満月の夜の記憶
松田の診察スケジュール
松田真人は、大学病院で水曜日と土曜日の午前中のみ外来診察を担当している。
それ以外の時間は閉鎖病棟での回診や、研究活動に集中する日々を送っていた。
土曜日の午前、彼は患者の記録を整理していると、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ。」
ドアが開き、音楽の天才と称される18歳の青年、諸星煌が現れた。
夢の新たな記憶
「先生、おはようございます。前回の夢のことなんですが……また何かを思い出しました。」
諸星は緊張した様子で椅子に腰を下ろした。
松田はメモを手に取りながら、穏やかに促した。
「聞かせてくれるかな?」
「夢の中で、誰かに言われたんです。『満月の日に神社に来い』って。何だかすごく重要なことみたいで……その神社が現実にもある気がするんです。」
松田は少し考え込み、視線を上げた。
「現実の場所と夢が繋がっているように感じる?」
「はい。でも、まだはっきりとした場所は分からないんです。ただ、不思議と行けば分かるような気がするんです。」
松田は深く頷いた。
「満月を待たずに行ってみる価値はありそうだね。君と僕、それに小泉も誘おう。」
神社での不思議な体験
数日後、諸星、松田、小泉悟志は、諸星の記憶を頼りに町外れの小高い丘にある神社を訪れた。
「ここです……間違いありません。」
諸星が鳥居を指差す。
鳥居をくぐり抜けた先は、異様な静けさに包まれ、不思議な雰囲気が漂っていた。境内の奥には苔むした石碑が立っている。
3人が石碑に近づくと、突然空が曇り、強い風が吹き抜けた。
「何だ、これ……?」
悟志が声を上げた瞬間、石碑が月光を反射するように一瞬強く輝き、辺りを白く染めた。
まるで嵐の中にいるような感覚が3人を包む。
その光景が消えたとき、静寂が戻ってきた。
松田は息を整えながら呟いた。
「ただの偶然じゃない……これは科学で説明できるのか?」
各キャラクターへの報告
その夜、悟志は自宅で妻の朋美に神社での出来事を話した。
「朋美、今日は信じられない体験をしたんだ……科学者としての常識が揺らいだよ。」
朋美は驚きながらも真剣に話を聞いていた。
一方、松田は帰宅後、天野宙の妻であり、生物学者の天野美沙に連絡を取った。
「美沙さん、少し奇妙な話を聞いてくれるかな?」
彼女は電話越しに冷静な声で応じた。
「どんな話ですか?」
松田は神社での出来事を話し終えると、美沙が即座に考察を始めた。
「それは興味深いですね。もし環境や光の条件が揃った結果だと仮定しても、その現象がなぜ石碑と関係するのか、解明の余地があります。」
さらに、美沙は自身の研究テーマである「進化がプログラムされたものではないか」という視点からも、この神社の謎に興味を示した。
「もしかすると、これも自然界に組み込まれた一種のメカニズムかもしれません。ぜひ同行させてください。」
リー・ウェンチャン博士との連絡
松田と悟志は、リー・ウェンチャン博士にもメールで詳細を報告した。
その返信にはこう書かれていた。
「非常に興味深い。私もぜひ次回の調査に同行したい。満月の日が待ち遠しい。」
満月の日への準備
松田、諸星、悟志、美沙、朋美、リー博士の6人が満月の日に神社を再訪する計画を立て始めた。
それぞれが現象の解明を目指して準備を進める中、神社でのさらなる謎と出会う日が近づいていく――。