第81話 銀色の飛行物体
俺達はスブ島を水着の島にするために行動を開始した。
早い方が良いということで、すぐに島民に対して説明相談会が行われ、島民と相談しながらリゾート施設とビーチの場所の選定を行った。
俺達で勝手に場所を決めて作ることもできたが、支持率を上げることも目的だし、島民の協力が必須の計画なので、島民と相談した方が良い。勝手に作って実は島民に迷惑がかかる場所だったとかなったら困るからな。
魔物が出ない場所を作れるという話には予想以上の反響があった。最初は懐疑的だった島民も実際にやってみせると、ビーチ以外にも結界を張ってほしいという要望が続出した。
案の定、可能なら島全体や近海にも張ってほしいというような意見も出たが、生態系への影響があるので漁や狩などをするエリアには使えないことを説明して町や畑などの一部エリアのみで納得してもらった。まあ納得したというよりギルバーンやアンデッド軍団には逆らえないだけのようだったが。
生態系への影響については、侯爵や執事長など頭の良い配下達もよくわかっていなかったので、配下達に対して俺が説明する必要があった。俺達が前にいた世界では、大勢の人が考えて実行しても予想外の生物が絶滅したり大繁殖したりして、失敗する確率が非常に高かったことを説明したが、一部配下はそれで納得したものの、優秀な配下でも調査してからやれば大丈夫と思っている者が多いようだった。やはり俺の話を聞いただけで理解するのは難しいようだ。俺もうろ覚えで具体的なデータとか無いしな。まあ、配下は逆らったり文句言ったりしないので問題はない。
島民は、広範囲を魔物が出ないようにできるのに、よく分からない理由でやらないということには不満を感じたようだが、畑に魔物が出なくなるということに関しては非常に喜んだ。島には弱い魔物しかいないが、作物を荒らされるし戦闘ができない人にとっては十分危険なので、今までは弱い人は畑仕事をするだけでも危険だったらしい。
作物も荒らされないし、弱い人が一人でも安全に畑仕事ができるようになるというのは、かなり大きなことのようだ。
町にもたまに渡り鳥や海のはぐれ魔物の被害が出るらしく、町の結界も好評だ。
これだけでも支持率アップに成功しているらしい。まあ何か悪影響があるのではと疑っている人もいるけどな。
ヨーラムさんや配下達は、支持率アップの策として町や畑に結界を張ることは考えていたらしく、俺が許可するとスムーズに対応が行われた。この世界では畑仕事が危険なのは常識のようだ。よく考えたら日本でも熊やら猪やらが出る地域では危険だしな。魔物がうじゃうじゃいる世界なら当たり前か。
畑や町の結界は、島民から要望が出なかったらこちらから提案することも考えていたようだが、今後の統治のためには、できれば要望に対応する形の方が良いらしい。意見をちゃんと聞いてくれると思わせたいようだ。変な要望を色々出されるようになっても困るのではないかと思ったが、怖がって地元の人が意見を言えない状況は良くないそうだ。特に知らない土地を統治する場合は、地元の意見を聞くことは非常に重要らしい。過去の歴史でも、戦争で奪った町の統治などで、地元民の意見を聞かずに大きな失敗をしてしまった例は数多くあるそうだ。
なるほどな。統治のノウハウが色々あるんだな。俺の配下にスブ島出身者はいないからな。今後できたとしても海賊や犯罪者の意見では当てにならないだろうし。
リゾートを作るビーチの場所もすぐに決まり、建物の建設も始まった。
リゾート施設で働く人たちもヨーマ君の船で避難してきた人達が仕事探しをしていたので、すぐに集まった。割と条件が良いので島民からも希望者がいて、人手は問題なさそうだ。高級リゾートの従業員はヨゾラさんやメイド剣士達が教育をしている。
リゾート施設は建設中だが、ビーチはすでに島民には解放されていて、簡易売店で水着や食べ物の販売を行っている。島民が出店できる屋台スペースもあり、水着着用者は無料で出店可能にした。まあ男が多いが、曇りの日は女性配下にビキニ水着で泳ぎの練習をさせたり、売店で接客させたりしているので、新し物好きや目立ちたがりの女性を中心に、女性にも徐々に受け入れられているようだ。
それに多くの島民は安全に泳げるだけでもシンプルに喜んでいるようだ。よく考えたら綺麗な海があって暑いのに泳げなかったわけだからな。ずっとお預け状態だ。俺達が同じ立場だったらかなり辛いだろう。まあ海水浴を知らなければ大丈夫なのかもしれないが、もう知ってしまった。多くの人が俺達に去ってほしくないと思うようになるはずだ。
ククク、罠とも知らずに子供たちが楽しそうにしておるわ。ハッハッハッ・・・悪役ごっこを楽しむには内容が微妙だな。
ちなみに結界を張るときは、ギルバーンと顔を隠した聖女と魔法使いっぽい恰好の配下を数名出して、ギルバーンに詐欺師の幻のスキルでそれっぽい演出をさせた。
島民にはギルバーンが結界を張ったように見えたはずだ。俺は騙されていないので演出の内容は見えなかったが、島民はちょっと怖がっていた。ギルバーンの趣味全開の幻を見せたのかもしれない。・・・不安だ。
その後、ヨゾラさんやヨーマ君達はリゾート施設にかかりっきりになり、俺は最初の神聖結界を張る時に参加しただけで、毎日海の魔物集めとレベル上げをしていて、完全い蚊帳の外になってしまった。
まあ夕食は一緒にとっているので話は聞けるが、皆が楽しそうにその日に起きた出来事などについて話していて、話に入れない俺は仲間外れ感がある。
仕方ないが、俺としてはちょっと微妙な状況だ。しかし我慢しなければならない。一家の大黒柱は辛いのだ。・・・別に一家ではないが。
まあ水着美女も見れるし、色々快適なのでスブ島の生活には満足している。当面はこのままここで生活していこうと思う。
そんな生活を続けて1ヵ月ほどたった。
その結果、十分とまでは言えないが、偵察や迎撃を行えるだけの海の魔物配下がそろってきたので、訓練もかねて日常的に広範囲の海を偵察させていた。
レイライン王国はどうやら周辺諸国との戦争に突入するらしく、この島に攻めてくる余裕は無さそうという情報が入っていたので、念のため偵察させていただけで、俺はあまり気にしていなかった。
南国リゾート施設も軌道にのり、貿易船の商人達にも評判が良いようだし、喧嘩などの小さいトラブルはあったが、大きな問題は特に無く、順調に計画は進んでいた。
そんなある日、海岸で魔物のレベル上げをしていると、配下達から報告が入った。
「謎の銀色の飛行物体?」 なんだそれ? UFOか?
「はい。島の近海の上空を、銀色の何かが光を放ちながら飛んでいるところを偵察兵達が目撃しています。」 普段から兵を指揮している騎士団長が答えた。
「何なのか分からないのか?」
「はい。かなり上空を飛んでいるようで、良く見えないため詳細は不明です。知られている範囲では該当する魔物もいません。そして、島の様子を伺うような動きを見せているそうです。」
「なんだ?偵察か?ということはレイライン王国か?」
「今のところレイライン王国がこちらに攻めてくるような兆候はありません。ただ、貿易船が行き来しているので、こちらの情報もある程度伝わっているはずですから、偵察を送ってきた可能性はあります。偵察で銀色の物体を飛ばすというのは聞いたことがありませんので、ユニークスキルの可能性もあります。」
ユニークスキルか。となるとやはりレイライン王国の可能性が高いな。
「何かしかけてくると思うか?」
「能力が不明なので分かりません。ただの偵察の可能性は高いですが、攻撃能力がある場合は、奇襲による暗殺を狙ってくる可能性もあります。念のため警戒した方が良いでしょう。」
・・・また暗殺かよ。まあただの偵察の可能性も高いようだし、皆と相談しよう。
すぐにリゾート施設にいたヨゾラさん達と合流して事情を説明した。
相談した結果、しばらくは魔物集めは中止して全員で行動することにした。
俺達は強くなったし護衛もつけているので普通の相手であれば問題ないが、ユニークスキルが相手の場合は別だ。特に海で魔物集めをしている最中に襲われたら、海ではまともに戦えない配下も多いのでかなり危険だ。無敵のヨゾラさんも助けにこられないしな。
それに俺もそろそろ単独行動はやめて皆と一緒にいたい。仲間外れ状態が辛くなってきたところだから丁度良い。
その後、晴れの日は近海に銀色の飛行物体が現れるということがしばらく続いた。
晴れの日しか来ないということは、アンデッド対策の可能性が高い。やはり野生の魔物などではなくレイライン王国あたりだろう。
目の良いエルフの弓士に見に行かせたところ、金属でできていて人の形をしているそうだ。背中に金属の羽があり、光を放ちながら飛んでいるらしい。特殊な全身鎧を装備した人ではないかということだ。
フルプレートアーマーを着て空を飛んでいるのだろうか? よく分からないが、空を飛ぶユニークスキルかもしれない。
空を飛ぶのはやっかいだが、飛ぶだけなら問題ない。しかし何度も来ているのは気になるな。カイザーに攻撃させてみるか迷うところだ。晴れの日でも再生を使いながらであれば戦えるが多少動きが鈍る。目を焼かれたり再生したりしながら戦うことになるからな。ちょっと不安だ。それにレイライン王国じゃなくて別勢力の偵察の可能性もある。ギルバーンは有名だから別勢力から偵察が来ても不思議ではない。別勢力を攻撃したら無駄に敵を増やしてしまう。
・・・まあ攻撃してこないようなら放っておくか。面倒くさいしな。
「というわけでバーベキューをしましょう!」 俺は皆に言った。
「何よ急に。奇襲に警戒するんじゃなかったの?」 ヨゾラさんが言ってきた。
「いえ、すぐに襲ってくる様子もないですし、配下達はともかく俺達はいつまでも張りつめていては疲れてしまうでしょう。気分転換が必要だと思いませんか?」
「まあそうかもしれないけど。」
「いやあ。リゾートのお客さんがバーベキューをしているのを見たらやりたくなっちゃったんですよね。」 町のリゾート施設にはバーベキュー場もできていて、賑わっていた。
「まったく。まあいいけど。本当に大丈夫なのかしら?」
「もちろん念のため主要配下は護衛につけます。」 聖騎士や騎士団長など統治の仕事をさせていた主要配下にも護衛をさせよう。統治の方も安定してきたようだし、侯爵と執事長と一般兵がいれば十分だろう。
「ふふふ。ユージさんは今まで一人でお仕事してましたからね。」 ユリアさんは賛成してくれるようだ。
「わーい!」 ヨーコちゃんも喜んでいる。
しかしこの反応だと、俺が別行動していた時にバーベキューをしていたようだな。・・・まあいいか。
今日は良い天気なのでバーベキュー日和だ。さっそく別荘の前の海岸でバーベキューの準備をさせた。
晴れているので、つのっち達は参加できないし、メイドなども日光対策装備の鉄仮面になってしまうな。ちょっと残念だが、逆に俺達は気持ちが良いのでいいだろう。
ヨーマ君は残念ながら不参加だ。仕事なのでしょうがない。
配下達がバーベキューの準備をしている間、俺達は水着に着替えて軽く泳いだりした。
遊んでいると準備ができたようで、バーベキューやテーブル、パラソル、ビーチチェアなどが並んだ砂浜で早速肉を食べようとした時だった。
「警戒!」 配下が突然叫んだ。
「攻撃だ!」 別の配下も叫ぶ。
すると突然大盾を持った聖騎士が俺の前に立った。
チュイィン! ドゴオォォォォン!
「うわっ!」「くっ!」「きゃあ!」「ひゃあ!」
突然爆発が起こり俺達は吹き飛ばされた。
「いててっ!」 気を抜いたとたんに攻撃かよ!
すぐに起き上がって前を見ると、小さなクレーターがあり、大盾を砕かれて倒れている聖騎士が見えた。下半身がちぎれている。
高レベルの聖騎士がやられたのか?!
俺よりステータスが低いとはいえ、盾で防いでも一撃でやられるんじゃ、俺も死ぬかもしれない。
しかも今は水着だ! マズいぞ! どうする?! とりあえずスキル発動だ!
ホーリーシールド!ホーリーウエポン!ライトオーラ!身体強化!物理攻撃強化!物理防御強化!魔法防御強化!
目の前に光の盾と槍が浮かび、体から様々な色の光が立ち上る。
攻撃が飛んできた海方向を見ると、遠くに何かが飛んでいるのが見える。
例のヤツだろうか?
俺は周囲で配下達が迎撃陣形をとるのを見ながら、光の盾と槍を構えた。




