますよね。速度を測る手段がないから分かりませんが。」

「もっと出ているんじゃないかしら? まあ移動は大丈夫そうね。」

「そんなに速いんですね・・・全然想像できません。」 ユリアさんは速い乗り物に乗ったことがないのだろう。この世界の乗り物は遅いからな。スキルを使えば人間の方が速いくらいだ。

「じゃあ完成したら、旅行をしましょう。」

「ええ。楽しみね。」「はい。」


 数日後、カイザーゴンドラとヘリポートが完成したので、ヨーラムさんを招待して試乗会を行った。

 カイザーゴンドラは8人乗りで、車の運転席のような座席が8個ついている。万一落ちた時は俺が風蛇を出して風蛇と人妻エルフさんで落ちた人を救助する。風魔法は自由に飛ぶことはできないが、落下の軌道や速度を変えることはできるので、速度を上げて落ちた人に追いつきパラシュートのよう減速して着地することができる。

 冬も近づきだいぶ寒くなってきたので暖房係に火魔法使いちゃんも乗ることになった。火魔法使いちゃんと人妻エルフさんも乗ると試乗会は8人になったので、余裕をもって8人乗りにしたのに満席になってしまった。


 ヨーラムさんとヨーマ君はやはり相当怖かったようだが、ヨーコちゃんは楽しそうだった。ユリアさんは前回のようなただの荷馬車ではなく、しっかりとした座席付きゴンドラができたので、あまり怖くなくなったようだ。


 試乗会も無事に終わり、ちょっと怖い以外は特に問題が無いことが確認できた。

 8人乗っても重量などはかなり余裕があるようだったので、風蛇を1体常時出しておき、ゴンドラに巻き付けておくことにした。落ちてから出すより早く対応できるからその方が安全だろう。

 火魔法には火を出さずに周囲を温める暖房のような魔法があったので、夜でも目立たず快適に移動できそうだ。


 こうして俺達は、旅行をしたりレベル上げをしたり悠々自適な生活を送り始めた。旅行にはヨーマ君とヨーコちゃんも連れて行き、皆で色々な町を見て回った。皆楽しめたし良い経験になっただろう。


 国内を一通り見終わったころ、とある情報が入ってきた。


 レイライン王国で勇者が見つかったらしい。おそらく日本人だろう。



 俺は新たな波乱の予感を感じながら、平和が続くことを頼りにならない神に祈った。


 森の外の草原では早咲きの花が咲き始め、季節はまもなく春を迎えようとしていた。



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