外伝5 聖女
私はアンデッド討伐部隊「太陽の炎」に入隊するため、西のルディオラ太陽神国に向かって旅をした。
乗合馬車で移動中は、外を見ながら道端の雑草を鑑定してレベル上げをした。
町についたら、戦士の職業を覚えるため、倒したことのない魔物がいないか調べ、いたら冒険者ギルドに支援依頼を出して倒しにいった。
町でユージやギルバーンの情報がないか聞き込みも行った。
お金が少なくなればポーションを作って売ってお金を稼いだ。
その結果分かったことは、この世界にはろくでもない人間が多いということだ。
依頼を受けた冒険者が私に痺れ薬を盛ろうとしてきた。私は全ての物を鑑定する癖がついていたので、気づいて冒険者を叩きのめした。
衛兵に報告すると、犯罪者になりたくなければと脅してきて、体を要求された。仕方なく領主館の鑑定士の身分証を見せ、秘密の任務中のため私のことはしゃべるなと逆に責任者を脅して黙らせた。
冒険者ギルドも文句をつけてきたので、同じように黙らせた。
ユージの情報の聞き込みをすれば、知っているフリをして連れ込もうとしてきた。
ポーションを売りに行けば、騙し取ろうとしてきた。
乗合馬車では移動中に盗賊に襲われた。野営中に乗客に襲われた。
どこに行っても粗悪品や偽物を平気で売っている。
どうやら私が最初の頃に出会った人達やメルベルの町が特別だっただけで、これがこの世界の当たり前のようだ。
それが分かったあとは、冒険者に依頼する時は、信用できる冒険者を調べてから指名依頼をするようにした。
聞き込みをする時は、人が集まりそうな店で対価を払って聞くことにした。
ポーションを売る時は、店の評判や商品を確認してから売るようにした。
どこにいても油断しないようにした。
そして、途中で予定どおり戦士の職業を覚えることができた。
戦士を覚えてからは魔物討伐をする必要がなくなったので移動速度も上がり、多少のトラブルはあったが無事にルディオラ太陽神国の首都ディオルに到着した。
幸い、黙って出てきたメルベル領から追手がきたり、国境で止められたりすることもなかった。
ただ、残念ながら旅の途中でユージとギルバーンの情報は得られなかった。
ユージの滞在していた町でも聞き込みをしたが、普通に冒険者をしていたということしか分からなかった。
やはり個人では探し出すのは難しいのだろう。ある程度大きな組織の力が必要だ。
ルディオラ太陽神国の首都ディオルに着いた私は、まず聞き込み調査を行った。
ルディオラ太陽神国は太陽神教の教主が国王を兼任している宗教国家で、パルテノン神殿のような大神殿が王城にもなっている。
宗教国家というと危険なイメージがあるが、今のところこの国は他国と戦争などはしておらず、評判も悪くない。宗教国家も暴走したりしなければ意外と良い国なのかもしれない。
アンデッド討伐部隊「太陽の炎」に入隊するには、面接と実力試験と鑑定を受ける必要があるそうだ。
私のユニークスキルはバレてしまうけど、元々隠すつもりは無かった。逆にそのくらい徹底している組織の方が信用できる。
メルベル領では極力人を鑑定しないルールになっていたが、今となってはユージのように後ろ暗い人間が自分を隠すために作ったルールのようにも思える。
希少スキルを持つ人が狙われないためというのも分かるが、治安向上や悪人を逃さないためには、公的組織側はもっと積極的に鑑定をした方が良いと思う。結果的にそれが希少スキルを持つ人の安全にもつながるだろう。
私のステータスやスキルを知られると、メルベルのように私を後方に押し込めようとしてくる可能性もあるけど、それならここを出て他を探せばいい。
聞き込みではやはりユージやギルバーンの情報は無かったが、一つ重要な情報があった。
大神殿には黒髪黒目の聖女がいるらしい。
すでに町の人の病気を丸ごと癒したり、大勢の兵士の怪我をまとめて完治させたりという神の奇跡を行っているそうだ。
確実に日本人だろう。
これは私にとって良い情報だ。
あの男も日本人なので、日本人を殺すことに忌避感をいだく可能性もあるが、太陽神教の聖女であれば立場上協力してくれる可能性が高い。
情報収集も終わったため、さっそく調べた受付で入隊希望とレベルを伝えると、次の日すぐに試験を受けることができた。高レベル者はすぐ対応してもらえるらしい。
面接では、入隊希望理由と持っているアンデッドの情報を聞かれた。
ここに来る人の多くがアンデッドに恨みを持つ人なので、アンデッドの情報を持っている。面接で聞くことによって、落とす人からも情報を得ているのだろう。
私は、メルベルの町で起こったこととユージのステータスやユニークスキルの詳細を全て伝え、そして私のユニークスキルの詳細も伝えて、復讐のために入隊したいと正直に話した。思わず感情的になってしまった。
面接官は驚きながらも半信半疑で聞いていたが、鑑定士が記載した私の鑑定結果を見て信じたらしく、「君の希望は叶うだろう」という言葉を残してどこかへ去って行った。
その後実力試験も行ったが、試験官は私にとっては大した相手ではなく、しばらく打ち合って技術を見せたあと打ち負かした。
この世界ではレベルを上げるのが難しいこともあり、高レベル者の実力が疑われることはほぼ無い。
高レベル者の実力試験は、配属先や役割を決めるため、戦い方を確認するだけだそうだ。
入隊が決まった私は、高レベル討伐隊員用の宿舎に入った。
そしてまだ配属先も決まっていない私にさっそく聖女が会うという連絡がきた。
予想していたので、特に気にせず案内に従って聖女に会いに行った。
案内された部屋は、聖女用らしき豪華な部屋で、数名の護衛と使用人を従えた黒髪黒目の聖女が待っていた。
聖女は、長いウェーブした髪で白い豪華な宗教家風の衣装を着ていて、聖女のイメージである清廉とか清純というよりも、気品と色気があるタイプだった。
面倒そうなタイプが出てきたことに少しうんざりしたが、気持ちを切り替えて話をすることにした。
「いらっしゃい。私の名前はセイラよ。太陽神教の聖女をしているわ。」 にこやかに話しかけてきた。
「私はアスカ。」 私は手短に答えた。
周囲の護衛や使用人が私を睨むが、正直丁寧な対応をする気は起きない。
「皆いいのよ。この子は特別だから。」 聖女が護衛と使用人に言う。
護衛と使用人は、その言葉に何か思うところがあったのか、敵意が消え急に好意的な視線を向けてきた。少し不気味だけどまあいい。
「助かるわ。」
「ふふふ、いいのよ。あなたの話は聞かせてもらったわ。大変だったのね。安心して、私もあなたに協力するわ。」
「それはありがたいわ。私だけではあの男を見つけられないと思っていた。」
思ったより積極的に協力してくれそうだ。
「でも錬金術に詳しい人から聞いたのだけれど、あなたの能力だと、後方で錬金術を使う方が向いているそうよ。後方で貢献することでも復讐を果たせるかもしれないけれど、それでも戦いに出たいの?」
やはり詳細鑑定や錬金を使わせたいみたいだ。
「私は戦いたい。後方で大人しくしているつもりはない。」 相手の目をみて私の意志をしっかりと伝える。
胸の中の黒い渦が戦えと叫んでいる。
「・・・分かったわ。ではあなたは私の直属にしてもらいましょう。そうでないと他の人に目を付けられて錬金術の仕事をさせられるでしょうから。安心して、あなたの希望は叶えるわ。」
「分かった。頼むわ。」 戦えるなら問題ない。
「良かった。ところで、あなたはMPが多いから材料と設備があれば色々な物が作れるそうだけど、自分が戦うための装備や道具で作りたい物は無いのかしら? あるなら材料や設備を用意してあげられるけれど。」
「・・・それは・・・あるわ。」
正直私は貴重品のレシピをたくさん持っている。もし作れるならもっと強くなれるし、復讐にも役に立つだろう。
「では必要な物を教えてくれれば、こちらで用意するわ。それに強力な装備や道具を見るだけで作れるようになるのなら、この大神殿にある貴重な物を見せることも可能よ? どうかしら?」
やはり私に鑑定などをさせたいのだろう。でも復讐のためにこの申し出は受けるべきだ。
「ありがたいわね。それもお願いするわ。」
「ふふふ。喜んでもらえて嬉しいわ。それで、もし良かったらでいいんだけれど、材料が多めに手に入ったら、私の分も作ってもらえないかしら。私も強くなりたいし、それにいくつかは売って材料の購入費にしたいの。ごめんなさい自由に使えるお金も限りがあるから。」
・・・そのくらいは必要か。特に材料はおそらく非常に高額だし、権力がないと手に入れることができない物も多いだろう。
「そのくらいなら大丈夫よ。」
「ありがとう。それじゃあ後で必要な素材や設備のリストの作成をお願いね。貴重品の見学はあとで日程を連絡するわ。」
「わかったわ。」
結局錬金術師としても働くことになるけど、強くなるため、復讐のためだったら問題ない。
「それと、あなたの装備が作り終わったらで良いのだけれど、一緒に戦う仲間の装備も作るかどうか考えておいて。もちろんあなたのやりたいことを優先してもらって良いわ。 ・・・それとも自分の手で全部やらなければ気が済まないかしら。」
・・・私もそれなりに強くなったが、一人で勝てるとは思っていない。あの男にはギルバーンなど強力な仲間もいるし、おそらく大量のアンデッドを従えているはずだ。強力な装備を手に入れても、おそらく一人では倒せない相手だろう。
・・・強い仲間が必要だ。
「わかったわ。あなたの依頼なら受けるわ。でもあなたがあの男の討伐に参加することが条件よ。」
聖女が参加すれば聖女を守るために多くの強者が参加するだろう。
「あら・・・ 思ったより交渉が上手なのね。ふふふ。賢い人は好きよ。わかったわ、その条件でいいわ。」
周囲の人たちが少し心配そうに見ているが、聖女の決定に文句をつける気はないらしい。
「だけど私は私の復讐を優先するわ。覚えておいて。」
錬金術師の仕事を優先する気はない。
「ふふふ。もちろん分かっているわ。これからよろしくお願いね。」
話が終わったので私は部屋を出た。
こうして私はアンデッド討伐部隊「太陽の炎」の聖女直属隊員となった。
季節は冬になり、ルディオラ太陽神国の首都ディオルでは雪がちらつき、冷たい風が肌を刺した。
私のレベルは30になっていた。
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名前 アスカ
種族 人間Lv30
年齢 18
職業 錬金術師Lv30 鑑定士Lv29 槍士Lv28 戦士Lv11
HP 3900/3900
MP 7452/7452
身体能力 46
物理攻撃力 917
物理防御力 511
魔法攻撃力 504
魔法防御力 474
ユニークスキル
詳細鑑定
スキル
錬金
錬金レシピ
修復
付与
合成
複製
大量錬金
鑑定
鑑定結果記載
鑑定記録
偽装解除
鑑定妨害
鑑定魔導書作成
槍術
パワースラスト
ハードチャージ
スマッシュジャベリン
ブロウスイング
ポールハイジャンプ
身体強化
物理攻撃力強化
物理防御力強化
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