第77話 南の島で活動開始
スブ島の幹部達と交渉した結果、少々のトラブルはあったが、スブ島はギルバーンの領地となった。
まあ交渉という名の実質脅しになってしまったが。
ただ、ギルバーンがスブ島を領有したことは、島民や外部には一旦伏せられ、当初の予定どおりギルバーンと島の防衛契約が結ばれたことだけが発表された。
島民がドラゴンやアンデッドに慣れてからでないと混乱が大きいと予想されたためと、レイライン王国などの外部に知られる時期を遅らせるためだ。怖がって貿易船が来なくなってしまっても困るしな。
まあ、ギルバーンの発言は、兵士や領主館の職員に聞かれているので噂はすぐ広がるだろうが、公式発表するよりはマシという判断だ。知らずに来た貿易船に状況を見せて、大丈夫そうと思ってもらうための期間でもある。それでも貿易船は減ってしまうかもしれないが、ヨーラムさんや優秀な配下達の力があれば何とかなるだろう。・・・たぶん。
当初は絶望的な表情をしていた島の幹部達だが、しばらく経っても増税したり財産を取り上げられたりしなかったので、これまでどおり島が存続できそうだと気づいたらしく、落ち着きを取り戻して普通に働くようになった。
まあ、相変わらず逆らったら殺されるかもとは思っているようだが。
島の幹部達には、ギルバーンは統治の詳細には興味がないので、当面は問題を起こさずにこれまでどおり統治していれば良いし、魔物のアンデッドを戦力にするので島民が徴兵されたりすることも無いと伝えている。ただ、罪人はアンデッドにすることも伝えている。おそらく逆らったらアンデッドにされると思っているだろう。
恐怖政治感は否めないが、ギルバーンがトップなので仕方がない。まあ、脅しも買収も効かないアンデッドがウロウロしているから不正は減りそうだし、悪いことばかりではないだろう。
とりあえず統治に関しては配下達とヨーラムさんにまかせて、俺達は島に拠点を作ることにした。
町の中に拠点を作ることも可能だが、町の中だとカイザーや魔物配下が出しにくいので拠点は町の外の良さげな場所に作る。
スブ島は、全長10kmくらいの太いナスのような形をしている島で、中央には山あり、山の周囲は南国っぽい森になっている。
ヨゾラさん達と相談しながら、島をぐるっと見て回った結果、町から少し離れた場所にある綺麗な砂浜に面した森に拠点を作ることに決めた。砂浜から森に入ってすぐの場所に拠点を建てる。
森の奥の方がアンデッドは活動しやすいが、ここは海の魔物配下の拠点になる予定なので、海が近い方が良い。あと俺達の別荘にもなる予定なので、景色が綺麗な場所の方が良い。南国のオーシャンビューの別荘とか最高だ。女性陣も嬉しそうだ。
凄く綺麗なので観光地にできそうな場所だが、海にも森にも魔物が出るので使われていないらしい。しかし俺達なら聖女の神聖結界を張れば魔物は近寄れなくなるので水着で泳いだりできるようになる。
島を丸ごと結界で覆って魔物のいない島にすることも可能だが、海の弱い魔物は漁の対象だし、陸の魔物も島民のレベル上げに使うそうだ。必要な魔物だけ許可することも可能だが、生態系への影響とかありそうなので、やめておいた。必要な魔物の餌になる魔物もいないとダメとか、天敵がいなくなって大繁殖の可能性とか複雑すぎて考えたくないし。
さっそく大工に指示して別荘兼拠点を建てることにした。
俺は綺麗な景色と海の幸と水着の女性陣がいれば、建物などはこだわりは無いが、ヨゾラさんはどうやら南国リゾート風にしたいらしく、大工に色々注文をつけている。ユリアさんとヨーコちゃんはリゾートが何なのか分かっていないようだが、カイザーゴンドラで各町を回ったことで色々な文化に興味を持ったらしく、ヨゾラさんの話を興味深々で聞いている。ヨーマ君もヨゾラさんの話を真剣な顔で聞いている。相変わらず商売にできないか考えているのだろう。
ヨゾラさんが別荘の監修をするので、そのまましばらく俺達もスブ島に滞在することにした。
魔の森の拠点には、それなりの戦力を置いてあるし、死に戻りでの定期連絡もしているので問題ないだろう。人員が不足しそうならカイザーで送り込めばいい。
滞在場所は、町の宿ではなく、別荘予定地で例のキャラバン野営だ。腕の良い料理人も風呂もあるので、もはや町より快適だからだ。ヨーコちゃんやヨーマ君の寝室馬車も用意してある。俺達のステータスなら町まで走ればすぐ着くから買い物なども不便でもない。ちょっと自転車でコンビニへ行く感覚の距離だ。
ヨーマ君は、とにかく色々やってみることにしたらしく、町で商売もしているし、町の統治の手伝いもしている。俺達が何かする時も戦闘以外はできるだけ見に来ることにしたようだ。ヨーマ君もステータスが高いので、バイクみたいな速度で走って町との間を行ったり来たりしている。凄く忙しそうなので心配になるが、生き生きしているし、若者は多少無茶してなんぼなので、まあ大丈夫だろう。たまに聖女の回復魔法をかけてあげよう。
とりあえず俺は別荘が建つのを待っている間、海の魔物を配下にする作業をすることにした。レイライン王国からスブ島を守らなければいけないからな。
配下にするには俺が死体収納で魔物を倒さなければいけないが、いくらステータスが高いとはいえ俺が水中で戦うのは危険すぎる。呼吸ができなければ死ぬからな。海賊配下に殺さない様に倒させて浅瀬まで持ってこさせよう。
俺はビーチでのんびりジュースを飲んで、リゾート気分を味わいながら待つだけだ。
そして数時間ほど待ったが、海賊配下が持ってきたのは弱い魔物ばかりだった。いかに高レベル海賊といえど、水中で強い魔物に勝つのは難しいらしい。魔物にやられた配下もいるようだ。
よく考えたら当たり前だ。別に海賊は水中戦のエキスパートというわけではない。泳ぐのが普通より多少速いというだけだ。呼吸が不要で溺れなくても魚より自由に動けるわけではない。しかも殺さずに気絶させなければいけない。同格にはもちろん勝てないし、格下でもかなりの実力差がないと厳しいだろう。
勇者にステータスゴリ押しさせることも考えたが、どうやら水中ではよく見えないから難しいらしい。言われてみれば水中眼鏡無しで潜ってもよく見えないよな。海賊なら多少見えるようだ。
今回配下達が取ってきた魔物は一応能力の確認のため1種類1匹ずつ配下にしてみたが、弱い魔物が多いし、多少強い魔物はエビとか貝とか動きが遅い魔物が多い。やはり動きが速くて強い魔物をつかまえるのは難しいようだ。しかし、俺は偵察したり自力で船まで移動して攻撃したりできる配下が欲しい。1mくらいの鯛みたいな魔物は高レベル戦士にすれば使えるかもしれないが、できればもっと強い魔物がほしいし、海賊配下を引っ張って泳げるくらいの大きさの魔物がいい。
一旦中止にして配下達と相談したところ、水中戦用の装備があれば多少は強い魔物とも戦えるのではという意見が出た。今の海賊配下は船の上で戦う前提の片手剣などの装備だが、町では水中用の銛や足ヒレが売っているらしい。
それと船を出して沖で釣りをしてはどうかという意見が出た。強い魔物を釣るなんて無理じゃないかと思ったが、海賊配下によると、沖で釣りをしていると、かかった魚が強い魔物に喰われることがたまにあるらしい。普通の釣り糸では切れてしまうが、大きい針と丈夫なロープなどを使えば釣れるという話だ。そういう漁の方法もあって一応経験者もいるようだ。水面付近まで獲物が出て来たら、漁師や槍士がロープ付きの銛をスキルで投げて突き刺して引っ張ったりするらしい。配下は高レベルで力はあるので、死体収納の射程内まで引っ張るだけなら殺さずにいけるかもしれないそうだ。
というわけで両方試してみることにした。
町で必要な物の買い出しと、釣り場等の情報収集を配下に指示した。
2日後、準備ができたようなので出発することにした。思ったより早かったが、どうやら権力で無理やり用意させたようだ。多めの報酬を払ったのでたいした不満は出なかったらしい。大物釣り用の器具はすでに船に設置してあって、銛や足ヒレもそこそこの数が用意できたようだ。海賊配下全員分には全然足りないが、うまくいくか分からないので、まずは少人数で実験だ。
ちなみに水中眼鏡のような物もあって、ヨーラムさん達も水中作業で使っているようだが、ガラス製のため高価で壊れやすいので戦闘には使えないそうだ。
仲間達には船で魔物を釣りに行くと伝えてある。
ヨゾラさんは別荘の監修に忙しいし、ユリアさんやヨーコちゃんは泳ぎに自信がないようなので、俺一人で行くことにした。
万一魔物に船が沈められた時に、救助人数が多いと助けられるか不安だからだ。
船が沈められた時は、海賊配下と泳げる亀と水中で戦えそうなカニを出して守ってもらい、カイザーに魔法で海から引きあげてもらう予定だ。そしてそのまま配下は放置して島に帰る。配下召喚や配下復活のスキルがあるので配下を救助する必要は無い。
港まで行き船に乗り込む。
もうコソコソする必要は無いため、カイザーで直接港から出発する。
カイザーはギルバーンがいないと出せないことになっているので、ギルバーンも一緒だ。
まだドラゴンに慣れていない住民達がワーワーと騒ぐ声を聞きながら、カイザーシップは出発した。




