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亡き絵師

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

才能のある人程、強い人程、居なくなるんです。


前に好きだった絵師の訃報を知った。もう数ヶ月も前の事だった。もうあの方の絵が見れないと思うと、私の人生にすっと翳りが差すように思えた。どうして才能のある人程、この世界から去っていくのだろう。


「何を見ているの?」

木の葉が舞い落ちる中庭で、端末を弄る私に声を掛ける。顔を上げると、ローブを目深に被った生き物がじっと此方を見据えていた。持っていた端末の画面を晒して、眺めていた絵を見せる。

こってりとした塗りが特徴の超現実的な絵。どれもこれも一口で表すには難しい巨大な異型達。けれどもその画力の高さに圧倒される。

「綺麗でしょう? 私、漫画風の絵も好きだけれど、こういった絵画風の絵も好きなの。苦しい現実を直視する前に、こうして心を空想に飛ばすのよ」

上下に緩やかに動く指が止まっては動きを繰り返し、ある一つの絵で止まった。白いローブ姿で俯く巨人達。勿論顔は見えない。その画面の中の光景が、今の目の前に対峙している生き物とそっくりだった。生き物は黙って画面の中を眺めていた。何も話す事はなかった。

「貴方のよう。超現実的でとても素敵だと思う」

「そう。□□のよう」

生き物は『僕』と『私』が混ざった声でそう返した。何とも聞にくい、ぐにゃりとした一人称。もしかしたらそれがこの生き物の名前なのかも知れない。

「でもね、この方は新しく世界を創造する事はないの。もうこの世界にいないから。私の命を三十年くらい渡すから、長生きして欲しいと思っても、出来ないの。現実は非情だわ」

最後に残された言葉から鑑みるに、今の私の言葉は残酷極まりないものだろう。幸せな人の中に自分を含めて欲しい。『自分以外』と限定し、自分を排さないで欲しい。

「有難う」

生き物はただ一言だけ残して、その場を去っていった。


その後、書店で亡き絵師の画集を発見した。表紙は先日相見えた生き物と酷似した、ローブ姿の巨人達だった。

何度見返しても、訃報は変わる事無く。

街中散歩していた時に、ふと画集が目に入って興味を持ったんですよ。

そうして数ヶ月の時を経て、この世界にいない事を知りました。


絵画のように幻想的な絵を描く方でした。

幸せという枠の中に、自らを入れない方でした。

その現実だけが、今も私の道に影を落としてます。

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