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護衛5

セイウスは自分に用意された部屋に私物を運ばないといけないため、しばらくアイリスから離れた。


アイリスはそれまで部屋でリズと過ごすことにした。


セイウスの部屋が整ったら夕食前にダンスのレッスンがある。


パートナーのセイウスとダンスの練習だ。


いつもはバンや先生が相手だったため、セイウスのような背の高い男性と踊ったことがない。


「ちゃんと踊れるかしら?」


お茶を用意してくれているリズに聞く。


公爵令嬢として、ダンスが下手だと思われたくなかった。


「大丈夫ですよ。セイウス様がリードしてくださいます」


「セイウスさんはダンス、得意なのかしら?」


「得意だと思いますよ」


リズが断言する。


「どうしてわかるの?」


「私はすでに子爵家令嬢として社交界デビュー致しております。セイウス様のことは何度かお見掛けしたことがございます。様々なご令嬢からダンスを求められて、応じておられましたよ」


「女性からダンスを申し込むの?」


ダンスは通常、男性から申し込むものだと聞いている。


「正確にはご令嬢の父親から頼まれて、です。特定の婚約者がいない数少ない優良物件ですから、自分の娘の婚約者にと狙っている者は多いようですよ」


「そうなの………」


リズの言葉を聞いて、なんとなくモヤモヤした。


「セイウス様はどんなご令嬢とも上手に踊っていらっしゃいました。リードがとてもお上手です」


「もしかしてリズも踊ったことがあるの?」


リズは今年で24歳になる。そろそろ結婚相手をと子爵が探しているはずだ。


リズは頷いた。


「父が懇願して一度お相手していただきました。」


「そうなの?」


「はい。社交界でいろいろな方とダンスを踊りましたが、セイウス様が一番上手でしたよ。ですのでダンスの心配は不要かと」


リズとも踊ったことがあるのか………。


アイリスはまたモヤモヤした気持ちになった。


確かにセイウスを狙う令嬢は多いはずだ。


整った容姿と優しい物腰。そして国一番と言われる剣士であり位は伯爵。


女学校時代の友人達の間でも素敵だと話題になっていた。


やっとウィルネスが自分の婚約者に推す理由がわかった気がした。


「セイウスさんは社交界でモテるのね」 


「それはそれはおモテになられています。一度しかダンスを踊っていない私のことも覚えていて、声をかけてくださるマメな方でもありますし。」


「声をかけられたの?」


「はい。お嬢様のネックレスを購入されたときに『グラシュッケ侯爵のパーティーでお会いしましたよね』と挨拶して下さいました」


「そう………」


またモヤモヤした気持ちになった。


何度か一緒に出掛けたが、自分はセイウスのことを何も知らない……もしかしたらリズの方が詳しいのかもしれない。


そんな気持ちになり落ち込む。


「セイウス様はいい旦那様になると思いますよ。社交界や宝石商のお客様などたくさんの人を見てきた私が断言します」


セイウスがいい人なのはよくわかっている。


それをリズの口から言われると面白くないのだ。


思わず無言になる。


「お嬢様、どうかされましたか?」


「なんでもないわ」


リズの口からセイウスの話を聞くのが嫌だなんて、まるで子供みたい。


アイリスは今まで感じたことのない感情に小さくため息をついた。



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