外伝30 戦争の足音
私はルディオラに戻ってきた。
途中でルディオラの遺跡に寄って、魔導外骨格を修理した。
幸い材料は色々持ってきていたし重要な部分は壊れていなかったので、獣人の国まで行かなくても修理できた。
首都に戻ると、勝手に偵察に出たことに対してゲインから小言を言われたが、太陽の炎の本来業務だし自己判断でアンデッドや死霊術士を討伐する権限はあるので、違反をしたわけではない。
出発する際に伝言はしたし報告書を出せば問題ないはずだ。
報告書はジェリーに作らせた。私が作るより早いし質も良い。
報告書に対して色々言ってきたゲインを適当にあしらって、強くなるための行動を開始する。
まずは事務所に光属性の素材の手配を要求する。
予想通り在庫は無かったし、事務長は難色を示したが、材料が用意できたら奪われた光剣サンブレイズも作ると言って了承させた。これでいずれ手に入るだろう。
続いて魔導外骨格の強化のためにエルフの国への入国許可がとれたか確認した。
外務担当の事務員に確認すると、「エルフの国の防衛戦争に参戦するなら許可する。」という回答だった。
レイライン王国から攻め込まれているらしい。
ルディオラには攻めてきていないから気にしていなかったが、戦争が始まっていたようだ。
話を受けるなら軍部に詳細を聞きに行くように言われた。
この話は軍部にも伝わっているらしい。勝手に戦争に参加するわけにはいかないからだろう。面倒だが仕方がない。
軍部へ向かうと、どうやらエルフの国へ援軍を送ることは決定していて、出発準備をしているようだった。
私にも参戦交渉をしようとしたら私が偵察に出発してしまったので慌てていたらしい。
担当者が説明するというので応接室で待っていると、現れたのはルギスだった。
「アスカ様。お久しぶりです。」
「久しぶりね。元気そうでよかったわ。あなたも参加するの?」
会ってはいなかったがルギス達が無事戻ってきたことは聞いていた。
「はい。今回私は特殊部隊の指揮と前回同様アスカ様の補助を担当させていただきます。またご一緒できて光栄です。」
どうやらルギスが私の担当らしい。
私はルディオラでは気難しい人という扱いになっているので、作戦に支障が出ないよう前回うまくやれたルギスが担当者になったのだろう。
特殊部隊というのが何なのかは知らないが、おそらく出世したのだろう。
「私もルギスが担当者になってくれると助かるわ。でもまだ参戦を決めたわけではないわ。まずは詳細を聞かせて。」
正直戦争参加は気が進まないし、時間もあまりかけたくない。何か月も前線で戦わされるようなら断るつもりだ。
「失礼いたしました。気がはやっていたようです。では詳細を説明いたします。もちろん断ることも可能です。」
私は身分も高くなったし正規軍所属ではないので、断る権利があることは聞いている。
「今回アスカ様にやっていただきたい任務の内容は、空からの急襲による敵の物資や馬車の破壊です。行軍する敵に対して、ギリギリ攻撃できる位置まで近づいて遠距離から一方的に攻撃していただきます。基本的には敵に近づく必要はありません。というより決して近づかない様にしてください。反撃を受けそうなら、すぐに撤退していただきます。」
「接近戦はしなくていいのね?」
「はい。現在分かっている敵のユニークスキルは、人を気絶させる能力、城壁等を切り裂ける能力、橋や壁を瞬時に作る能力、巨大な岩などを放り投げる能力が確認されていて、未確認ですが人を操る能力と遠距離通信ができる能力を持つ者もいると予想されています。特に人を気絶させる能力は、射程が城壁の上に届くくらいあり、回避も難しいということで、アスカ様でも近づくのは危険だと判断されました。」
敵のユニークスキルの情報は少し増えているが、以前私が見たものが主力のようだ。
「前回も話しましたが、アスカ様が敵に捕まって操られると、何万何十万という被害がでると予想されています。ですので、敵を倒すことよりアスカ様が捕まらないことが最優先になります。最悪の場合はエルフの国を見捨てて撤退していただくことも考えています。」
私が捕まるのは危険だが、戦力としては使いたいというギリギリのラインを考えた任務ということか。私も戦争に命をかけたくはないので都合がいい。
「任務にかかる期間はどのくらいなの?」
問題は拘束期間だ。長いようなら断るか交渉するか考える必要がある。
「アスカ様の目的ははこちらでも把握しています。すでに短期間で済むように交渉していて、エルフの国の国内の飛行許可も取れました。任務実施のタイミングはエルフの国で協議して決めますが、飛行して移動できるので短期間で済むはずです。すでに先遣隊がエルフの国の首都に到着していますので、ここからエルフの国の首都への移動も単独で飛行して行くことが可能です。」
「それは助かるわ。でも戦争中なのに良く飛行許可がとれたわね。」
遅い軍隊と一緒に移動しなくて済むのは助かる。
「我々は、アスカ様の強みの一つは飛行による移動速度だと考えています。強みを潰すような相手に貴重な戦力を派遣することはできないと言って交渉しました。実際、本国が攻められたらすぐに戻って来ることができるというのも派遣の理由の一つですので、飛行許可は必須です。とはいえ緊急時以外は事前に許可をとってから飛行をお願いします。」
なるほど、私の移動速度も考慮した結果の派遣ということか。
「説明は以上になります。我々としてはアスカ様の希望に沿うよう配慮したつもりですが、いかがでしょうか。」
「ええ。良い条件だから引き受けるわ。」 予想以上に良い条件だ。
「ありがとうございます。では先遣隊の隊長としてガイラルがエルフの国の首都にいますので、到着後の行動はガイラルと相談してください。」
「分かったわ。」 どうやらガイラルも私の担当にされているようだ。
エルフの国に交渉や情報収集が得意なガイラルがいるのは心強い。今回は精霊採集のための交渉や情報収集がネックだと考えていたが、ガイラルがいるなら何とかなるだろう。
「・・・ところで差支えなければお聞きしたいのですが・・・先日アスカ様はギルバーンの偵察に出てドラゴンと戦ったそうですが、結果はどうだったのでしょうか。もちろん言える範囲でかまいませんので・・・」
話がひと段落つくと、ルギスが聞きにくそうに質問してきた。
どうやら私の報告書はまだ軍には届いていないらしい。この様子だと上から聞き出せと命令されているのかもしれない。
ルギスにはお世話になっているし、別に秘密にしろとは言われていないので教えてもいいだろう。
「敵が多くてドラゴンを倒すことはできなかったけれど、一対一ならドラゴンにも勝てるという手ごたえは掴んだわ。」
「おお!それは素晴らしい!やはりアスカ様こそが神の・・・」 喜びながら何かブツブツ言っている。
ルギスは真面目で良い人だけど、信心深いみたいで、ちょっと怖い時がある。
「でも敵にはドラゴン以外にも強力な戦力が多くいて、ドラゴンを超える戦力もいることが分かった。だから今のままでは勝てないというのが結論ね。」
「なっ!? ド、ドラゴンを超える? それはどのような相手だったのですか?」
「魔族の雷魔法使いだったわ。私でも避けられなかったし、一発で危険な状況になった。」
「魔族?! も、もしや本当に魔王に連なる者だったのでは・・?」
・・・言われてみれば魔族は魔王と関係ありそうだ。レイライン王国が軍を出す口実にしているだけだと思って気にしていなかったけれど、異常な強さだったし、可能性はあるのかもしれない。
「魔王関係かは分からないけれど、私はもっと強くなる必要がある。今回エルフの国に行くのもそのためよ。」
「・・・ドラゴンを超える強さを持つ魔族を倒すために・・・さらに強くですか・・・なるほど・・・それが使命なのですね・・・。分かりました。私も全力で協力いたします。軍部も説得してみせましょう。」
・・・何か勘違いをしている気もするが、微妙に否定もしきれない。協力してくれるならいいか。
翌日、私は出発準備をした後、ガイラルへの命令書や資料等を受け取って出発した。
眼下に広がるエルフの住む森を眺めながら、まだ見ぬエルフの都に向けて大空を飛び続けた。




