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転生して死霊術士になったけど敵が多すぎてヤバイ!  作者: はくさい
第六章

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第87話 ユリアの過去

 俺達は警備兵のサムスさんに案内されて、ユリアさんの故郷の魔族の村を歩いた。


 山間にある小さな村であるこの村は、お世辞にも文明度が高いとはいえず、木の枝を重ねて作った屋根と白っぽい土壁の家が並んでいる。建物は装飾されていないし、村人の服装も質素な感じだ。店も見当たらない。


 本当に田舎の貧しい村といった感じだ。避難民の受け入れなんてできそうもない。


 サムスさんは友好的だったが、他の村人はユリアさんを見ても遠くでヒソヒソ何か言っているだけで、喜んでいる感じではなさそうだ。



 微妙な気持ちになりながら村の高台にある村長の家に向かうと、景色の良い場所に差し掛かった。


 村の高台から見た山々の景色は凄く良かった。

 山の木々が紅葉で綺麗に色づいていて美しい。

 質素な村も紅葉と合わさると味があって良い感じだ。


「ユリアの故郷は綺麗なところね。」 景色を見ながらヨゾラさんが言った。

「凄く綺麗です!」 ヨーコちゃんも元気に言った。

「そうですね。これだけでも来て良かったと思えますね。」 田舎の山の景色って良いよね。

「そうでしょうか? 何もないただの山と村だと思いますが。」

 ユリアさんはあまり綺麗だと思わないようだ。見慣れすぎているのかもしれない。



 村に褒める所があって良かったなどと失礼なことを思いながら歩いていると、村長の家についたようだ。


 村長の家も景色が綺麗に見える場所にあった。権力で良い場所を取ったに違いない。

 まあ、役人とか外部の客を泊めたりもするだろうし、客に村を好きになってもらうためとか、ちゃんと理由があるのかもしれないが。 


 ドアの前で俺達を待たせて、サムスさんが村長を呼びながら家に入っていく。

「村長!客を連れて来たぞ!」

「なんじゃ!この忙しい時に!」 中から村長らしき人の声が聞こえた。

「いや、その原因の避難民をどうにかできるらしい。話を聞いて欲しいそうだ。」

「なに? 本当か? どうやってじゃ?」

「分からんが、自信があるみたいだ。とりあえず話を聞いた方が良いと思って連れて来た。」

「・・・そうか。怪しいが、とりあえず聞くしかないじゃろうな。」

 しかしこの会話は客に聞かせる内容じゃないが、丸聞こえだぞ。ドアも開けっ放しだし。この人達は大丈夫なのだろうか?


「入っていいぞ!村長が話を聞くそうだ!」 そのまま呼ばれた。

 入ると村長は俺達がドアの前にいたことに気づいて慌てていた。

 村長は髭を生やした意地悪そうな顔のじいさんだ。

「馬鹿もん!ドアの前にいるなら先にそう言わんか!これだから体力バカは・・・」

 小声でサムスさんに注意している。サムスさんは脳筋だったようだ。


「うおっぽん。儂がこの村の村長のディゴルじゃ。避難民について話があるそうじゃな。」

 村長はすました顔で俺達に声をかけてきた。どうやらごまかすことにしたらしい。

「ええ、困っているようだから、私達が避難民を受け入れようかと思って、説明にきたわ。」 ヨゾラさんが代表で話す。

「うむ。それなら助かるが、・・・ん? お、お前はユリア!」

 村長がユリアさんに気づいた。

「村長さんお久しぶりです・・・」 ユリアさんが気まずそうに挨拶をした。 

「な、何しに来た!まさか復讐に来たのか?!」

 ・・・どうやら村長はユリアさんに復讐されるようなことをしたらしい。良く分からないが復讐するなら手伝おう。

「ち、違います。両親のお墓参りに寄っただけで・・・」

 ユリアさんは復讐する気はなさそうだな。ちょっと残念だな。ざまぁしてみたかった。

「嘘をつくな!財産を取り上げて村を追い出した儂を恨んでおるのだろう! あっ!こやつらも儂を騙すために呼んだんじゃな?!」

「い、いえ、避難民のことは、たまたま知って助けようとしているだけです。それに財産のことは私も納得しています。」

 ユリアさんは恨んでいないらしい。このじいさんの被害妄想かな。

「村長!ユリアは復讐なんて考える子じゃないぞ!」

 脳筋のサムスさんは味方のようだ。

「そうよ。私達は、ユリアの故郷を助けたいのと、うちの領地の住民を増やしたいと思っているだけよ。」 

 ヨゾラさんも説得に加わった。

「儂は騙されんぞ!魔導書と親の遺品を奪われて恨んでいないはずがない!」

 お、おう、酷いことしている自覚はあったんだな。


 しかし、この村はこんなのが村長で大丈夫なのだろうか?

 村人の生活がかかっているんだからもっと優秀な人がやらないとマズいんじゃないか?

 ・・・いや、小さい村の村長なんてこんなものなのかもしれないな。

 最近はヨーラムさんや侯爵達と国を動かすレベルの話ばかりしていたから、落差が激しいせいで酷く感じるが、小さい村の村長は税金の計算ができて農業指導あたりができれば問題無いらしいしな。

 このじいさんも性格はあれだが、税金計算と何かの指導ができたりするんだろう。



 しかし、ワーワー言い合っていて話が進まないな。


 状況を見ていると、とうとうヨゾラさんが切れた。

「黙りなさい!!」 ヨゾラさんが村長を一喝した。

「ひええ・・」「あわわ・・・」

 村長とついでにサムスさんが恐怖で固まった。


 威圧のスキルだな。


 威圧は戦士のレベルを上げると覚えるスキルで、格下の相手に恐怖を与えて動きを鈍らせるスキルだ。

 ザコ狩りに便利なスキルだが、効果範囲が大雑把なのが欠点だ。今も味方のサムスさんにも効いてしまっている。俺達は高レベルなのでほぼ影響は無い。

 まあ俺はスキルが無くてもヨゾラさんに睨まれたら動けなくなってしまうけどな!


「私達はユリアの故郷を救いたいだけよ!村長が許可しなくても勝手にやるわ!ただし、邪魔したら排除するわよ!」 

「は、はぃ~」 村長は腰が抜けたようだ。

「ヨゾラ、落ち着いて・・・、サムスさん大丈夫ですか?」 ユリアさんはヨゾラさんをなだめている。

「あ、ああ・・・」

 サムスさんは足が震えているが、何とか動くことはできるようだ。それなりにレベルが高いのだろう。



 とりあえず村長も逆らっても無駄なことは分かっただろうから協力させよう。

 プリプリしているヨゾラさんの代わりに俺が説明しよう。


 そう思った時だった。


「ユリア!戻ってきたのか!」

 二階から降りて来た若い魔族の青年が声をかけてきた。驚きと喜びの表情だ。

「ディアス・・・久しぶり。」 ユリアさんは微妙な表情だな。

「無事で良かった・・・会いたかった!」 涙ぐんでいる。

 感動の再会なのだろうか? その割にはユリアさんは煮え切らない態度だが。

「私もよ・・体は大丈夫なの?」

「ああ。あの時、俺が寝込んでいる間に、ユリアが追い出されたと聞いて、凄くショックだった。何度も追いかけようと思ったが、戦う力がなくなっていた俺には追うことができなかった。」

「私のせいで、ごめんなさい。ちゃんと謝ることもできずに村を出てしまったから、ずっと謝りたかった。」

 よく見るとディアスという青年は右手首から先が無い。

 もしかしてフレンドリーファイアの被害者か・・・?

「いや!ユリアのせいじゃない!俺のミスだ!自分で分かっているし、あの場にいた皆も認めている!・・・俺の方こそ、俺のせいでユリアが追い出されるようなことになってしまって、すまなかった。俺がショックで寝込んだりせずに、すぐに皆と話していれば、あんなことにはならなかったのに・・・」

 手が無くなるとか激重だな・・・ 

 しかし、この青年は村長と違って恨んではいないようだな。自分のミスを認めているようだ。手が無くなったのに凄いな。俺だったら世界の全てを恨んだりしそうだが、良いヤツなんだろうな。

「ううん、うまく対応できなかった私が悪いの。今なら分かるわ。私の技術が未熟だった。」

「そんなことはない! ・・・ああいや、とにかく帰ってきてくれて嬉しいよ。もうあの時のことは気にする必要はない。ほとんどの村人は納得しているし、俺が文句を言わせない。それに最近俺は雷魔法を使えるようになったんだ。」

「え? 雷魔法を!?」

 おお!雷魔法使いなのか。やはり魔導書があれば習得できるんだな。

「ああ。昔は俺もユアラさんに一緒に雷魔法を習っていたのは覚えているだろう? あの時は途中で止めてしまったが、ユリアの置いていった魔導書や資料を使って修行したんだ。」

 なんだ、昔習っていたからか。

「教える人がいないのに、凄い・・・」

 それでもユリアさんは驚いているな。やはり簡単ではなさそうだ。

「ああ、必死にがんばったんだ。だからもう気にすることは無い。だから、またこの村で一緒に暮らそう。」

「ディアス・・・」


 ・・・うむ。薄々気づいていたが、やはりそういう流れになったか。おそらくこのディアス君はユリアさんが好きなのだろう。

 ユリアさんには幸せになってほしいが、それはちょっと困る。


 ユリアさんはうちの最高戦力の一人だ。しかも、今の俺達にとって最強の敵であるアスカさんに唯一勝てるメンバーでもある。

 接近戦ならヨゾラさんやヨーコちゃんでも勝てるだろうが、空から降りてこなかったらユリアさん以外にはどうしようもない。

 ユリアさんがいなくなってしまったら、アスカさんに襲われた時にひたすら逃げるしかなくなってしまう。

 ここは引き留めなくてはならない。


 何て引き留めようか悩んでいると、ユリアさんが答えてしまった。


「ごめんなさい。私にはやらなくてはならないことがあるの。この村に住むことはできない。」

 おお!良かった!引き留めなくても断ってくれた!

 いや信じていた。仲間だからな。嘘じゃないぞ。

「そんな!・・・いや、やることがあるなら俺も手伝おう!一緒に連れて行ってくれ!」

 お? ディアス君が仲間になりたそうにこちらを見ている。

「ううん、ディアスはこの村に必要な人だから。それに私達は特殊な立場だから、連れて行くことはできないの。」

 どうやら断るようだ。残念。

「どういうことなんだ? 理由を教えてくれ!」

「ごめんなさい。」

「教えてもくれないのか? どうして!」

 うーん。簡単には諦めてくれなさそうだ。


「はいはい。ちょっといいかしら。」 ヨゾラさんが割り込んだ。

 ユリアさんが困っていると判断したんだろう。

「な、なんだ君は。」

「ユリアの仲間よ。私達の仲間になりたいなら、ユリア一人では決められないから、私達全員で話を聞くわ。」

「そ、そうか。ユリアの仲間だと言うなら俺も仲間に入れてくれ。」

「ヨゾラ・・・」 ユリアさんはちょっと不安そうだな。

「私達はしばらくこの村に滞在してあることをするわ。」

「あること?」

「ええ、これから村長に説明するから、あなたも聞きなさい。私達が村を出る前に、私達がやることを見てどう思ったか聞くから、それを聞いてから、あなたを仲間にするか判断するわ。」

 なるほど。ギルバーンやカイザーを村に呼ぶことになるからな。ギルバーンやカイザーを見れば考えが変わるだろうし、今希望を聞いても無駄だからな。

「君達がやることを見て意見を言えばいいのか?」

「ええ、そうよ。ただし邪魔はしないでね。」

「よく分からんが、分かった。ただ、ユリアともちゃんと話をさせてくれよ。」

「ええ、分かったわ。」


「じゃあユージ。村長に説明してあげて。」

「え? あ、はい。分かりました。」 俺が説明するらしい。

 まあ途中からそのつもりだったからいいけど。

「村長さんは、ギルバーンを知っていますか?」

「ギルバーンと言うと、ドラゴンを操るという悪の死霊術士のことか?」

 知っているなら話は早い。しかし、やはり悪という認識なんだな。大丈夫かな。

「ええ、そのギルバーンです。実は私はギルバーンの弟子でして。」

 もう俺はギルバーンの弟子として有名になっているので隠す必要はない。

「なんじゃと?!」「えっ?!」「何?!」

「信じられないようなら、明日にでもここにギルバーンとドラゴンを連れてきて証明します。それで、一部の人には知られていますが、ギルバーンは複数の領地を持っていて、領民を増やしたいと考えています。なので、この村の避難民も受け入れ可能です。そして避難民はドラゴンで運びます。なので、村長さんはドラゴンが来ても住民がパニックを起こさないよう手伝ってください。」

「ほ、本当なのか?」

「本当です。できれば先に避難民や住民に説明会を行いたいですね。」

「とても信じられん。」

「信じてもらえないようなら先にドラゴンを連れてきますので、死人が出ない様にパニックを押さえてください。多少の怪我ならこちらで治しますので。」

 正直言葉だけで信じてもらうのは面倒だ。先にドラゴンでもいいかもしれない。

「そ、それはちょっと待ってくれ。住民が逃げ出して魔物に襲われても困る。」 サムスさんが言った。

「なるほど、確かにそうですね。」

 先にドラゴンだと死人が出てしまうかもしれないな。ユリアさんを悲しませるのはマズい。やはり先に説明会か。まあ配下にやらせればいいか。


 とりあえず明日朝一に配下達を連れてきて、説明会の段取りを行うことにした。

 死体収納はできるだけ隠すことにしているので、この場では出さない。


「ユリア、ギルバーンの仲間というのは本当なのか?」 ディアス君がユリアさんに聞いた。

「ええ、そうよ。」

「その、大丈夫なのか? ギルバーンは評判を聞く限り悪人だと聞いているが・・・」

 うむ。好きな子が悪の死霊術士の部下だと聞いたらそうなるよな。

「ええ、大丈夫。ここにいる仲間は良い人達だし、ギルバーンは良い人かは微妙だけれど、少なくとも部下や領民に酷いことはしないわ。」

 まあギルバーンは良い人ではないよな。元盗賊の中二病おやじだし。

「そ、そうか、ユリアが酷い目にあっていないならいいが・・・」

 めちゃくちゃ不安そうだが、一応納得したようだ。



 その後、今日はやることも無かったので、俺達はユリアさんの両親の墓参りをした。


 ユリアさんは簡素な墓の前で、胸に手を当てて長いこと祈りを捧げていた。心の中で両親に色々報告しているのだろう。


 俺は適当に日本の仏教式で祈っておいた。



 皆で昼食をとった後、ユリアさんは一人でお世話になった人に挨拶回りに出かけた。

 一人で行きたいそうなので俺達は適当な場所でお茶でもしながら待つことにした。積もる話もあるのだろう。


 人目がつかない場所に馬車と配下を出して、紅葉が綺麗に見える位置でテーブルを広げた。


 俺達は、これからの事に頭を悩ませながらも、お茶とお菓子とともに紅葉に彩られた美しい山々を楽しんだ。


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