外伝21 魔導外骨格完成
魔導外骨格製作拠点に来て数日が過ぎた。
その間、各種設備を鑑定したり、経年劣化でダメになっていた材料を集めたりして、何とか魔導炉やデータサーバーや建物内の配線などの基本設備の修理を終えることができた。
幸い設計書等の重要データは無事であったため早速私は魔導外骨格の詳細を確認した。
その結果わかったことは、生産ラインにならんでいた物は、一般兵用の量産機で、それとは別に特殊部隊や高レベル者用にオーダーメイドする高性能な特別機があるということだ。
量産機でも兵装を変えれば色々なことができるらしく、高火力兵装、偵察兵装、電子戦兵装などがあり、かなり強そうではあるが、ドラゴンを相手にするのは厳しいようだ。私に必要なのは高性能の特別機だろう。
設計書を確認すると、特別機には制御AIや出力アップ等に機械式魔導精霊を使用するらしく、最低1体の魔導精霊が必要で、最大で7体の魔導精霊を組み込んだ物が最高性能のようだ。
・・・エルフの国での精霊採集は後回しにしたので、今持っている魔導精霊はジェリー1体しかいない。
設計書を見る限り、特別機の作成には、まだ修理しなければならない設備や採取してこなければならない材料も結構ある。今すぐルディオラに戻ってもエルフの国への入国許可がおりているかは分からない。精霊採集の許可がおりるかどうかも分からない。おそらく精霊7体を使った最高性能の特別機は、時間が足りなくて討伐軍に間に合わないだろう。逆に精霊1体の特別機であれば間に合う可能性が高い。
ジェリーに確認すると、精霊1体の特別機でも例のドラゴンと互角に戦える可能性は高いそうだ。
互角では他の敵もいることを考えれば勝てないが、討伐軍も何かしらのドラゴン対策をしているはずなので、討伐軍と一緒に戦えば勝てる可能性も十分ある。
ということは、ドラゴンと互角の特別機で討伐軍と一緒に戦うか、今回の討伐軍は見送ってドラゴンに勝てる特別機を作ってから戦うか、どちらにするかということになる。
・・・討伐軍と一緒に戦おう。
最上位の特別機がどのくらい強いのかも分からないし、他の敵も大勢いるから最上位の特別機を作っても勝てるとは限らない。それなら討伐軍と一緒に戦った方が勝てる確率は高い気がする。討伐軍だけでも勝てる準備をしているはずだし、私が一人でドラゴンを押さえることができれば討伐軍の勝率はかなり高いだろう。何より私が何もしないうちに討伐が終わってしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。
方針を決めた私は早速作業を開始した。
ジェリーと手分けして休みなく一心不乱に働いた結果、特別機の戦闘用魔導外骨格は20日ほどで作ることができ、そこからさらに数日調整を行い、無事に期限前に完成した。
普通ではMPが足りなくて間に合わないところだったが、この拠点には魔導炉から人間のMPを回復できる装置があったため、MPを気にせず作業することができた。
調整に時間がかかったのは、近接武器の形状を薙刀に変更したり、魔導外骨格に組み込まれてしまったジェリーをこれまでどおりドローンとしても使用できるように改造する作業に時間がかかったためだ。特にジェリーは、未使用時にドローン形態になるオプションは最初から設計書にあったので良かったが、これまで使っていたジェリー用システムをそのまま使えるようにするのに手間取った。同じ会社のシステムのため互換性はあったが、無理やりつなげたので配線などがごちゃごちゃだ。素人が作った自作PCのような感じになっている。まあ配線やシステム本体は常時魔導コンテナ内にあって見えないので問題ないだろう。見た目は少し変わって角ばった感じになったが、これまでどおりジェリーはドローンとして使えるようになった。
さっそく完成した戦闘用魔導外骨格を装着してみた。
この戦闘用魔導外骨格の特徴は、機体の性能が装着者のステータスで強化されることだ。特に身体能力のステータスは乗算なので、遠隔操作や自立操作のロボットにするより、人間が装着した方が何倍も強くなるそうだ。今私の身体能力は68なのでパワーが6.8倍になるということらしい。ジェリーのような高度なAIが作れるなら人間が乗る必要は無いのではないかと思っていたが、それほど強くなるなら確かに人間に装着させた方が兵器として優れているだろう。
装着した見た目は、全身覆われていて完全にロボットで、表面は銀色の金属に所々青白い金属のラインが入っていて、背中の中心にジェリーが装着されている。ロボットアニメに出てきそうな雰囲気だ。本来さらに魔法防御とステルス性能を向上させる塗料を塗るらしいが、この拠点には朽ち果てた塗料の残骸があるだけで塗料を生産する装置は無かった。まあレーダーを使ってくる敵はいないだろうから塗料は無しで良いだろう。
武器は基本武器しか作る時間がなかったので以下の4つだ。
魔導ライフル
魔導薙刀
魔導バルカン
魔導短剣
魔導ライフルは、強力な無属性のビームを放つ中長距離用の銃で、基本威力5000に私の魔法攻撃が加算される。ジェリーのサポートで命中率も高く狙撃も可能だ。ただ、消費が激しく1発撃つのに充填MP1000と私のMPを1消費する。私のMPも消費するのは、私のステータス分を加算するためと経験値を得るだめだ。自分のMPを消費しないタイプの銃ではステータス加算もできないし魔物を倒しても経験値を得られないらしい。このあたりも火薬武器があまり発展していない理由なのだろう。
魔導薙刀は、元々は魔導剣だったものを使いやすいように形状を変えたものだ。特別機はオーダーメイドが基本なので武器の形状も好みにあわせて変える前提で設計されていたため形状変更は難しくなかった。魔導薙刀での攻撃は凄まじい威力だった。人間を遥かに超える機械のパワーが私の身体能力ステータスで何倍にも強化され、さらにMPを消費して刃の部分に沿って魔法剣が発動し、圧倒的パワーの斬撃に、魔法剣の威力1000と私の物理攻撃と魔法攻撃のステータスが加算される。魔法剣のMP消費は充填MP100と私のMP1で数秒間発動するので、斬りつける時だけ発動すれば燃費も良い。魔導ライフルよりも強そうなので、これがこの機体のメインウエポンになるだろう。
魔導バルカンは、肩の横についている小型銃でザコ掃討用だ。ジェリーが自動で照準をあわせてビームをバラまいてくれる。今までジェリーが使っていたビームの連射力を上げたもののようだ。
魔導短剣は、予備の武器で、魔導薙刀の短剣型だ。
その他に飛行ユニットが搭載されている。戦闘機動や長距離飛行が可能で、移動速度アップや空中戦が可能になった。
これまで最大威力の攻撃手段だった槍投げも試してみることにした。
「ジェリー。槍投げを試すわ。サポートできる?」 まだ機体のパワーに慣れていないのでジェリーにサポートしてもらう。
「照準サポートシステムニ投槍器トスマッシュジャベリンノデータヲインストール。準備完了。」
キュイーン
機械音が鳴り、準備ができたようなので、少し離れた位置にある大岩の方を見る。
身体強化と物理攻撃強化を発動し、空中に飛び上がりバリアで足場を作成、魔法槍に火をまとわせ、風の投槍器で槍に加速と空気抵抗減少を付与し、投槍スキルを発動、魔導外骨格のパワーを使って全力で火の魔法槍を放つ!
チュイィン! ドゴオォォォォン!
空中に炎線を引きながら槍が見えない速度で飛び、大岩が砕け散って小さいクレーターができた。明らかに大幅に威力が上がっている。これなら今後も最大威力の攻撃手段として使えるだろう。
クレーターに降りると火の魔法槍がひしゃげて壊れていた。威力が強すぎて1発でダメになってしまったようだ。まだ何本かあるが、それなりに貴重な素材を使っているので、1撃で壊れてしまうのでは使いづらい。今回は時間がないのでこのままで行くが、もっと頑丈な槍を用意した方が良いかもしれない。
性能確認を終えた私は、すぐに出発準備を行った。
念のため修理等に使える素材を色々バックパック型魔導コンテナに積み込みむ。この拠点にはまた来る可能性が高いので入口は修理して鍵もかけて見つからない様に隠しておこう。
魔導外骨格は充填MPの消費が激しい。100万ほどMPを充填しておけるので継戦能力はそれなりに高いが、強い敵と戦えば1回で数万くらいは消費するだろう。一応自分でMPを補充することもできるが、自分で補充していたら1回の戦闘分を補充するのに何日もかかってしまうだろう。定期的に魔導炉がある拠点に補充しにくる必要がある。ユージやギルバーンを殺した後も魔王対策で使う可能性もあるので、この拠点は確保しておきたい。
準備を終えた私は、魔導外骨格を装着し可変ウイングを広げて長距離飛行モードで飛び立った。時期的にルディオラの部隊はすでにレイライン王国に向かっている最中だろう。予定通りレイライン王国で合流しよう。移動速度がさらに上がった今なら、こちらが先に到着するだろう。
ユージとギルバーンを殺せるかは討伐軍次第のところがあるが、今度こそ戦いに勝利してみせる。
輝く太陽の下を飛びながら、私は胸の復讐の炎が燃え上がるのを感じた。




