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これから3

寝支度が済み、リズが部屋から出ていった。


ベッドに横になると疲労感を感じる。


劇を観に行ったりレストランで食事をしたり、今までしたいと思っていたけどウィルネスに止められていたことが簡単に叶うようになった。


それだけウィルネスがセイウスを信用しているということだろう。


今日は楽しかったなぁ。


身体は疲れているのに高揚感からかなかなか眠ることが出来ずにいた。


セイウスに会いたい………。


繋がった扉の向こうにいるのに会えないもどかしさがある。


また部屋に遊びに行ったら怒るかしら。


アイリスはそっと鍵を持って扉の前に行った。


朝みたいに部屋に入らなかったら許してくれるかもしれない。


アイリスは躊躇いがちに扉をノックした。


コンコンコン


しばらくすると


コンコンコン


と返事がある。


「あの……セイウスさん」


「はい」


「この扉を開けていいですか?」


沈黙。


「………緊急時以外は駄目だと何度も伝えていますが」


「今日はとても楽しくて………劇やレストランのことを思い出していたらどうしてもセイウスさんの顔が見たくなったのです。部屋に入りませんから」


また沈黙。


「はぁ………私だってアイリスさんに会いたいと思っています。でも我慢しているのです」


「部屋には入りません。約束します」


「………部屋に入らないなら」


セイウスのため息が聞こえたがアイリスは扉を開けた。


セイウスは少し離れた場所で相変わらず腕組みをしている。


「ワガママを言ってごめんなさい」


「アイリスさんにワガママを言われて嫌がることなんてありませんよ。しかもこんな可愛いワガママなら歓迎です」


少し困ったように、それでも笑顔でそう言った。


「セイウスさん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」


「お礼なら何度も聞いていますし、相手を間違えています。お礼をするならウィルネス様ですよ」


「お父様はセイウスさんと一緒じゃなければ絶対に観劇のチケットなんてくれませんでした。レストランだってそうです。だからお礼を言う相手はセイウスさんです」


「それなら、私からもアイリスさんにお礼を言わないといけませんね。婚約者になってくれてありがとうございます、と」


柔和な笑顔を崩さずにそんな事を言われると顔が赤くなる。


「この状態であまり可愛い顔をしないで下さい。抱き締めたくなります」


「だ、だきしめ!?」


「アイリスさんが思っている以上に私は貴女に触れたいと思っています」


それなら………。


「私だってセイウスさんに触れたいです。どうぞ抱きしめてください!」


アイリスは扉ギリギリに立って両手を広げた。


セイウスの目が大きく見開き驚いている。


「私を抱き締めて良いのはセイウスさんだけです。だから、どうぞ!」


恥ずかしさに顔が真っ赤になっている自覚はあったが、後戻りはできない。


セイウスは少し悩んでいるような仕草をしたが、腕組みをやめるとゆっくりとアイリスの元にやってきた。


そして優しく包むように抱き締めた。


鼻腔に広がるセイウスの香りにくらくらする。


「アイリスさん、あまり私を信用しないでください」


セイウスはそう言うと一度強く抱き締めてから、身体を離した。


そしておでこに何やら温かく柔らかいものが触れた気がした。


チュッ


そんな音が聞こえる。


驚いておでこを抑えるとセイウスは優しい笑みを浮かべていた。


しかし、どこか怖い。


「次はここにしますよ」


そう言ってアイリスの唇をセイウスの指がなぞった。


その感触にゾクリと今までに感じたことのない感覚が身体中を駆け抜ける。


「えっ……」


セイウスは愛おしそうにもう一度唇をなぞるとその指で自分の唇をなぞった。


その仕草が妙に色っぽくてアイリスは言葉を失う。  


さっきまで自分の唇をなぞっていたゴツゴツとした大きな指から目が離せない。


「アイリスさん」


「は、はい!」


「貴女はもう少し自分の魅力を知ったほうがいい。あまり私を煽らないで下さいね」


「あ……えっと……」


「私は貴女が思っているよりずっと……男ですよ」


何も言えない。


呆然としていると、セイウスは小さく息を吐いた。


「おやすみなさい。鍵はしっかり閉めてくださいね」


「おやすみ……なさい」


「いい夢を」


セイウスはそう言うと扉を閉めた。


アイリスは言われたように鍵をかけるとフラフラとベッドまで歩き、倒れるように横になった。


今……セイウスさん……私のおでこにキスをした? 


それだけじゃない。


指で唇に触られた。


優しいけど、なんだか妖艶な触り方だった。


そっと唇に触れてみる。


セイウスとは全く違う感触。


セイウスの指はもっとゴツゴツしていて………。


思い出すと、全身の血液が顔に集中するように一気に体温が上がるのがわかった。


鏡を見なくてもわかる。


きっとゆでダコみたいに真っ赤だ。


ますます眠れなくなってしまった。


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