外伝4 旅立ち
死霊術士のユージが領都メルベルを去って数日後、領主館は混乱状態にあった。
現在領主館では、ギルバーンと名乗った小柄な灰色髪の中年の男が、犯人であり死霊術士であると考えられていて指名手配されている。
メルベル侯爵に何かしらの恨みがあり襲撃したのではないかと言われていた。
レオス達を殺されて復讐を誓った私は、まずユリウスさんにあの日あったことをすべて伝え、あの男を指名手配するようお願いすることにした。
「以上があの日にあったことの真実です。これが報告書になります。」
「そんなことがあったのか・・・。ユニークスキルがこれほどやっかいだとは、思っていなかったな・・・」
ユリウスさんは疲れた顔で考え込んだ。
私のユニークスキルが戦闘用ではなかったこともあり、ユニークスキルの危険度を見誤っていたのだろう。
死体収納も名前だけ聞くと戦闘用ではないので、領主様も簡単に会う決定を下したのだと思う。今後は侯爵家の重要人物がユニークスキルを持つものに簡単に会うことはないだろう。
「ユリウスさん。この情報を公表して真犯人であるユージという男の指名手配をお願いします。」
「・・・そうだな。この情報は上に報告しておく。しかし俺の権限ではユニークスキルの情報を公表することはできない。残っている第二執事でも無理だろう。侯爵夫人かご子息の判断が必要になる。夫人はこういう件には関わっていないし、ご子息は王都にいるのですぐには難しいだろう。」
そんな・・・
「それでは逃げられてしまいます!」
「無理なものは仕方がない。だがギルバーンという男はすでに指名手配されている。一緒にいるのであれば捕まえることもできるだろう。」
「ギルバーンは恐らくアンデッドなので収納されている可能性が高いです。見つかるとは思えません。」
「しかし、ギルバーンを鑑定できていないのだろう。君の報告や目撃情報のような言動をするアンデッドは、ヴァンパイアくらいしか聞いたことがない。しかしギルバーンにはヴァンパイアの特徴は無い。それに君の報告ではユージにはヴァンパイアの配下はいないことになるから収納はできないのではないか?」
そうなの? 上級アンデッドではないの?
「上級アンデッドの可能性はないのですか?」
「上級アンデッドの情報は調査中だが、領主館に残されていたアンデッドを鑑定した結果、猿と蛇の魔物が上級アンデッドだった。報告によると猿と蛇のアンデッドは見た目は普通の魔物と同じだったが、動きはアンデッドの特徴である無感情で不気味な動きだったそうだ。そのことから感情的なギルバーンが上級アンデッドである可能性は低い。ギルバーンが引き連れていた麦わら帽子の集団は、無感情な動きだったらしいから、そちらは上級アンデッドの可能性があるが、ギルバーンは人間の可能性が高いだろう。」
ギルバーンは人間だったの? でも突然現れた。
「突然現れたように見えたので、死体収納から出したのだと思いましたが。」
「それは分からないが、隠密系スキルの可能性がある。まさか転移ではないだろう。とにかくギルバーンも何か強力な能力を持っている人間の可能性が高い。」
「・・・そうですか。」 そういうことならギルバーンも復讐対象になる。
「安心しろ。この情報は必ず次期領主様に伝える。メルベル侯爵家にとって仇となる相手だ。全力で追手が差し向けられるだろう。」
それならいい。私も参加しよう。
「私も追手として捜査や討伐に参加させてください。」
「・・・それは無理だ。きみは貴重な鑑定士だ。捜査員でも戦闘員でもない。追手は専門家にまかせて君は君の仕事をするんだ。」
「・・・そうですか。分かりました。」
私は報告を終え、ユリウスさんの部屋から立ち去った。
ユリウスさんは変わってしまった私を悲しそうに見ていた。
今のままでは私はあの男の討伐に参加できないらしい。とはいえ黙って結果を待っているなんて耐えられない。
領主館は混乱が収まっておらず私の仕事は止まったままなので時間はある。
私は何か方法はないか、アンデッドや死霊術士について調べるため、図書館や神殿に足を運んだ。
その結果分かったことは、西にあるルディオラ太陽神国の国教である太陽神教には、教義に基づき「太陽の炎」というアンデッド討伐部隊が存在していて、色々な国のアンデッドの情報を集め、色々な国に部隊を派遣してアンデッドを討伐しているらしい。当然死霊術士も討伐対象だ。
そしてその部隊には色々な国からアンデッドを憎む者たちが集まり入隊しているそうだ。
そこに入隊すれば、あの男の情報も得られ、直接あの男を追うこともできるかもしれない。
しかし弱いままでは、入隊はもちろんたどり着くことすら難しい。
だがレオスは言っていた。私は誰よりも強くなれる可能性を秘めていると。
レオスの言葉を信じて強くなるために行動することにした。
まずは詳細鑑定を毎日限界まで使用してレベル上げを行う。
毎日目につく物を鑑定していくが、同じものを鑑定しても経験値は得られないので、身の回りにあるものはすぐに鑑定し終わってしまった。
毎日違うものを鑑定するためには色々な場所に行く必要がある。
詳細鑑定は、未知の物や複雑な物を鑑定する方が経験値が多いので、まずは商店などを回った。商店巡りの後は、色々な道を歩きながら目につく物を片っ端から鑑定していくなどした。
同じものを鑑定しても経験値を得られないといっても別個体なら経験値は得られるので、経験値が多そうなものが無くなった後は、紙を1枚1枚鑑定したり雑草をひとつひとつ鑑定したりして、レベル上げをした。
しかし、戦闘職が槍士1つだけだと不十分に感じる。
普通は得られる経験値にも限界があるのであまり職業を増やすのは良くないとされているようだが、私は実質無限に経験値を得られるため、職業を増やした方が強くなれると考えた。
私でも得られる戦闘職はないか調べ、1つ候補を見つけた。
それは戦士だ。
他の戦闘職は誰かに長期間指導を受けたりする必要があるが、戦士は色々な魔物を近接戦闘で倒すことが習得条件なので、うまくすればルディオラ太陽神国に移動しながら、習得できるかもしれない。
戦士は身体強化や物理攻撃力強化などのMPを消費して自分を強化するスキルを覚えることができ、これらのスキルは上昇率はそれほど高くないが、割合強化なので高レベルになっても有効な良スキルらしい。
職業を増やすのは良くないとされていても近接職がレベル上げをしていると戦士を自然と覚えてしまう場合が多いが、ほとんどの者が、戦士を覚えて身体強化を使うと明確に強くなったと感じるため、嫌がる人はあまりいないそうだ。
私はMPも多いので、戦闘中は常に強化スキルが使えるだろう。
しかし、それなりにレベルは上がってきたが、一人で魔物に挑むのは無謀なので、色々聞き込みをしたところ、神殿の神官や生産職は、冒険者ギルドにレベルアップ支援依頼を出してレベル上げを手伝ってもらったりしていることを知った。
さっそく私は、領主館の鑑定士としてレベルアップ支援依頼を冒険者ギルドに出した。
依頼を受けたのはこの町でも上位の冒険者であるCランクの「町の剣」というパーティーだった。領主館の鑑定士なので、実力者を用意してくれたそうだ。
パーティーリーダーのダンさんに戦士の習得を目指すので、色々な魔物を倒したいことを伝えると、最初は難色を示したが、槍士をもっていることを伝え腕前を見せると納得してくれて、色々アドバイスをしてくれた。
レベルアップが目的の場合はソロ討伐が重要だが、戦士を覚えたいだけなら、パーティー討伐でもトドメが刺せれば問題ないらしく、弱い魔物を10体ずつソロ討伐した後は、中堅の魔物を10体ずつパーティー討伐し可能な限りトドメを刺すというやり方を、いくつかの町で行えば最短で習得できるということだ。
結果的に多くの種類倒す必要があるが、厳密には種類ではなく、経験値が入る魔物に近接でトドメを刺すことが重要なので、ちゃんと経験値が入る10体まで倒した方が習得が早いらしい。
格下の弱い魔物でも10体まではほんの少しだけ経験値が入るので数にカウントされるそうだ。
しっかりとした防具もアドバイスを受けて購入した。
そして何度か冒険に出て、この町で私が倒せる魔物は10体ずつ討伐し終わった。
この町でやることも終わったため、旅立ちの準備を始めた。
お金を稼ぐ手段もあった方が良いので、持ち運べる小型のポーション製作器具を購入した。一度に少量しか作れないので使っている人はあまりいないが、錬金スキルを使えば関係ない。
これで材料を買えば中級ポーションまでなら作れるので売ればお金を稼ぐことができるだろう。
錬金は、当初小さくて軽い物しか作れないと思っていたが、MPが大量にある今はかなり色々な物が作れる。
買うと高い旅に便利な魔道具や装備のいくつかも材料を買って作ることに成功した。
火起こし、飲み水、魔物除けの魔道具や性能の良い服や靴などだ。
町の工房の設備を領主館の上級文官の権限で少し強引に借りて作成した。
仕事で鑑定した貴重な魔道具や装備品などは、材料を用意することが難しかったので、作ったのは普通に売っている物だけだが十分役に立つ。
それ以外では付与や合成というスキルも覚えたので、いずれは強くなるために武具の強化も考えようと思う。
最近ようやくユージも指名手配されたが、未だユージやギルバーンは見つかっていない。
ユージの仲間の冒険者達もあの日以来行方不明になっている。
仲間達は感情豊かだったそうなので、アンデッドではないと目されている。
ただ仮面をしていたそうなので、私は仲間もアンデッドで、感情豊かなアンデッドもいるのではないかと疑っている。まあ奴を追っていればいずれ分かるだろう。
とにかくこの場所に居続けていても意味がないのは変わらない。
丁度西のルディオラ太陽神国に向かう途中に、あの男がここに来る前に滞在していた町があるというので、聞き込みをしながら旅をしようと思う。
旅立つことを誰かに言えば引き止められるし、もしかしたら拘束されるかもしれない。
誰にも何も言わずに旅立つことにした。
旅は基本は乗合馬車を使用する。
何があるかわからないし、女の一人旅なので厳しい旅になるだろう。
でも止まる気はない。胸の中の黒い渦が止まることを許さない。
季節は秋になり、私は誰にも見送られず西にあるルディオラ太陽神国に向けて旅立った。
私のレベルは25になっていた。
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名前 アスカ
種族 人間Lv25
年齢 18
職業 錬金術師Lv25 鑑定士Lv24 槍士Lv23
HP 2265/2265
MP 5156/5156
身体能力 38
物理攻撃力 586
物理防御力 310
魔法攻撃力 359
魔法防御力 334
ユニークスキル
詳細鑑定
スキル
錬金
錬金レシピ
修復
付与
合成
複製
鑑定
鑑定結果記載
鑑定記録
偽装解除
鑑定妨害
槍術
パワースラスト
ハードチャージ
スマッシュジャベリン
ブロウスイング
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