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護衛4

しばらく庭内を散歩しているとお腹が空いてきた。


時間的にお昼の時間だ。


「ご飯はどうされるのですか?」


護衛騎士は一緒に食事をすることはない。


しかし、セイウスは婚約者候補でもあるため気になった。


「私は他の騎士と共に食事をする気でいたのですが、ウィルネス様とリーシャ様の希望でアイリスさんと3食一緒に食べることになっています」


ウィルネスは仕事で、リーシャは誕生会の準備で忙しくなっているため食事を一緒に食べることが少なくなっていた。


一人で食べている私に配慮したのだろう。


「最近、一人での食事が多いので嬉しいです」


「そう言っていただけるとホッとします。私と食事はしたくない!なんて言われたらさすがに傷つきますからね」


「言いませんよ、そんなこと。」


「安心しました。そろそろお昼の時間ですね。食事をしてから私の部屋をバンに案内してもらいます」


「では行きましょう」


「公爵邸の食事は美味しいので楽しみです」


そんな会話をしながら食堂へと向かった。





食事も終わり、バンがセイウスを部屋に案内するというのでアイリスもついていくことにした。


「ねぇ、バン。セイウスさんのお部屋は客間と聞いたけど2階なの?」


食堂は1階にあるため階段を上りながら聞く。


「いいえ、セイウス様のお部屋は3階にご用意するよう、仰せつかっております」


「3階?3階に客間はないけど」

 

「そうなんですか?」


後ろを歩くセイウスに問われて頷いた。


「3階は私達家族の階なんです」 

 

「セイウス様のお部屋は客間ではございません」


バンはそういいながら3階まで上り、まっすぐに歩いていく。


「客間はもちろんだけど、空き部屋もないわ」


「ございますよ」


バンはどんどんと歩を進め、アイリスの部屋近くまでやってきた。


「ちょっと、この先は私の部屋以外ないわよ」


アイリスが言うと、バンはアイリスの部屋の1つ前で足を止めた。


「お嬢様、セイウス様のお部屋はこちらでございます」


「ちょっと、バン!この部屋は………」


驚くアイリスを尻目にバンは部屋のドアに手をかけ、ゆっくりと開けた。


そこにはベッドと洋服ダンス、机といった最低限の家具が整えられていた。


「こちらがセイウス様のお部屋でございます」


言われてセイウスが部屋に入る。


「最低限の物はご用意致しましたが、何かございましたらお申し付け下さい」 


「素敵な部屋ですね。期間限定なのに申し訳ないくらい広いですし………ただ………」


「なんでございましょう」


「右横にあるあの扉はなんでしょうか?」


その部屋には入口の扉以外にもう一つ右側面に扉がある。


「もしかしてなのですが………」


セイウスが言い淀むと


「あちらの扉はお嬢様の部屋に繋がっております」

 

とバンが淡々と答えた。


「ど、どうしてつながっているのでしょう?」


「こちらはお嬢様が社交界デビューした後に衣装部屋になる予定の部屋でございます。今はドレスの量も少ないので奥様の衣装部屋を使われています。しかし、社交界デビューしたあとは夜会にも頻繁に呼ばれることとなりますので、そのためにお嬢様専用の衣装部屋をあらかじめご用意していおります」


「どうして衣装部屋をセイウスさんの部屋にするのよ!」


「誰も使っておりませんが清掃は行き届いております。それにこの間のようなことが起きた時に隣にいなければお嬢様を助けることができません。護衛としては最適なお部屋かと」


「で、でもドアで繋がっているよ」


「問題ございません」


そう言うとバンは懐からカギを取り出してアイリスに渡した。


「こちらの扉はお嬢様の部屋からしか開閉することが出来ない作りになっております。緊急事態のときのみ、鍵を使ってセイウス様に助けを求めて下さい」


バンはセイウスの方に向き直った。


「それに、セイウス様は旦那様に結婚するまでは自分から指一本触れないと約束されています。お嬢様にもしていますよね?」


「え、ええ」


「それでしたら問題ないかと」


バンが断言するのでおかしいと騒いだアイリスのほうが間違っている気がしてきた。


「とりあえず、セイウス様には誕生会までこちらの部屋で過ごしていただきます。お嬢様の護衛、どうぞよろしくお願いします」


バンは慇懃に頭を下げると部屋を出ていった。


「えっと……これからよろしくお願いします」


セイウスに言われて


「はい」


と答えるとセイウスがとても真面目な顔で


「その鍵は絶対に緊急事態以外は使わないでくださいね」


と念を押された。


本人の意思ではないが、いきなり距離を詰められ過ぎるとどう対処したらいいか困ってしまう。


それなのに不思議と嫌な気持ちにはならない。


困り顔のセイウスを見ているとなんだか楽しくなって思わず笑ってしまった。


護衛を引き受けてくれたのがセイウスでよかった。


そう自然と思った。


 

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