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転生して死霊術士になったけど敵が多すぎてヤバイ!  作者: はくさい
第六章

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第86話 ユリアの故郷

 魔の森の中央に港を作り始めて1ヵ月がたった。


 とりあえず水中工事やシンプルな岸壁の整備も終わり、宿泊施設、商店、職員の住居や畑もできたので、大型貿易船が利用できる最低限の港はできた。


 俺はできた港を「ヨーラム港」と名付けた。


 安直すぎるかとも思ったが、こういうのは分かりやすい方が良いし、ヨーラムさんの名前が地名として後世に残るのは良いことだろう。・・・たぶん。

 ヨーラムさんは嫌がってなかったから大丈夫だろう。変えたかったら正式に国や町ができた時に変えてもいい。


 魔の森の拠点も名前が無かったので、「カイザー村」と名付けた。

 カイザーと出会ってカイザーと戦った場所だからだな。



 ヨーラム港は貿易船の航路からも見えるようで、工事中にすでに何隻かの貿易船が様子を見に来たりもした。

 俺の船も停泊していたし結構目立つのだろう。

 やってきた貿易船には、水や新鮮な食料を格安で販売して、港ができることを宣伝しておいた。


 貿易船は最初は怪しんでいたが、実際に工事現場を見せると信じてもらえた。

 このあたりは海賊も出ない場所なので、海賊と勘違いされることもなかった。



 海賊が出ない理由は、町から遠すぎるからだ。

 海賊も基本的に町で買い物をしないと生きていけない。

 貿易船から金目の物を奪っても、町がなければ眺めるだけしかできないただのオブジェだ。金貨では腹は膨れない。

 貿易船から食料も奪えるが、それだけで生きていくのはかなり厳しいし、なにより金を奪ったのに使えない状況に耐えられる海賊はいない。

 なので魔の森の中央海域には海賊は出ない。俺達の町ができたので、いずれは出るかもしれないが今は出ない。



 俺達はこの1ヵ月、ほぼ港作りしかしていない。

 ヨーラム港とカイザー村を行ったり来たりしながら、人員や物資を運んだりしていた。


 一番忙しかったのはヨーラムさんだ。

 ヨーラム港の最高責任者に就任したし、スブ島にも定期的に行ってヨーラム商会の指揮もとっていた。


 俺は多少空き時間もあったので、近くで空を飛べる魔物を探したが、残念ながら近場には戦力になる魔物はいなかった。

 魔の森にはコウモリやカラスの魔物がいたし、海にはカモメの魔物がいたが、どちらも弱く、レベルを上げてもアスカさんの足止めはできそうもなかった。

 しかし、レベルを上げればカイザー村からスブ島やヨーラム港まで飛べたので、伝書鳩のような連絡手段に使えたため何匹かずつ捕まえておいた。

 これで俺が手伝わなくても各拠点間で連絡がとれるようになった。

 定期連絡とか微妙に面倒だったからな。



 しかし空軍はまだ用意できていない。


 このままではマズいので、そろそろ本格的に空軍作りを考えなくてはならない。

 すでにカイザー村からヨーラム港に人を移住させていて、港の運営も始まっているので、あとはヨーラムさんに任せて、俺達は空軍作りと、ついでに魔導書作りに本格的に取り組むことにした。



 とりあえず皆に相談だ。食事のあと皆に話しかけた。

「近場には強い空を飛べる魔物はいなかったんですが、誰か良い魔物がいる場所に心当たりはありませんか?」

「私は知らないわね。」 ヨゾラさんは知らないようだ。

「私もわかりません。」 ヨーコちゃんも知らないか。

「戦ったことはないですが、強い大鷲の魔物とワイバーンが出る場所なら知っています。」 ユリアさんが言った。

「おお!大鷲やワイバーンは強そうですね!」

 これは期待できるな。特にワイバーンは小説では兵士を乗せて飛んだりするし、もしかしたら飛竜騎士隊的な空軍が作れるかもしれない。ロマンがあるな。

「私の故郷は、ドワーフ王国の端の魔の森の近くなんですが、私の故郷から魔の森沿いに山を進むと、大鷲の魔物やワイバーンが出るそうです。」

 なるほど。魔の森の北側ということだな。

「じゃあついでにユリアの里帰りもすればいいんじゃないかしら?」

「え? でもわざわざ寄ってもらうのも悪いですし。」

 ユリアさんの里帰りか。

 雷魔法のフレンドリーファイアのせいで追い出されたと聞いていたから触れないようにしていたが、この様子では別に嫌じゃないみたいだな。

 お世話になった人もいたようなことも言っていたし、両親の墓参りもしたいだろうしな。ついでに里帰りさせてあげよう。

「いえ、魔物の情報も聞きたいですし、ユリアさんが嫌じゃなければ俺もユリアさんの故郷は見てみたいですが、どうですか?」

「何もない貧しい村ですから、見ても面白くないと思いますが・・・」

「いいのよ、私も行きたいし。それに今ならユリアの魔導書とか両親の遺品を買い戻せるんじゃないかしら?」

「おお!確かに!」 雷魔法の魔導書が手に入るなら、ぜひ行きたい!

 追い出された時に取られたようだが、フレンドリーファイアで怪我をさせた賠償金がわりみたいだからな。金を払えば問題ないだろう。

 敵対関係のようならカイザーで脅して取り返してもいい。

 まあユリアさんの故郷で暴れるのは良くないか。

「・・・わかりました。魔導書を買い戻せるかは分かりませんが、お願いします。」

 ユリアさんはちょっと浮かない顔だな。

 嫌というわけではないが、不安があるといった感じだ。

 まあ村長だか何だかに追い出されたらしいからな。会いたくない相手も当然いるのだろう。それでも行きたい思いの方が強いといったところか。


 ユリアさんが雷の魔導書を取り戻せれば、俺も雷魔法を覚えられるかもしれない。

 雷魔法を覚えれば、雷撃の死霊術士とか名乗れるな。・・・さすがに痛すぎるか。



 一応配下達にも魔物の情報を聞いたが、大鷲とワイバーンの方が近いし有力そうだったので、まずはユリアさんの故郷に行くことにした。




 ユリアさんの故郷は、ドワーフ王国のはずれにある魔族の村だ。

 ドワーフ王国はゴルドバの北にある国で、魔の森から見ると北西にあり、国土はほぼ山岳地帯になっている。

 ユリアさんの故郷は、ドワーフ王国の南東の国境付近にあり、ゴルドバとも魔の森とも近い位置にある。

 魔族は迫害されているが、ドワーフは気質的に迫害や嫌がらせはあまりしないため、魔族の多くはドワーフ王国に住んでいるそうだ。

 とはいえドワーフも友好的というわけでもないため、あまり良い位置に村を作ることができず、狩った魔物素材をドワーフに売ったりしながら細々と暮らしているらしい。



 俺達はカイザーゴンドラに乗って、ユリアさんの故郷の魔族の村に向かった。

 カイザーが見つかると大騒ぎになるので見つからない様に夜に向かう。

 メンバーは、俺、ヨゾラさん、ユリアさん、ヨーコちゃんの4人だ。もちろん主力配下は収納して連れてきている。


 数時間飛んで近くに着いたので、見つからない様に着陸した。

 夜遅くに村を訪ねても迷惑だし、村に泊まるよりキャラバン野営をした方が快適なので、いったん適当な場所で野営を行う。



 翌朝、俺達は村を訪れた。山間にある小さな村だ。

 しかし、なぜか村には人が大勢いて騒がしかった。


 魔族だけでなく獣人やエルフなども結構な人数がいるようだ。

 争っているわけではないようだが、何やら深刻そうな雰囲気だ。

「ユリアさん。騒がしいですけど、何か分かりますか?」

「い、いえ、魔族以外はほとんど来ることがない村なので、こんなことは初めてです。」

 ユリアさんも戸惑っている。

「とにかく聞いてみましょ。」

 ヨゾラさんはそう言って村の警備兵らしき魔族の男に近寄って行った。

 俺たちもついていく。


「ちょっといいかしら?」

 ヨゾラさんは魔族のごついおっさんの警備兵に話しかけた。

 ユリアさんと同じく髪と目は紫で肌は褐色だが、髪と目の色の濃さがユリアさんとは違った。ユリアさんとは逆で髪が濃い紫で目は薄紫だ。

 周りを見ると、どうやら人によって髪や目、肌の色の濃さは違うようだ。

「何だ? 悪いがこの村も余裕は無いから援助はできないぞ。」

「援助? 私たちはこの子の里帰りで寄っただけなんだけど、どういう状況なの?」

「里帰り? ・・・もしかしてユリアか?」

「サムスさん。お久しぶりです。」

「ユリア、無事だったんだな。良かった。あんなことになってしまったから心配していたんだ。あの時は守ってやれなくてすまない。」

「いえ、幸い今は仲間にも恵まれてうまくやれています。私の方こそあの時は迷惑をかけてしまってすみませんでした。」

「いやユリアが悪いわけじゃない。しかし良かった。ユリアは戦える力はあったが、他の種族とうまくやるのは難しいから心配していたんだ。良い仲間ができたなら良かった。」

 このおっさんは良い人そうだな。

 魔族は迫害されていると聞いていたから、敵対的な態度をとられるかと心配だったが、この様子なら大丈夫そうだ。


 お世話になった人のようで、ユリアさんはサムスという警備兵としばらく話をしたあと、この状況について質問した。

「ところで、なぜ獣人やエルフの人達がこんなにいるんですか?」

「なんだ? ゴルドバから来たのに知らないのか? ゴルドバから逃げてきた人たちだよ。ゴルドバはレイライン王国に占領されてしまったんだが、レイライン王国は多くの国と敵対したから、敵対国出身者にはかなり厳しい状況らしい。特に人間以外の種族は出身国をごまかすのも難しいからな。捕まったら酷い目にあうそうだ。ここは国境に近いから逃げて来た人が結構来たんだ。」

 ・・・レイライン王国のせいか。

 避難が必要になったのは俺達の関係者だけじゃなかったんだな。

 レイライン王国は多くの国と敵対したわけだから、ゴルドバに大勢いた他国出身者達はレイライン王国にとって敵になるわけか。

「そうなんですね。でもこんなに人が来て村は大丈夫なんですか?」

「正直厳しい状況だな。小さい村だし、家も食料も足りていない。働ける人には働いてもらっているが、もうすぐ冬になるしな・・・」

「ドワーフ王国に支援を頼めないんですか?」

「あっちにもここ以上に大勢避難民が来ていて、それどころじゃないらしい。」

「そんな・・・」

 うーん。言葉を濁しているが、この辺は山岳地帯だから冬の寒さも厳しいようだし、冬を越えられずに餓死者や凍死者が出そうという感じだな。下手したら暴動が起きるかもしれない。


「ユージ、ここは私達の出番じゃないかしら?」 ヨゾラさんがおもむろに言った。

「やっぱりそう思います?」 俺も答える。

 ユリアさんとヨーコちゃんも俺達の方を見た。

「私達なら何とかできるでしょう。それに、大きな港町を作るには人口が少なすぎると思っていたし、私達にとっても悪くないんじゃない?」

「そうですね。」 俺もそう思っていたところだ。

「じゃあ決まりね。二人も良いわよね。」

「もちろん賛成です!」 ヨーコちゃんが元気よく賛成する。

「・・・いいんですか?」 ユリアさんは申し訳なさそうにしている。

「聞いてたでしょ、むしろもっと集めてほしいくらいよ。」

「すみません。ありがとうございます。」

「どういう意味だ?」 警備兵のサムスさんが聞いてきた。

「避難民を受け入れるあてがあるということよ。説明するから責任者の所に案内して。」

「それが本当なら助かるが・・・。ユリア、大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。安心してください。全員受け入れられますし、衣食住も問題ありません。」

「それならいいが、しかしどうやって連れて行くんだ?」

「それも説明するから、責任者にあわせて。」

「うーん。分かった。村長の所に案内しよう。」

 俺達はサムスさんに案内され、村長の家に向かった。


 妙なことになったが、ユリアさんの故郷を助けるついでに領地の人口が増やせるなら悪くないだろう。



 しかしレイライン王国は碌な事をしないな。

 こんな国が隣にあっては先が思いやられる。



 俺はため息を吐きながら、同じくため息を吐いている避難民達を眺めた。



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