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第11話 人間の配下アンデッド


 町を出て東へ向かう道をしばらく進んだあと、俺は道をそれて周囲を警戒しながら森の近くの木陰に向かった。


 つのっちを出し、周囲警戒を頼む。

 さっき襲ってきた3人を配下にすることに決めたのだ。


 グレイがやられてしまったため、今の配下は弱いつのっちしかいない。

 今不意打ちを受けたら終わる状況だ。すぐにでも戦力を補充する必要がある。


 それに、今回のことで俺には不意打ちを回避する能力が無いことが分かった。

 いや、分かってはいたが、軽く考えすぎていたことを痛感した。異世界をなめていたのだ。

 今後は油断せず町の中でも常に配下を護衛としてつけるべきだ。そのためには人間の配下が必須になる。

 正直こいつらの顔なんて見たくないが、命には代えられない。


 覚悟を決めると、念のためまず自分のステータスを確認した。


ーーーーー

名前 ユージ

種族 人間Lv8

年齢 18

職業 死霊術士Lv8

HP 79/162

MP 239/399

身体能力 17

物理攻撃力 17

物理防御力 17

魔法攻撃力 53

魔法防御力 53

ユニークスキル

 死体収納

スキル

 配下作成

 配下解放

配下

 上級アンデッド 2

ーーーーー


 レベルが2も上がっている。

 ・・・人間を殺しても経験値が入るんだな。レベルアップのために人を殺す人がいそうでちょっと怖いな。

 資料室の本には魔物としか書いていなかったが、人殺しを考える人が増えないようあえて書いていなかったのかもな。

 まあ、経験値の法則が魔物と同じなら最初の10人くらいまでしか経験値は入らないから経験値のために虐殺が起きたりはしないんだろう。

 あと思ったよりはHPは減っていなかった。まあ武器は使われなかったしな。殴られただけの割には減っているとも言えるか。


 よし!今も危険だし、とっとと済ませよう!


 取り出し!配下作成!取り出し!配下作成!取り出し!配下作成!


 3人連続で一気に配下作成を発動してみた。


 3人の死体の下に暗く光る魔法陣が次々と現れ、黒い光が死体を包む。


 どうやら連続で使用しても問題ないようだな。一人が終わるまで待たなくても良いらしい。


 しばらくすると魔法陣と光が消え。三人がゆっくりと起き上がった。


 初めての人間の配下アンデッドにドキドキしながら、試しにリーダー格だった青髪に話しかけてみる。


「言葉は分かるか。」

「はい。」 青髪が無感情に答える。


 ふむ。言葉は通じるようだ。やはり生前の知能を引き継ぐようだな。色々聞いてみよう。


「生きていた時の記憶はあるのか?」

「はい。あります。」


 よし!それなら情報収集が色々できるぞ!

 しかし、そうなると俺を恨んでいたりしないだろうか? ・・・ちょっと不安だ。


「俺を恨んでいたりするのか?」 聞いてみた。

「いいえ。そのような感情はありません。」 感情がないのだろうか。

「俺に殺されたことは覚えているんだよな? 殺されたのに恨まないのか?」

「殺された記憶はありません。ご主人様に切りかかったところまでです。それと私はこの体の記憶を持っていますが、この体が生きていた時とは別の存在です。」


 ・・・別人が死体に宿って動かしている感じなのか。それなら恨みはないかもな。

 それと死体収納で一瞬で収納されて死んだから、何されたのか分からなかったのかもな。特に苦しんだりとかは無いらしい。


 あと、ゴロツキみたいなやつにご主人様って呼ばれるとすごい違和感があるな。

 まあいい、感情があるかもうちょっと聞いてみるか。


「今後ひどい目にあわせたら俺を恨んだり、憎んだりするのか?」

「わかりません。今のところ何も思いません。」

 わかんねえのかよ。まあ生まれたばかりみたいなものだからな。

「じゃあもし、俺のことを恨んだり憎んだりしたら報告するように。」

「わかりました。」

 とりあえずこれで良いだろう。


 そういえば今気づいたが、こいつら装備や所持品も身に着けたまま一緒に収納されてたな。

 人間を収納したことが無かったから気づかなかったが、荷物を持たせたら荷物も収納できたりするのか? そうならすごく便利だぞ! さっそく試してみよう!


 とりあえず手下の一人にバックパックを背負わせて収納してみる。

 収納できた! そして問題なく出せた!


 よっしゃ! これなら実質アイテムボックスみたいな物だ! 時間停止もあるから何でも保存できるぞ! 

 あとはどのくらい大きい物や重い物が入るかだな。

 持ち上げる必要があるなら重すぎる物は無理かもしれないが、細かいものなら配下を増やせばたくさん収納できるぞ!



 そういえばステータスはどうなっているのだろうか? 色々聞いてみた。


 まず、3人のレベルは

青髪 人間Lv15 戦士Lv8

手下1 人間Lv11 職業無し

手下2 人間Lv10 職業無し

だそうだ。


 職業無しって何でだよ! 訓練すればなれるのになんで剣士とかにならなかったんだ? 働いたら負けだと思っているのか?


 聞いてみたところ、自主訓練だけで剣士になれるのは一部の天才だけで、普通の人が剣士などの武器職になるには、道場のようなところに何年も通う必要があるらしい。金と時間が無いと無理とのことだ。


 ・・・意外と大変なんだな・・・たぶん俺にも無理だな。


 とりあえず聞きたいことはまだあったが、いつまでも町の近くにいるのは不安だったので、歩きながら聞くことにした。

 天気が良すぎてアンデッドはそのままだと焼けるので、青髪にフード付きマントを着せて護衛にして、手下二人とつのっちは収納することにした。

 フード付きマントは1つしか無いからな。次の町で買おう。荷物は手下に持たせて収納した。


 天気の良い道を歩きながら、青髪に戦士はどうやってなったのか聞いてみると、戦士は近接戦闘でいろいろな種類の魔物をたくさん倒すと覚えるらしい。色々な場所をまわってレベルを上げている近接職はだいたい戦士も覚えるそうだ。

 青髪は、元は色々な場所に行ってレベル上げをするパーティーに所属していて、その時は真面目にやっていたが、オークの群れにやられてパーティーメンバーが死んだり引退したりして解散になり、再度パーティーを組もうとしてもうまくいかずにやさぐれてしまい悪さをするようになったそうだ。

 人を襲うのは今回で3回目で、前の2回もバレていないらしい。

 やっぱり初犯じゃなかったか。

 俺をどうするつもりだったか聞くと、金を奪ってHPをゼロにしてスラムに放置する予定だったらしい。

 スラムに放置するとスラムの人間が身ぐるみ剥いで勝手に始末するので、自分で殺さないためスラムの人間が犯人になりやすく、足がつきにくいらしい。

 やっぱり金を出しても殺られていたのかよ!

 しかし意外と考えられているな。バカっぽい見た目なのに意外と頭がまわるのか? 質が悪いな!


 それと俺が収納スキルを持っていたのも知っていて、収納の中身は殺すかHPをゼロにすれば出てくるそうだ。

 収納スキル持ちは貴重品を収納に入れていたりするので狙われやすいらしい。


 ・・・そうか。収納スキルも俺が狙われた理由だったのか・・・

 でも収納スキルを隠すと面倒くさいからな。常に護衛をつけるようにするしかないか。


 あとはアンデッドになってステータスが変化したかを聞いたところ

・種族が上級アンデッドLv1(人間Lv15)になった。

・最大HPが53増えた。

・スキルに再生、死体喰い、暗視が増えた。

・状態がユージの配下になった。

・それ以外は変化なし。

とのことだ。


 ・・・結構変わっているんだな。

 種族はまあ予想どおりか。もとの種族も記載されているんだな。ステータスを引き継いだからかな。最大HPが中途半端に増えたのはアンデッドになったからだろうか?

 ・・いや53は俺の魔法攻撃力と魔法防御力と同じ数字だ。俺の配下になったからかもな。

 それとアンデッドっぽいスキルが増えているな。あと状態という項目は俺のステータスにはないが、状態異常になったりすると表示されるらしい。

 配下は状態異常なのか? まあ操られているのだから状態異常みたいなものか。


 スキルの詳細も聞いた。

・再生 MPを消費してHPや欠損を回復する。

・死体喰い 動物の死体を食べてMPを回復する。

・暗視 暗い場所でも目が見える。

というものらしい。


 グレイやつのっちがツノウサギを食べていたのはMP回復のためだったんだな。

 ついでにアンデッドについて知っていることを聞いてみると、アンデッドは疲労しないし寝ないそうだ。それと核となる魔石を破壊しないと死なないらしい。ただ日光で焼けるし、光魔法にすごく弱く、浄化の魔法で割とあっさり消滅するらしい。


 MPがあるかぎり自己回復できて死体を食べればMPも回復して疲労も睡眠もしないなら、アンデッドは倒した敵を食べて24時間無限に戦えるってことだな。アンデッド軍団を作って兵士にしたらめちゃくちゃ強そうだ。

 まあ、日光で焼けるし、浄化魔法で消滅するらしいから弱点を突かれたら弱いのかもしれないが。


 話しながら歩いていると、日も暮れてきたので野営をすることにした。


 念のため道から見えないよう少し離れて、適当な場所で配下を全員出す。


 ちなみに俺は野営をしたことはない。日本でもキャンプにも詳しくないインドア派だ。

 しかし、配下の3人は真面目に冒険者してた時期もあるため野営をしたことがあるらしいので、配下にまかせることにした。


 俺も野営の方法を覚えた方が良いかとも思ったが、面倒だし今後一生配下にやらせれば問題ない。

 俺はつのっちを撫でながらのんびり休憩することにした。


「ぶぅ」つのっちの鳴き声は癒されるな。


 つのっちを撫でていると、グレイが死んだことを思い出した。

 お気に入りだったグレイを埋めてやることにした。


 グレイを収納から出すと動いていた。


 ・・・そういえばアンデッドは魔石を破壊されないと死なないんだったな。

 体が真っ二つになっているのに普通に動いているのでちょっと気持ち悪い。

 アンデッドなせいかあまり血は出ていないからまだマシだが。


 どうすれば良いのだろうか。青髪と同じスキルをもっているなら死体を食べさせれば治るかな?


 試しに二つに分かれた胴体をくっつけて、餌用のツノウサギを食べさせてみると、ゆっくりと体がつながるように治っているのが分かった。


 しばらく見ていると完全に回復したらしく、しっかりと立ち上がった。


「グレイ・・・・良かった。」俺は嬉しくなり、涙目でグレイを撫でた。

 ・・・相変わらずグレイは無感情な感じだった。


 まあいいか。治って良かった。


 しかしグレイは青髪にあっさりやられてしまっていたよな。

 索敵やウサギ狩では役に立つだろうが、護衛としては弱いんだろう。

 最初の配下として思い入れもあるから少し寂しいが、今後は戦闘要員からは外して、つのっちと同じくサポート要員として考えるか。

 グレイはかっこいいからいるだけで気分が良いしな。


 野営の準備も終わっていたので、焚火にあたりながら不味い保存食を食べる。


 こうなってくると料理ができる配下が欲しいな。さすがにゴロツキ3人は料理はできないらしい。


 とはいえ、これ以上人間を配下にする予定もないので、町についたらお弁当をたくさん買って収納しておくことにしよう。

 あまり良いお弁当が売っていた記憶はないが、保存食よりマシだろう。


 あとは、晴れていても戦えるような配下用装備も考えた方が良いだろうな。


 配下の装備を見る。


 青髪は俺よりちょっと高そうな所々金属プレートで補強された革鎧と、ちょっと良い鋼の剣っぽいのを装備している。

 手下の2人は俺とおなじく安そうな革鎧を装備していて、安そうな剣を装備している。

 前衛なのにヘルメットはつけていないが、町中だから宿や家に置いてきたそうだ。

 こいつらの荷物を取りに行かせて捜索願を出されないように工作した方が良いだろうか?


 捜索願を出されたりしないか聞いてみると、青髪はよそ者だし、手下二人はガストークに実家があるが厄介者扱いされていたので捜索願を出されることは無いとのことだ。

 それなら町を出なくてもよかったか?とも思ったが、目撃者に通報されているかもしれないし、こいつらが別人のようになったら知り合いや家族に怪しまれてアンデッドになったことがバレやすいので、やはり戻るのは止めた方がいいだろう。

 それにこいつらの過去の犯罪がバレて捕まったらアンデッドなことがバレるしな。

 ステータスが「ユージの配下」になっているから俺が主犯にされてしまう。

 そう考えると犯罪者を撃退して配下にするのもリスクがあるな。

 とはいえ今こいつらを手放すのは戦力的に無理だからな。こいつらの過去の犯罪がバレないことを祈ろう。



 眠くなった俺はグレイと配下3人に見張りをまかせ、つのっちを撫でながらテントで眠りについた。



 夜の月が無表情に立ち尽くす男たちとオオカミを怪しく照らしていた。


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