恋心1
セイウスが護衛となって1週間が過ぎた。
食事は欠かさず一緒に食べ、庭の散策が日課となっている。
ダンスの練習はあれから1度あったが、問題ないとレックから太鼓判をもらった。
自室にいるときはセイウスも隣の自分が充てがわれた部屋にいる。
そのため四六時中一緒というわけではないが、1日に何度も顔を合わせているので、いくら恋愛初級者のアイリスでも自分の気持ちに気が付き始めていた。
「セイウス様と仲良くなれましたか?」
髪を梳きながらリズが聞く。
「ええ。距離は縮まったと思うわ」
「素敵な方ですよね」
リズがセイウスを褒めるとモヤモヤするのが嫉妬だと理解したのは最近だ。
「ええ。本当に素敵だと思うわ。今まで結婚の話が出なかったのが信じられないくらい」
「もちろん、お見合いの申し出はすごい数だったそうですよ」
「そうなの?」
鏡越しにリズを見る。
「はい。様々な貴族から打診があったそうですよ。セイウス様はどうしても断れないお見合いだけお受けしていたそうですが、一度会うとその女性から猛烈にアピールされて大変だったみたいです」
「よく知ってるのね」
「はい、昨日、セイウス様から聞きましたから」
リズに言われて驚く。
「セイウスさんといつ話をしたの?」
「お嬢様が会計学のお勉強をされているときです」
アイリスは公爵家の跡取りであるため、領土経営のための様々な勉強をしている。
その時間はセイウスとは離れる。
「そう……」
「お嬢様の事をどう思っているか探りを入れてみました。すると『お慕いしています』ですって。なんでもプロポーズもされているとか」
そういえば、色々とあってリズに告白の話をするのを忘れていた。
「一応………告白はされたわ」
「流石、お嬢様です!難攻不落と言われたセイウス様を虜にするなんて!!」
リズに言われて、顔が赤くなるのがわかった。
「………なんですか………その可愛い反応は。もしかしてお嬢様もセイウス様を?」
自覚はしたが、改めて言われると恥ずかしい。ますます顔が赤くなる。
「両想いじゃないですか!もうプロポーズの返事はされたのですか?」
「まさか!最近やっと、自覚したのよ。確かにセイウスさんのことは素敵だと思うわ。でも結婚となると違う気がして」
アイリスの言葉にリズにニヤリと笑った。
「セイウス様は本当に人気があるので、お嬢様が前向きなら婚約の話を勧められたほうがいいかと思います」
「でもなんていうの?婚約の件、承諾しました?告白を受けてすぐに返事しなかったから、今さらなんて言えばいいのかわからないのよ………それにこの気持ちが恋なのか、自分でも自信がないの」
「お嬢様は真面目過ぎます。まずは恋を楽しんでみてください。お嬢様がセイウス様にしたいことをしてみたらいいかと思います」
リズの言葉を受けて考え込んでしまった。




