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婚約者2

今日は珍しく皆で食事をすることが出来た。


配置転換会議があるため、ウィルネスは休みをもらったそうだ。


食事が終わってから、セイウスが話したいことがあるとウィルネスに伝え、食事が片付けられ人払いが済んでから婚約のことを切り出した。


「そうか、やっと決めてくれたか」


ウィルネスは嬉しそうにそう言った。


「婚約を認めて下さるのでしょうか」


セイウスが聞くと


「もちろんだ!こういう話は勢いが大切だ。早速今日の午後からウルフレッド伯爵と面談して婚約の話を詰めたいのだが、時間は取れるだろうか」


「それでしたら直接私が父に伝えてきます。今日は仕事が休みだと思いますので」


「急で悪いが、我が家に招待しよう。そうだな………午後2時くらいに来てもらえるとありがたい。明日からまた仕事が立て込んでいて休みがないのだ」


「わかりました。そのように伝えます」


「こうしちゃおれん。伯爵を招く準備をしなくては。リーシャ、配置転換会議はいつ頃終わる?」


「そうねぇ……遅くても10時半には終わると思うわ」


「よし、終わり次第バンに伝えて軽食の用意をしよう」


想像以上に乗り気のウィルネスにアイリスは驚いてしまった。


それだけセイウスは優良物件なのだろう。


そんなウィルネスを見ながら今まで静観していたリーシャが口を開いた。


「ねぇ……1つだけいいかしら」


ウィルネスではなくリーシャからそう言われてセイウスは少し驚いた表情をしたがすぐに


「なんでしょう、リーシャ様」


と向き合った。


「セイウスさん、貴方、アイリスに結婚まで指一本触れないとおっしゃっているのよね?」


「はい。ウィルネス様にもアイリスさんにもそう伝えています」


「アイリスが結婚するのはこの国の成人である18歳。今から3年もあとの話よ。その間、全く触れ合いのない婚約者なんてどうかと思うのよ」


「リーシャ何を………」


ウィルネスが戸惑いながら口を挟んだが、リーシャに睨まれて口をつぐんだ。


「だって、指一本触れないってことは手も繋がないってことでしょ?もちろん、健全な婚約期間であってほしいわ。間違っても婚約中に妊娠だなんてしたら、醜聞ですもの。でも、多少の触れ合いがないと……心の距離も身体の距離も一向に縮まらないのではないかしら」


リーシャに言われてセイウスはかなり戸惑っている様子だ。


「リーシャ様の言うことは最もだと思いますが………」


「でしょ?だから、指一本触れないではなく、健全な付き合いをするでいいと思うのよ。デートの時に手を繋ぐとかは婚約者なら普通よ」


リーシャはそう言うとウィルネスに視線を移した。


「愛し合うもの同士がスキンシップなしで過ごせないことくらい、貴方だって知っているでしょう?」


「た、確かに」


「だから、婚約者になったのなら婚約者らしい触れ合いまで制限しなくていいのよ。それと、敬語は止めないと心の距離が開いたままよ」


リーシャは妖艶な笑みを浮かべた。


「アイリス、貴女には人を愛する素晴らしさをわかってほしいの。好きになれば触れたい、近づきたいと思うのは自然のことだもの」


「お母様………」


「私から言いたいのはそれだけよ。この場で言っておかないと真面目なセイウスさんは結婚まで本当に指一本触れないで過ごしそうだから」


リーシャの言葉で気持ちが軽くなるのがわかった。


このままだとデートの時でさえ周りの目を気にして距離を取る必要があった。


きっとアイリスから手を繋いでもセイウスが離してしまっただろう。


セイウスは真面目なのだ。


ウィルネスはリーシャを見てから小さくため息をついた。


「確かに3年間、一切の触れ合いを禁止するのは無理があるな………セイウス殿」


「はい!」


ウィルネスはセイウスの肩に手を乗せた。


「私は君を信用している。健全なあくまで健全な婚約者でいてくれたまえ」


「も、もちろんです!」


クスクスと笑うリーシャにつられて、アイリスも笑ってしまった。

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