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転生して死霊術士になったけど敵が多すぎてヤバイ!  作者: はくさい
外伝 錬金術師が悪い死霊術士と戦うお話

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外伝25 首都占領


 ギルバーン討伐軍は順調に進んでいた。


 しかし、ユージとギルバーンのいるレバニールの町まで3分の2ほどの行程を進んだ時、突然討伐軍は進行方向を変えた。どうやらゴルドバの首都の方向に向かっているようだ。

 何かあったのだろうか?


 私は何も聞いていなかったので、指揮官のルギスと副官のガイラルに状況を確認することにした。

「ルギス、ガイラル、首都方面に向かっているようだけど何かあったの?」

「アスカ様、ちょうどお知らせしようと思っていたところです。我々も知らされていなかったので確認に手間取ってしまいました。」

 どうやら二人も事前に知らされていなかったようだ。私達の軍は、レイライン王国軍の後ろをついて行っているだけなので、行軍には問題ないが、普通は事前に連絡がある。やはり何かあったようだ。

「かまわないわ。それで?」

「はい。ゴルドバの首都にもギルバーンの協力者と多数のアンデッドがいることが確認されているため、先にそちらを叩くことになったそうです。」

「首都にアンデッドがいるのは聞いているけど全軍で向かうほどの敵が出たの?」

 事前資料では、ギルバーンとユージは現地の商人と組んでアンデッドを労働力にしてお金を稼いでいるらしい。ただ、首都には弱い労働用アンデッドと商人しかいないらしく、ルディオラの滞在員だけでも浄化と制圧ができる規模だと聞いている。浄化してしまわないのは、ゴルドバでは法律上、人を襲っていないアンデッドは飼いならされた魔物や家畜と同じ扱いになったらしく、他者の所有するアンデッドを勝手に浄化することは禁じられているからだそうだ。ルディオラでは考えられないことだが、国によってアンデッドに対する考えは大きく違うのだろう。

「おそらくそうだと思いますが、スパイ対策ということで詳細は教えてもらえませんでした。」

 私が戦力になることは示したが、やはり百人程度の軍では扱いは軽いままのようだ。

「何か他に情報はある?」

「我々もゴルドバの首都にある太陽神教の神殿から逐一情報を得ていますが、今のところ敵が増えたという情報は聞いていません。ただ、ギルバーンはドラゴンやリッチを召喚できますし、ユージはアンデッドの大軍を隠し持つことも可能なので、大戦力を持ったまま隠れることも可能になります。もしかしたら敵が隠れているという情報を掴んだのかもしれません。」

 確かに普通ならドラゴンやアンデッドの大軍は目立つので隠れることはできないが、ユージとギルバーンの能力ならそれが可能になる。かなりやっかいな能力だ。

「じゃあ、首都でユージやギルバーンと戦う可能性もあるのね?」

「あくまで可能性ですが、その通りです。念のためいつ戦闘が始まってもいいように準備しておいた方が良いでしょう。」

「わかったわ。」

 状況はハッキリとはしないが、いつ戦いが始まってもいいように、すぐに全力で戦えるようにしておこう。不意打ちにも常に警戒が必要だろう。



 数日後、討伐軍はゴルドバの首都の大きな港町についた。

 討伐軍は町の外に待機していて、ゴルドバの使者と何やら話しているようだ。

 ゴルドバの首都は、町の外周には壁は無く、中心部分のみが水堀と壁に囲われていて、今は跳ね橋型の門は閉じられているようだ。

 ゴルドバ側は厳戒態勢のようで、兵士達は明らかにこちらを警戒している。どうやらゴルドバの了承は得ていないらしい。


 どうするのかと思っていると、王国軍の一部が首都の中心部に向かっていった。

 魔導ゴーグルの望遠機能を使って高い位置から様子を見てみると、王国軍はまるで攻め込むような勢いで大通りを門に向かって進んでいる。

 王国軍が門の前につくと開門を要求している様子を見せている。


 そのまま見ていると、突然堀に正方形のブロックをつなげたような見た目の橋がかかり、王国軍の先頭の鎧の男が剣を振ると巨大な門がバラバラに切り裂かれ崩れ落ちた。そして城壁の上にいるゴルドバ兵が攻撃された様子もないのに突然バタバタと倒れだした。

 その後、王国軍は中心部へ突入していった。



 ・・・明らかに攻め込んでいる。そして何をしたのかよく分からなかったがユニークスキルが使われた可能性がある。

 いったい何があったのだろうか? 



 緊急事態の可能性が高いので、ルギスとガイラルに今見た事をすぐに伝えた。

 ルギスとガイラルはすぐさま兵に戦闘態勢をとるよう指示し、状況確認の伝令を王国軍に送った。

 戻ってきた伝令によると、ゴルドバの中枢にいるギルバーンに協力している権力者を捕らえるために、精鋭部隊を突入させたということのようだ。ギルバーンの協力者が特定できたらしい。


 理由は分かったが、少々不穏な雰囲気なのでルギスとガイラルに意見を聞いてみた。

「事前の予定にない戦いだけど問題ないの?」

「うーん。問題ないかと言われると問題は大いにありますが、軍事的な理由は一応理解できます。敵に協力している権力者というのがどの程度の立場かにもよりますが、ギルバーンと戦っている最中に後方からゴルドバ軍に妨害されては非常に厳しい事態になるため、事前に対処しておこうということですので、判断としては不自然ではありません。捕らえるだけなら全軍で来る必要はありませんが、最悪ゴルドバ軍全体と戦闘になる可能性もあると考えれば全軍で来たことも納得できます。突然奇襲したのも、気づかれると軍を使って抵抗されるので、被害を抑えて捕縛するためだと思われます。」 ガイラルが答えた。作戦としてはおかしくないようだ。

「問題というのは何があるの?」 

「はい。外交上は明らかに問題があります。相手に非があったとしても、他国の権力者を同意無しにいきなり捕縛するというのは、戦争をしかけるのと大差ありませんので、普通はこんなことはしません。おそらく世界会議の決定を盾にどうにかするつもりなのでしょうが、国際問題に発展する可能性は非常に高いです。」

 国際問題か。まあそれを考えるのは私の役目ではない。重要なのは今回の討伐がうまくいくかどうかだ。

「そう。私はユージとギルバーンの討伐に集中したいけど、影響はある?」

「うーん。そうですね。おそらく今回の討伐戦への影響は小さいでしょう。各国の援軍とレイライン王国の不和が起きる可能性はありますが、援軍は元々見ているだけの予定ですし、問題が大きくなるのは討伐が終わった後になると思います。なので、アスカ様はこれまでどおり戦いに集中していただいて問題ありません。」

「それならいいわ。」

「ただ、少々違和感がありますので、念のためレイライン王国にも警戒をお願いします。」

「・・・わかったわ。」 レイライン王国にも警戒か、面倒なことにならなければいいが。




 そしてゴルドバの首都に来て数日がたった。


 私は領事館を兼ねている太陽神教の神殿に滞在し、討伐軍の出発を待っていた。

 レイライン王国はそのままゴルドバの首都を占拠し、ギルバーンの協力者の捕縛、捜索、尋問を行っている。対象の権力者は捕らえたが、ギルバーンに近い位置にいるとみられる商人やアンデッドは捕らえることができず捜索中らしい。

 私としては権力者を捕らえて後方を脅かされる心配がなくなったのなら、さっさと討伐に向かってほしいが、未だ出発する気配はない。


 イライラしながら待っているとマサノブから呼び出しがあった。

 用件はわからないが、大方魔導外骨格のことを聞きたいとかだろう。

 魔王対策にも使えるだろうから仕方ないが、面倒な話になりそうなので気が進まない。討伐が終わったら全て情報を開示するとでも約束してやり過ごそう。ついでに出発予定がいつになるか聞いてみよう。


 呼び出されたゴルドバの宮殿に入ろうとすると、武装解除を要求されたので、軍紀により武装解除はできないと言って断った。

 これは事前にルギスとガイラルから指示されていたことで、ここは戦地なので武装解除は絶対にしないようにと言われている。

 味方のレイライン王国軍から要求された場合でも、ここはレイライン王国ではないので従う必要はなく、慣例上、軍紀により対応できないと言えば穏便にすませることができるらしい。


 担当の兵士は少し驚いていたが、私のことは知っているらしく、裏に何か確認にいったあと問題なく通された。



 案内された部屋に行くと、マサノブの執務室のようで、事務仕事をするマサノブと秘書のリリーと兵士が数名いた。

「ああ。よく来てくれた。そこに座ってくれ。」

 私は執務室内にあった来客対応用のソファに座った。リリーがお茶を出してくれる。

「・・・その恰好で入れたのか?」 私が武装しているのが気になったようだ。マサノブは武装していない。戦闘要員ではない参謀だからだろうか? 

「ええ。軍紀で武装解除はできないことになっているのよ。戦地ではそれが普通だそうよ。」

「そうなのか。確かに戦闘があったから、ここも戦地か。」 まあ日本人には町の中が戦地と言われてもピンとこないだろう。私もそうだ。

 マサノブもソファに座り話し始めた。

「まあいい。今日来てもらったのは君の装備のことだ。これは討伐軍ではなく魔王対策チームとしての協力依頼なんだが、君の装備は魔王対策に非常に有用だと考えている。世界のために入手方法や製作方法などの情報が必要だ。ぜひ協力して欲しい。」

 やはり魔導外骨格についてのようだ。討伐軍ではなく魔王対策チームとしてなら交渉許可が出たのだろう。

 予定通り情報開示は討伐後に行うことにして討伐軍の状況を聞こう。

「協力するのはいいけど、前にも言ったとおり私はユージとギルバーンの討伐を優先しているわ。先に討伐軍の現状と出発予定を教えてほしいわね。」

「・・・そうか。では状況を教えよう。討伐軍では、ギルバーンやユージと直接取引をしている商人がこの首都に来ているという情報を掴んだ。そのため、その商人の捜索を行っている。その商人を捕らえて情報を吐かせてから出発する予定だ。」

「・・・それはいつになるの?」

「まだ見つかっていないので未定だ。」 マサノブのそっけない言い方にはイライラする。

「未定? なぜそんな悠長なことをしているの? 問題なく勝てる戦力があるならゴルドバ軍に邪魔されない様にするだけで十分でしょう? 本当にやる気があるの?」 私の胸の黒い渦が早くユージを殺せと叫んでいる。

「・・・君はそんな考えだから何度も負けるのだよ。」 マサノブは急に人を見下したような態度になった。

「なんですって?」

「問題なく勝てるというのは勝つためにあらゆる手段を用いて全力を尽くすからだ。戦いに絶対は無いと言っただろう。ちょっとした見落とし一つで強者が弱者に負けることもある。そもそも君は敵の戦力を把握しているのか? 君が見た戦力が全てだと思い込んでいるんじゃあないか? 敵に何倍も戦力がいたらどうする? 情報収集を怠るなんて馬鹿のすることだ。」

 これがこの男の本性なの? しかも何を言っている? 何倍も? そんなことがありえる?

「・・・ドラゴンはこの世界で最強クラスの生物だと聞いているし、数も非常に少ないと聞いているわよ。常識的に考えて何倍もの戦力はありえないわ。」

「常識的? はぁ・・・だから馬鹿だと言うんだ。 君は自分が常識的な存在だと思っているのか? 我々日本人はこの世界にきて異常な速度で強くなった。神から非常識な力を与えられたからだ。我々は非常識な存在なんだ。常識で考える方がおかしいとなぜ気づかない。そして非常識な我々の最上位にいるのが君やユージだ。個人では最も非常識なのが君だし、仲間を含めれば更にその上をいくのがユージ達だ。君は前回の戦いから何倍も強くなった。なぜユージ達も何倍も強くなっている可能性を考えない。頭が悪すぎるんじゃあないか?」

 どうやらユージ達が強くなっていると考えているようだ。この男の態度は腹が立つが、言っていることは真剣に考えた方がいいかもしれない。

 ・・・確かに私は非常識なほど強くなったし、前回の戦いより何倍も強くなった。でもドラゴンより強くなったわけではない。ユージはドラゴンより強くなれる? ・・・私はまだ最上位の特別機という強くなる余地を残している。 ユージも同じようにさらに強くなる余地があって、すでに強くなっている可能性がある?

「頭が悪い君にも分かるように簡単に言ってあげようか? 戦いの記録を見ればユージ達は、初めてメルベルに現れた時と次に聖女と戦った時では何倍も強くなっている。そしてその次の勇者と戦った時はさらに何倍も強くなっている。じゃあ次も何倍も強くなっているかもしれない。単純な話だ。目撃情報は無いが、やられた勇者パーティーがそのまま配下アンデッドになっているだけでもかなり強くなるだろう。」

 確かに勇者達がアンデッドになっていてユニークスキルが使える場合は、ドラゴンほどではないが、かなり脅威だ。

 私はここまで馬鹿にされるほど自分が頭が悪いとは思っていないし、勇者達のことも考えたことはあるが、討伐軍には日本人が大勢いるから大丈夫と安易に考えすぎていたかもしれない。日本人達の能力を知っていそうなマサノブがこんなことを言うということは、そこまで圧倒的な戦力ではないということか。よく考えると私も復讐のために強さを求めていなければ、町で後方支援しかできなかっただろう。そう考えると日本人でも戦えない人は多いはずだ。勇者が日本人の中でトップクラスの戦闘能力だと仮定すると、ユニークスキルがあってもドラゴンや勇者と戦えるレベルの人は少ないのかもしれない。

「便宜上ユージ達と言ったが、実際にドラゴンを召喚できるのがギルバーンであることを考えると、私はギルバーンの強さの理由は、日本の知識と異世界の知識の融合にあるのではないかと考えている。」

 自分の考えを披露するのが好きなのか聞いてもいない事を話し出した。腹は立つが復讐に役に立つことかもしれないので今は我慢して聞いておこう。

 私が素直に聞く態度を示したのを見てマサノブは話を続けた。

「ギルバーンはメルベルに現れるまでは無名の存在だった。ということは、以前から実力者ではあっただろうが貴族と戦うほどの力は無く隠れ住んでいたと考えられる。つまりギルバーンはユージと出会って急激に強くなったということだ。ユージが強くなるならともかく、ギルバーンが強くなることはユージのユニークスキルだけでは説明がつかない。おそらくユージは医学か化学か分からないが死霊術に役立つ専門知識を持っていたのだろう。ギルバーンは研究者のようだし、ユージの日本の科学知識とこの世界の死霊術の知識の融合により、ドラゴンを使役するという偉業をなしえたと考えられる。そしてユージがギルバーンの弟子だというなら、いずれユージもギルバーンと同じことができるようになっても不思議ではない。もうなっている可能性もある。つまりドラゴンが2体いる可能性も十分に考えられるということだ。」

「・・・ドラゴンが2体。」 ドラゴン2体にユニークスキルを持つ勇者達やセイラもいるかもしれない。攻撃が効かない女やユージの死体収納もやっかいだし魔物の大軍も増えているだろう。他にも未知の戦力はいるだろうし、討伐軍の戦力にもよるが、確かに不用意に仕掛けるのは危険なのかもしれない。

「これはアドバイスだが、君は頭が悪いのだから自分の判断で行動するより、頭の良い人の指示で動いた方が良いと思うね。このままでは返り討ちにあうのは過去の結果を見ても明らかだ。遠回りに見えても頭の良い人に従う方が、結果的に早く目的を達成できるだろう。」

「・・・ええ、納得だわ。」

「ふむ。思ったより物分かりがいいな。頭は悪いが理解力はそれなりにあるようだ。結構。君の知りたいことは教えたから今度はこちらが聞く番だ。まずは君の装備の入手経路と製作方法を教えてくれ。」

「私の装備の情報は、私の復讐が終わったら開示するわ。」

「・・・納得したのではなかったのか? 私の指示に従った方が良いという意味だったんだが、頭が悪すぎて理解できなかったか?」

「いいえ納得したわ。私の復讐に協力してくれる頭の良い人を探すことにするわ。あなたがそうだと言うのなら、復讐の後に情報を開示するのだから問題ないでしょう。」

 この男は、これだけ人を馬鹿にしておいて、本気で情報を引き出せると思っていたのだろうか? 言うほど頭は良くないのではないだろうか?


「ふぅ・・・やはり無理か。物分かりが良いならまともな待遇にしてやろうと思っていたが、仕方ない。残念だ。」

「?・・・それはどういう・・・っ!!」 急に視界がぼやけ、意識が遠のいていく。

「緊急バリア展開。不明スキルニヨル攻撃的干渉ヲ検知。意識レベル低下・・・・」 「む!何かしているぞ!取り押さえろ!」

 遠くからジェリーと男の声が聞こえるが何も考えられない。



 私の意識はそこで途切れた。





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