外伝33 侵略軍空襲作戦
森の都を飛び立った私は、ジェリーのナビのもと、侵略軍のいる場所へと向かった。
燃費は悪くなるが念のため巡航速度より速めに飛行し、2時間ちょっとで侵略軍を遠くに目視できる位置についた。
現地の天気は曇りで、特に戦闘に支障は無い。
侵略軍は予想ポイントより少し進んでいて、どうやら行軍中のようだった。
事前資料では数は八千ほどらしい。
大軍の隊列は縦にかなり長く伸びている。
予定通り西側に迂回して攻撃ポイントに移動した。
望遠機能で様子を伺う。
森の木が邪魔で見にくいが、街道付近は木の密度が少ないので何とか見える。
馬車がまとまっている位置を何カ所か目星をつけた。
特におかしな所は無いので、さっそく砲撃を開始することにした。
約2kmの距離から魔導ライフルを構え、望遠機能で馬車の集団に狙いを定めた。
すると突然、馬車の集団の少し前に壁が現れた。
幅20m高さ10mくらいだろうか。白い立方体を積んだような壁だ。
以前見たゴルドバで堀に橋をかけた能力と同じものだろう。
まだ侵略軍を見つけてから数分しか経っていないが、もう私の存在に気づいて指揮官から指示が出たのだろうか?
予想よりだいぶ早い。斥候が気づいて指揮官に伝わるまで20分以上はかかると思っていた。
まあ見つかってしまったのなら仕方がない。
とりあえず壁を攻撃してみよう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
壁の前の木や地面は抉れたが、壁は傷一つついていない。
これはダメだな。
ユージの仲間のバリア女を思い出させる強度だ。
壁は諦めて、まだ壁の無い場所を攻撃することにした。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
敵軍は大騒ぎになっていて、人や馬や馬車が吹き飛んでいく。
壁は徐々に広がっているが、長く伸びた隊列全てを覆うには少し時間がかかりそうだ。
最初の幅20mは一瞬で出現したが、それ以降は徐々に伸びている。おそらく射程があって、能力者が走って移動して壁を広げているのだろう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
壁ができる直前の場所を撃ってみると、壁の進行が一瞬止まり、壁ができる速度が遅くなった。
おそらく爆風が能力者に届いたのだろう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
壁の能力者に嫌がらせをしつつ、馬車集団へ攻撃を続ける。
しばらくすると、壁に遮られてしまい、狙える馬車集団がなくなった。
正直、敵の周りをぐるぐる回りながら攻撃すればどうとでもなるような気がしたが、そろそろ反撃されてもおかしくないので、予定通り一旦撤退することにした。
森の木が邪魔で下に敵がいてもよく見えないので、そろそろ危険だ。
気絶能力や切断能力を使われる前に撤退した方がいいだろう。
おそらく3割くらいの馬車を破壊できたはずなので、今日のところは十分だろう。
特に攻撃されることもなく、私は悠々とその場を後にした。
町に向かって飛びながらジェリーに報告書を作成させる。
30分ほど飛んで町についたので、そのまま町の門の前に降りた。
今回は着替えたりしない。私のことを聞いているならその方が一目で分かるからだ。いちいち誰か聞かれたりする手間が省ける。
空から派手に飛んできた私を見て、兵士が慌てて集まってきた。
私は事前に聞いていた指示どおり名乗る。
「ルディオラ太陽神国、銀翼の守護戦将アスカよ!報告に来たわ!」
自分で二つ名を名乗るのは微妙な気持ちになるが、私の名前は知らなくても二つ名は知っているということはよくあるそうなので、二つ名も名乗った方が早くて確実だそうだ。
兵士に森の都で預かってきた軍の印章も掲げて見せる。
「はっ!確認いたします!少々お待ちください!」
ほとんど待たされずに町の中に迎え入れられ、町の防衛隊長の所まで案内された。
魔導外骨格を着たまま防衛隊長に軍から預かった命令書とジェリーが作った報告書を渡した。
今日の午前中に森の都で作戦が決定して、すでに攻撃してきたという内容に目を白黒させていた。
疑わし気だったが、ロボットのような外観の魔導外骨格の威圧感に負けたのか、何も言われなかったので、すぐに防衛隊長の部屋から立ち去り、兵士に宿まで案内させた。
その後、領主から話を聞きたいという連絡があったが、余計なことを言われると面倒なので、作戦の準備で忙しいし報告書に書いた以上の事は話せないと言って断った。
自分の町が滅ぶかどうかの瀬戸際なので、しつこく色々要求してくるかと思ったが、意外にも領主からの連絡役は素直に引き下がった。
おそらく任務の邪魔をするのはまずいと判断されたのだろう。作戦の邪魔をしないよう国から釘を刺されているのかもしれない。
実際、私が強気な対応をしているのは、この国の権力者には他国の上級軍人である私に対して命令権が無いという理由もあるが、それだけでなく、作戦の邪魔をする者は敵味方問わず排除して良いという権限を与えられているからだ。
敵味方問わずなのは、敵に人を操る能力者がいるからだ。
これは味方が操られてしまった場合には排除して良いという意味だが、馬鹿な者が邪魔をしてきた場合にも使って良いことになっている。
後日報告書の提出と説明が必要になるが、極端な話、領主が邪魔をしてきたら領主を殺しても問題ないし、文句を言う者を片っ端から殴ったりしても問題にならないだろう。
よほど酷い場合は賠償が必要になるかもしれないが、賠償や交渉をするのは私ではなく国や軍なので、私には実質被害は無い。厳重注意や謹慎程度だろう。
なので、やろうと思えば好き放題できてしまう。権限を与える相手を間違えると酷いことになるだろう。
たまに話に聞く横暴な軍人というのは、権限を与える相手を間違えてしまった結果なのだろう。
もちろん私は、そんなことをするような横暴な人間ではない。しかし、領主の要求を面倒だという理由で断ったりくらいはしてしまっている。
こういうことに慣れていくと、徐々に横暴な軍人になってしまうのかもしれない。気を付けた方がいいかもしれないが、私は目的を果たすためなら横暴な軍人になっても問題ないと考えていたりもする。
まあ今のところ目的には関係ないので、横暴な軍人にはならないようにしようと思うが。
その後は特にトラブルもなく、ゆっくり休むことができた。
翌朝、他の有力者などに絡まれても面倒なので、早朝に出発することにした。
魔導外骨格を装着して宿を出て、町の門まで行き、兵士に出撃することを伝えてから町を出る。
兵士は色々聞きたそうにしていたが、相手をせずに飛び立った。
昨日の状況を踏まえ、今日は少し作戦を考えた。
主に壁対策だが、昨日は高度100mくらいを飛んでいたので、ほぼ横から攻撃していた。
しかしそれだと壁で防がれてしまうので、今日は高度を上げて上から攻撃することにする。
真上に行くのはちょっと不安だし攻撃しづらいので、高度1500mくらいから斜め下45°くらいの角度で打ち下ろし攻撃を行う。
これなら壁ではほとんど防げないだろう。
それにおそらく高度1500mにいれば敵の攻撃は届かない。
1500mの距離で届くなら昨日も攻撃されていたはずだ。
少なくとも気絶能力や切断能力は届かないだろう。
さっそく高度を上げて、侵略軍のいる場所に向かった。
今日の現地の天気は快晴。視界良好。作戦に支障はない。
予定通り北側から近づくと、侵略軍は昨日と同じ位置にいた。
そして全方位を広く壁で囲って陣地を作っていた。
私の襲撃を予想していたのかもしれない。
壁の内側にはテントがたくさん張られていて、一部には壁能力で作ったと思われる白くて四角い建物もある。
おそらく、レゴやマインクラフトのように、四角いブロックを自由に繋ぎ合わせて色々な形にできる能力だと思う。壁を作る能力というより建築能力なのだろう。
使い方次第で色々できる自由度の高い強力な能力だ。
敵は慌ただしく動いている。こちらを見ている者もいる。
すでに私に気づいて指示が出ているようだ。目の良い者か望遠鏡を持つ者が、常に周囲を監視しているのかもしれない。
とりあえず馬車を攻撃しよう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
攻撃を開始すると陣地の隅の壁から天井が伸びて来た。
建築能力者が攻撃を防ぐために天井を作り始めたようだ。
しかし陣地はかなり広いので全てを天井で覆うのは相当時間がかかるだろう。
馬車と関係ない所に天井を作っているし無視しよう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
シュイィィン
攻撃していると突然巨大なバリアが張られた。
軍が使う広範囲防御魔法だ。
攻撃してみよう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォガシャァァン!
ワーワー!
防御魔法は魔導ライフル4発で破壊できた。
以前ルディオラで試した時は2発で破壊できたので、レイライン王国軍は結構優秀なのかもしれない。
もしかしたらドラゴンのブレスも一発くらいは防げたのではないだろうか。
まあ攻撃に支障はない。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
チュイン チュイン
またしばらく攻撃していると地上から反撃が飛んできた。
ジェリーに聞くと光魔法の光線と無属性魔法のビームらしい。
光魔法は白い光線で、ビーム魔法はジェリーも使っている紫のビームだ。
2色の攻撃が散発的に飛んでくる。どうやらここまで届く攻撃はその2つだけのようだ。
しかし私には当たりそうもない。
普通に杖で狙っているようだが、約2kmの距離でスコープや照準器無しで人間サイズの的に当てるのは至難の技だ。
私も魔導外骨格の望遠機能とエイムアシスト機能が無ければ当てられない。
それに当たっても威力も弱そうだ。
光線魔法は、光速なので速いが威力は弱いらしい。
ビーム魔法は、シンプルな攻撃魔法で、射程が長いことと威力の割に消費MPが多いのが特徴だそうだ。
まあ一応軽く回避運動をしておこう。
バシュウゥゥン! ドオォォン!
バシュウゥゥン! ドオォォン!
ワーワー!
しばらく攻撃を続け、とりあえず馬車はだいたい破壊し終わった。
もしかしたら物資はテントや四角い建物内に運び込まれて残っているかもしれないが、馬車が無ければ運べないだろう。
運べなければこれ以上進軍できない。
足止め作戦は成功と考えて良いはずだ。
まだやろうと思えば色々できるが、兵士を倒しすぎないように言われているので、この辺で切り上げることにした。
大騒ぎしているレイライン王国軍をしり目に、私は悠々と戦場をあとにした。
しかし予想はしていたが、やはり魔導外骨格は戦争において非常に強力な兵器のようだ。
この文明レベルの戦争で空襲ができるというのは有利すぎる。
今後周囲が色々言ってくると思うと頭が痛い。
私はため息を吐き、青々と輝く晴天の森の景色を眺めながら帰路についた。




