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吾輩は男の娘である。
名前は愛可良と言う。
何故こんな容姿で生れてきたのか、とんと見当がつかぬ。
……ほんと、何でこんな容姿で生まれてきてしまったのでしょうか……。
物心ついた頃から僕は、自分が所謂アニメや漫画、ライトノベルやゲームによく登場する男の娘と呼ばれる存在であることは自覚していた。
明からに他の男の子とは顔立ちが違って女の子っぽかったし、中学生くらいにもなれば体格が少なからず男の形に近づいて行くはずだと思っていたのに華奢なままで、大変不本意なことに身長も高校二年生になった現在でさえ160センチまでしか伸びなかった。
不本意と言えば、更に不本意な点がもう一つ。僕はお前等読者萌えブタが想像するような性格の男の娘ではない、ということだ。
お前等萌えブタはどうせ男の娘と聞けばこんな風に妄想するんだろう?
木下●吉みたいな娘かなとか。
それとも漆原●かみたいな娘かなとか。
はたまた戸塚●加みたいな娘かなとか。
そんな風に思うんだろう?
だが、残念。
僕はそんな女の子じゃない。
木下秀●みたいな、見た目は可愛らしい容姿だけど中身は誠実でノリのいい娘でもなければ、
漆原る●みたいな、主人公にべた惚れかつ控えめで恥ずかしがり屋な男の娘でもないし、
ましてや戸塚彩●みたいな、常に主人公を気にかけてくれる優しい娘でもない。
むしろ性格は若干ひねくれていて、めんどくさがり屋で、可愛い女の子が好きな、若干うざったい普通の男子高校生だ。
……ほら、失望しただろう?
その幻想をぶち殺されただろう?
だが、この事実を知らない呑気なお前らみたいな童貞野郎どもはまんまと僕の容姿に騙されほいほい食いついてくる。
僕自身、全く以て男など恋愛対象などではないのにも関わらず、だ。
そして、以上の事から僕は一つのことを諸君に伝えておきたい。
しかと心に刻んでおけ!
男の娘はつらいよ!
御一読ありがとうございました。