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グッバイ ハイドアウェイ  作者: 宗あると
16/22

16

 オフ会の場所は、マンションの地下のCAFEBARだった。

 階段を降りている時シズクが、入ったら男ばっかで回されんじゃないの?、と悪戯に言い、ショーコは、そんなことないから!と突っぱねた。

 2人とも内心ドキドキしながら店の扉を開けると、店内の真ん中にテーブルが寄せられていて、女性2人と男性2人が向かい合って座っていた。

 「こんばんは、しょーこです」

 「あーこんばんは、しょーこちゃん。はじめまして」

 顎髭を生やした男性が立ちあがり、言った。

 「あ、私そっちに行きますね」

 金髪ショートの女性がそう言って、男性2人が座っている方へと移動した。

 あー悪いね、と顎髭の男が言う。

 「2人共、こっちに座ってー」

 顎髭に促されて、ショーコとシズクはテーブルへと歩いた。

 「食べるもの買ってきた?」

 はい、とショーコは持っていたコンビニの袋を持ち上げた。

 「悪いね、今日店は休みだから」

 申し訳なさそうに、顎髭は言った。

 「大丈夫です。この人、ここのお店のオーナーなの」

 ショーコがシズクに言うと、シズクは、へぇ、と頷いた。

 「はじめまして。佐野玄也です」

 顎髭の男が会釈し、シズクも宮崎雫です、と返した。

 「まぁ、気楽に楽しんで。みんな良い人だと思うから」

 玄也はそう言うと、座って座って、と言い、自分も席についた。

 シズクとショーコも席につく。

 シズクの正面には玄也。真ん中はショーコともう一人の男性。右には黒髪ロングの眼鏡女性と、金髪ショートの女性が、それぞれ向かい合う。

 テーブルには、MAYラベルの缶ビールが人数分と、それぞれが持ち込んだ食べ物が並んでいる。

 シズクとショーコは椅子に座ると、コンビニの袋から食べ物を出した。

 「ビールは俺から。遠慮せず飲んで」

 「ありがとうございます。あ、シズクさんは飲めないから」

 「そうなの?」

 「水買ってきてるんで、大丈夫です」

 シズクはコンビニ袋から、2本、ペットボトルの水を出した。

 「そう。じゃあ、とりあえず自己紹介する?俺はオフ会はじめてだから、よくわかんないけど」

 「え?私もです」

 ショーコが言うと、金髪も黒髪ロングも私も私も、と頷いた。俺もはじめてです、とソフトモヒカンの男も言った。

 シズクは何も言わず、頷いた。

 「何、全員未経験?奇跡だな」

 「玄也さん、経験あるんだと思ってた。自分から集めてたから」

 金髪ショートが言うと、玄也は苦笑した。

 「悪い。まぁこういうことになったしさ、MAYが。ちょっと話したくて皐月の人と」

 「あ、気にしないでください。初心者同士、気楽にやっていきましょう。じゃあ、私から自己紹介しますね」

 「お、じゃあ、よろしく」

 「安藤紗希です。学生です。死ぬ時はMAYに殺されたいです。ピアノやってて、ストリートピアノとかやってます」

 にこやかに紗希は言ったが、全員苦笑した。

 「動画見たよ。凄い人集まってたね」

 玄也が言うと、へぇと感嘆の声をみんながあげた。シズク以外は。

 「あんなの、ちょっと上手くて顔の良い女がやったら集まるだろ。人なんかバカだから」

 シズクが皮肉っぽく言うと、シーンとその場が凍りついた。

 玄也はショーコの方を見たが、ショーコはにこにこして、何も言わなかった。

 「て、手厳しいな、宮崎さんは」

 苦笑を浮かべながら、玄也は言った。

 「顔の良いってとこだけ、受け取っときます」

 にこやかに紗希が言ったので、すぐに場の空気は和んだ。

 しかし、次に自己紹介したソフトモヒカンが、佐藤光です。市役所に勤めてます。と言うと、再びシズクが、一生奴隷だなお前。お疲れさん、と皮肉ったので、場はまた凍りついた。

 玄也も、みんなもショーコを見たが、ショーコはにこにこして、何も言わなかった。

 「じゃ、じゃあ次は俺。佐野玄也です。この店のオーナーやってます」

 玄也は恐る恐るシズクを見たが、シズクが何も言わなかったので、胸を撫で下ろした。

 「それじゃあ、次、宮崎さん」

 余計なことを言って皮肉られぬよう、玄也はさっさっとシズクを促した。

 「宮崎シズク。人生の創造主でぅえす。最近生き別れた母親と再会しました。普段は転売してまーす」

 シズクが真面目とも冗談とも言えぬ口調で言うと、場はシーンと静まり返った。転売というワードに、紗希がピクリと眉を寄せた。

 「ちょっと、ごめん。しょーこちゃん、こっち来て。あ、みんなも。宮崎さん以外」

 紗希が言って立ち上がり、ドアの方を手で指して、みんなを集めた。シズク以外の全員が、その意図を察した。ショーコはそれでも、にこにこしている。

 「なに、あの子」

 集まるなり、紗希はショーコに言った。

 「私の友達です」

 にこにこと、ショーコは答えた。

 「そうじゃなくて、DMでMAYのライブに行く途中にお姉さん亡くして傷ついてるから優しくして、って言ってたから、可憐な子想像してたんだけど」

 「ああ見えて傷つきやすいんです」

 「いや、あれは人を傷つけることに喜びを見いだすタイプだろ」

 玄也が言うと、ショーコ以外全員が頷いた。

 「転売って、私らに喧嘩売ってるよね」

 紗希は言って、座ったままのシズクを見た。シズクは退屈そうに、欠伸をしていた。

 MAYが転売を醜悪の極みと言っているので、皐月は皆、転売には嫌悪を抱いている。

 「本当にあの人、MAYのこと好きだったんですか?」

 光が訝しそうに、ショーコに訊いた。

 「好きだったみたいですよ。皐月の存在はしらなかったから、多分転売のことMAYが言ったことも知らないんじゃないかなぁ」

 レイジが言ったので、シズクは知っているのだが、ショーコは嘘をついた。

 「好きってどの程度?ライブに行ったくらいのミーハーじゃないの?」

 紗希が、きつくショーコに言った。

 「MAYが世界を変えてくれるって信じてたくらい、好きだったらしいです」

 ショーコの言葉に紗希は、ああ、と頷き、何か思い出すように、視線をあげた。

 「皐月が出来る前くらいだっけ、中東の戦争にMAYがラジオでdisappearing life歌ったの」

 「確かドームツアー中だったよね。ラジオで歌った翌日にライブでもやって、色々言われてましたよね」

 感慨深そうに、黒髪ロングの眼鏡女性が言った。

 「あ、私、黒河美影っていいます。自己紹介まだだったので」

 よろしくお願いします、と他の3人は頭を下げた。

 「ツアー中なのに、生放送にしましたよね」

 光も感慨深げに言った。

 「私はライブにそういうことは持ち込んで欲しくなかったけどね。だから皐月には入ったけど、半年くらいは離れてた」

 紗希が言うと、光が頷いた。

 「いました。僕にも周りにもそういう人」

 「人しては正しいのかもしれないけど、エンターティナーとしてはどうなの?って思った。自分の立場履き違えてないって?そういうことは、本気で平和に情熱をかけて行動を起こしきた人が言うことであって、それまで何もしてこなかった人間が戦争が起きた時だけ正義ぶって言うのって、私にはちょっと受け入れられなかったなぁ。私が求めてるのはロックスターのMAYで、活動家のMAYじゃないって。MAYはあくまでロックスターとして世の中に認められたわけだし」

 「ああ、まぁ思うことは色々あったよなぁ」

 玄也が頷きながら、言った。

 「俺のツレも、結局こういうヤツらっ言うだけで何もしないし、いざ自分達の身に起きた時は何もできないよな、って毒づいてたよ。儲けた金で作ったシェルターにでも隠れんだろって」

 「MAYがジャンヌダルクにでもならない限り、それはまぁそうですね」

 光が納得顔で言った。

 「そういうことじゃないんだよなぁ。売名行為とか批判覚悟で、それでも平和を訴えるってのは。世の中が変な方向に向かわないように、影響力のある人間が人の進むべき道を示すっていうのは、使命みたいなものだろ。影響力を得た人間の」

 「それでもライブや歌にはしてほしくなかった。するなら、ロックスターのMAYじゃなくて、1人の人間として、言っていけばいいと思う。なんでも歌にする必要なんてない」

 「そこはまぁ俺はMAYの意志を尊重するけど、人それぞれだよな。意見は」

 玄也は言って、肩越しにシズクを見た。

 「あの子は、MAYのこと嫌いなの?しょーこちゃん」

 「嫌いっていうより、折り合いがつかない感じかなぁ。MAYのライブがなければ、お姉さんは死ななかったって」

 ショーコは答えた。シズクがチケットを忘れたことが原因なのは、言わなかった。

 「なんだそれ、軽い逆恨みだな。まぁ捻くれた性格してるみたいだし、そう考えるのもわかるよ」

 「それで、なんでしょーこちゃん、あの子連れてきたの?友達なら、あの子の性格わかってるだろうし、KYなの知ってるよね」

 紗希に言われて、ショーコは一瞬黙った。ショーコはただ、シズクにMAYを恨むことをやめてほしいだけだった。

 「みんなと喋ったら、シズクさんがまたMAYのこと好きにならないかなぁって思って。MAYももういなくなっちゃうし、嫌いなままお別れって、悲しくないですか?」

 「気持ちはわからんでもないけど」

 玄也は渋い顔をした。

 「でもこのままじゃ、私達楽しめないよ。そこのところ、言ってくれない?しょーこちゃんから」

 「ええー私が言って聞くかなぁ」

 「駄目だったら、私が追い出す。ね?それでいいよね?」

 紗希が言って、ショーコ以外の3人も見ると、3人は同時に頷いた。

 「じゃあ、戻ろっか。よろしくね、しょーこちゃん」

 しょーこは首を傾げ、うーん、と唸って、腕を組んだ。

 どう言ったら、シズクさんを説得できるか。考えても考えても、良い案は浮かばなかった。



 「シズクさんって、お姉さんが事故に遭うまでは、MAYのこと好きだったんですよねぇー?」

 戻るなり唐突に、ショーコはシズクに言った。

 シズクは眉を寄せてショーコを見てから、他の4人に視線をやった。

 「何?疑われてんの?まぁあんたらほどの信者じゃなかったけど、好きだったよ、普通に」

 「お姉さんの事故だけが原因なんですか?MAYのこと嫌いになったの」

 ああー、とシズクは声を出し、面倒くさそうな顔をした。

 「嫌いになったって言うかさぁ。なんか一気に冷めた感じなんだよ。私は詩とかインタビューに共感してて、勝手に身近に感じてたけど、いざ私が辛くなった時に何をしてくれるわけでもないだろ?アカネが死んだ後にラジオの生放送があって、すがるように聞いてたんだけど、話してたのは戦争のことでさ。今思えば当たり前なんだけど、この人は私のことなんて何もわかってない。救ってもくれない。って、現実見えちゃったんだよね」

 「えー、MEMORIESは?愛する人の死を歌ってるけど、聴こうってならなかった?」

 ショーコの言葉に、シズクは微笑した。

 「なるかよ。辛くなるだけだろ。それにシュチエーションが違うだろ。あれは海外に行った男がそのまま帰ってこなかったんだろ」

 「え?違う違う。一緒に海外に言って、ここでずっと暮らそうって言ってたのに、事故で恋人が死んで帰ってこなかったんだよ」

 「あーそうだっけ。重たい感じだったから、歌詞も英語チラッと見ただけだったな、あの曲。まぁでも作り話だろ」

 「体験談って噂もあるよ。実際にMAY、恋人と海外に逃げたし、帰ってきた時はすごくやつれてたらしいし」

 「単なる失恋を妄想で死に別れにしたんじゃないの?」

 皮肉っぽくシズクは言った。

 「MAYはそんな軽い詩の書き方しない」

 紗希が強い口調で、割って入った。

 「体験談って証拠もないんだろ?」

 「あれは実体験を歌ってる。ライブで歌ってるの見たことないでしょ」

 「あの曲ライブじゃやらないんじゃなかった?」

 「DVDには入ってないけど、歌ってるよ。ライブでやらないのはsureだから」

 「それは知ってるよ。私もアカネも好きだったし。なんでやらないのかわかんなかったけど」

 「それはミーティングで直接訊いても答えてくれなかった。別のミーティングでプライベート過ぎるからって言ったらしいけど、ホントかはわからない。基本的にミーティングの内容は言っちゃいけないから」

 「聞くほど面倒だよな、その皐月っていうの。それで嬉しいわけ?あんたらは」

 「たまにDMくれたりするし、私とMAYだけの秘密って感じで私は好き」

 「えーDMとかもらったことない、いいなぁ」

 ショーコが言うと、シズクは半笑いになった。

 「あんた直接話しただろ」

 「しょーこちゃんもミーティング行ったことあんの?」

 玄也が訊くと、ショーコは首を振った。

 「シズクさんのお母さんがやってるカフェで、皐月に入る前に会ったの」

 「えー何それ」

 紗希が驚いた顔でシズクを見た。

 他の3人も、羨ましそうにシズクを見た。

 「常連だったみたい。会ってからは来なくなったけど」

 ショーコが言うと、玄也がうんうんと頷いた。

 「MAYは極端に嫌がるからなぁ、プライベートで声掛けられるの」

 「あれでしょ、道歩いてる時に頭の中で曲作ってたりして、集中してると無視したりしちゃうし、邪魔されるとその人のこと嫌になるから、皐月には話しかけて欲しくないんだよね。MAYは記憶力異常だから、皐月の顔はほとんど覚えてるらしいし」

 光が言うと、シズク以外のみんなは、そうそう、と頷いた。

 「ライブに来た人全員の顔も覚えてるって噂もありますよね」

 美影が言うと、あっ、とショーコが何かを思い出した顔をした。

 「シズクさんのこと覚えてましたよ、MAY」

 ショーコが言うと、マジか、と玄也が声を漏らした。

 「いや、私が行ったのアリーナとドームで、席だってそんなに近くないよ」

 疑心した様子で、シズクは言った。

 「視力もアフリカの人並に良いらしいですよね」

 光が言うと、玄也が笑った。

 「もう人間じゃねぇな」

 「シズクさんのこと、確か絶望の中で生きている、って言ってたような?」

 ショーコは言いながら、首を傾げた。

 「ああ、まぁ、そんなもんだよ。たまに闇の中に沈んだようになるし」

 シズクが何となしに言うと、紗希が驚いた顔をした。

 「そういう心で、よく人を傷つけたりできるね。人の痛みわからないの?自分だって、傷ついてそういう風になってるんでしょ?」

 「傷つくのはあんたらの問題だろ。私に何言われたって、自分がそう思ってなきゃ傷つくことなんてないんだから。プライドが高いか、図星なだけじゃん」

 「人に言われたくないことってあるの。自分でわかってるんだから、わざわざ言われたくないの」

 「わかってないって、それは。目背けてるだけじゃん。本当に自分がわかってたら、何言われたって平気だし」

 シズクの言葉に、紗希は、ぷつんと感情の糸が切れた。

 「へーじゃあ、宮崎さん、何言われても平気なの?」

 「なんか言いたいことあんの?あんた人良さそうだから、言った後で自分が傷つくんじゃないの?」

 「あなたみたいな人には何言ったって、心は咎めない。宮崎さんさ、病気だよね、精神の。お酒飲めないのって、薬のせいでしょ?」

 「それがどうしたんだよ。それで私が傷つくと思ってんの?病気って言われて傷つくのは私じゃなくて、あんただろ。はっきり物言う性格がさ、自分でもちょっとおかしいと思ってんじゃないの?普通の人なら理性的になって言わないようなこと、言っちゃうんだろ?病気なのは、あんたも一緒かもな」

 シズクが皮肉な笑みを浮かべて言うと、紗希は唇を噛み締めて黙った。怒りと苦しみが混ざったような表情をしている。

 「あー宮崎さん、それは駄目だよ。言っちゃ駄目だ」

 玄也が止めに入ると、シズクは睨んで苛ついた顔をした。

 「私も同じこと、この女に言われたんですけど。病人の方が責められるって、おかしくない?いいじゃん、この女は何言われたって、病気じゃないです、って言えば逃げれんだから。私は人に言われたって受け止めるしかないんだよ」

 「いや、あーなんつぅかさ、誰だって病気なんて言われたくないだろ?」

 「それは私も同じだって言ってんだよ!私が傷つかなきゃ何言ってもいいと思ってんの?」

 「言葉返すけど、だったら何だよ、さっきの俺達への態度は。俺達だって、わざわざ初対面の他人に、言われたくないこと言われてんだよ」

 「あんたには何も言ってねーだろ」

 「んん、まぁそうだけど、見てて気持ちいいもんじゃないんだよ」

 「あんたらに気を使う理由が私にあんの?他人だし、この先一生会うこともない相手の為に、自分殺して接しろって?」

 「自分を殺すって大袈裟な」

 「これが私なんだよ。私は1秒だって私でいられなくなるのが嫌だから。私のままでいれるなら、人に嫌われる方がマシ」

 「ああ、そこまで意志固まってんなら、もう何も言わないけど、帰ってくれ。みんなが楽しめないから。しょーこちゃんも」

 「ショーコは関係ないだろ」

 「こんな化け物連れてきた責任だ」

 ショーコは黙って、目の前を見つめて、目を潤ませていた。

 「おいおいマジ勘弁。泣くとかなし。しょーこちゃんもこうなるって、半分わかってたでしょ?」

 「それでも好きな人が好きな人を嫌ったままなんて嫌だし。皐月の人ならわかってくれると思ってた」

 鼻を啜りながら、ショーコは言った。

 「いや俺達は宮崎さんのこと好きじゃないし、まだ可憐な女の子なら好きになったかもしれんけど」

 「悪かったな。いたいけな女なんて、虫唾が走るから死んでもならねーよ」

 シズクは言うと、立ち上がって、ショーコの肩を叩いた。

 「帰ろう。悪かったな、私がこんなんで。レイジと来た方がよかったな」

 「別にいいし。MAYがやめたら、この人達だって他人だし。私はシズクさんの方が大事」

 「あっそ」

 シズクは素っ気なく言って、ドアの方へ歩き出した。ショーコも立ち上がり、荷物を持って、シズクの後を追う。

 2人は振り向きもせず、何も言わず、店から出ていった。

 「なんか似てんな、あの2人」

 玄也が呟くと、光と美影が頷いた。紗希は顔を強張らせたまま、宙を見つめ続けていた。


 店を出て、2人は地上に向かう階段を上がった。

 階段の中ほどで、シズクが不意にショーコに話しかけた。

 「ショーコさ、私が病気ってこと、あの女に言った?」

 「え?ああ、うん。DMで、ぽいってことは話した」

 「だろうな。酒飲まないだけで、わかる筈ねーもんな。ショーコに気つかって、自分で気づいたみたいに言ったんだよな」

 「ああ、そうかも」

 「ショーコさ、私のこと大事なわけ?」

 「大事だよ?」

 「だったら、他人に軽々しく言うなよ、私が病気ってこと」

 シズクは言うと、足早に階段をあがった。

 ごめん、とショーコがシズクの背中に言ったが、シズクは黙ったまま、階段を上り続けた。

 

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