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婚約者4

セイウスは1時間半ほどで戻ってきた。


その頃には会議も終わりリズとマヤがアイリスの側に仕えていた。


リズの配属は希望通り、アイリスの専属侍女となったそうだ。


「お帰りなさいませ」


リズが慇懃に頭を下げる。セイウスを確認するとマヤは


「私はこれで失礼します。セイウス様がお戻りになられたことを旦那様に伝えてきますね」


と部屋から出ていった。


「早かったですね」


アイリスが言うと


「今すぐ公爵邸に行く!と大騒ぎしている父をなだめて逃げるように戻りました」


とセイウスは困ったように笑った。


「では婚約は快諾していただけたのですね」


「ええ。こちらの準備があるから14時に来るように執事に伝えておきました。あの様子じゃ馬に跨って私の後をついてきかねませんからね」


会ったことはないが、その様子が目に浮かんで思わず笑ってしまった。


「まさか手土産もなしに行くつもりですか?と執事に言われて冷静になったようです。疲れました」


「お疲れ様です」


あとは14時に婚約の色々な書類を書いて陛下に提出すれば、2人は婚約者となる。


「婚約を決める席には私達も同席するのでしょうか?」


「最初は同席の必要があると思います。私は成人を迎えていますので、自身で記入する書類もあると思います。アイリスさんはまだ成人ではありませんので書類はウィルネス様が記入するかと」


「なんだかドキドキしますね」


そんな話をしていると、部屋がノックされた。


入室してきたのはマヤだ。


「どうかしたの?」


「ウィルネス様にセイウス様が戻られたことをお伝えすると、こちらを渡すようにと言われました」


手に持っていたのは、先程セイウスが見せてくれた観劇のチケットだ。


「これは……」


「リーシャ様と観に行く予定で手配していたそうです」


「今日の日付ですね」


「婚約が決まったらウルフレッド伯爵と晩餐を共にしたいそうで、そうなると観劇は諦めるしかないとおっしゃっていました。いい席なのでせっかくなら二人にと」


アイリスとセイウスは顔を見合わせた。


「私達も晩餐に参加すべきじゃないかしら」


婚約するのはアイリスとセイウスだ。


「婚約が決まれば晩餐に参加する必要はないとおっしゃっていました。」


自分で伝えずにマヤに伝言を頼んだのは、照れ隠しなのかもしれない。


「お父様がそう言ってくださっているのなら、観劇に行きましょう」


「しかし……」


「セイウスさんが上司からもらったチケットはどの席ですか?」


「………特別席を手配しています」


「あの席は王族しか手配できないはずですが」


そこまで言って


「もしかして陛下からもらったのですか?」


「はい。アイリスさんに言うと恐縮するから黙っていて欲しいと頼まれまして」


確かに上司には相違ない。


「お父様がくれたチケットも特別席ね………そうだ!このチケットをお父様たちに渡して交換したらいいのではないかしら。セイウスさんのチケットの日付は私の誕生会の後ですし」


「確かにそれなら気兼ねがないですね」


「じゃあ今日、観劇を見に行きましょう」


「婚約といい急に決まりますね」


セイウスさんは苦笑したが


「とりあえずチケットのお礼を直接伝えてきます。その時にこのチケットを渡してきます」


「その間の護衛はお任せ下さい」


マヤに言われてセイウスは足早に部屋を出ていった。


「観劇、楽しみだわ」


「良かったですね」


「BOX席ならリズも一緒に行けるわよ」


「まさか!せっかくですからお二人で楽しんできて下さい。美しくドレスアップさせていただきます」


「ふふ、ありがとう」


アイリスの幸せそうな笑みにリズとマヤも自然と笑顔になった。

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