これから2
邸に戻り、両親に挨拶に行こうとしたのだが、リズに止められた。
「ウルフレッド伯爵とお酒を飲んで盛り上がっております」
確かに食堂から豪快な笑い声が聞こえている。
ウィルネスはお酒が入るとかなり陽気になり、さらにお酒が進むと絡んでくる。
そのため、普段は酒量を控えているのだが今日はかなり飲んでいるらしい。
「今、お二人が食堂に行かれると酒の肴にされますよ」
「どうしましょうか?」
セイウスに聞かれたので
「明日の朝、挨拶してユリウス殿下の事を報告します。今の状態になったお父様にユリウス殿下の事を話したら勢いのまま陛下の元へ行きかねません」
「ウィルネス様はその……酒癖が悪いのですか?」
「悪いわけではないのですが、いつもの冷静さを欠くことが多いです。いつもより短絡的になります。あと、必要以上にスキンシップを取りたがるのです。男女問わず」
「今、お嬢様とセイウス様が行かれるとセイウス様は肩を抱かれてお酒を飲まされますよ。お嬢様は抱きしめられるでしょうね」
「あのウィルネス様がですか?」
想像できないのも無理はない。
招待された席では絶対に醜態を晒さないタイプなのだ。
しかし家でたまにああなる。
ああなると色々と面倒なことを知っているので、アイリスは食堂から離れた。
「とりあえず見つかる前に行きましょう」
アイリスに言われてセイウスも従った。
部屋の前で別れて、アイリスは入浴をすませた。
リズが髪をといてくれる。
「劇はいかがでしたか?」
「とても面白かったわ!感動して泣いてしまったの」
「それはよかったです」
「レストランの料理もとても美味しくてあっという間に時間が過ぎてしまったわ。本当に楽しかった」
「セイウス様と婚約者になられたので、これからは色々な場所に行くことができますよ」
リズに言われてアイリスの目が輝く。
「私、セイウスさんと色々な場所に行きたいわ」
「誕生日会が終わったあとのセイウス様の仕事量によるとは思いますが、お嬢様の行きたい場所ならセイウス様は連れて行ってくださいますよ」
「セイウスさんの仕事……」
今は護衛として一緒にいる時間が多いが、誕生会が終わるとセイウスは陛下の護衛に戻ってしまう。
そうなると、今みたいにすぐに会うことはできなくなる。
「さみしくなりますね」
「側にいるのが当たり前になってしまっているわ」
アイリスはセイウスの部屋と繋がる扉を見つめた。
「婚約者になったら会える時間が減るなんて、わかっているけど淋しいわ」
セイウスがあの部屋からいなくなるなら、誕生会なんてしたくないとまで思ってしまう。
「仕方ありませんよ。せっかくですので今を楽しんでくださいね」
「ええ」
「お仕事に戻られたら手紙を書くと良いですよ」
「素敵な便箋を探さないといけないわね」
リズとそんな話をしながらセイウスに会いたいな……と思っていた。




