護衛3
ウィルネスの話が終わり、セイウスはアイリスの専属騎士となった。
といっても、ずっとではない。
誕生会までの間の臨時雇いという形らしい。
「本当はずっと護衛をしてもらいたいが、陛下に却下されてな。優秀な騎士をこれ以上奪わないでくれとな」
ルーイを始め、王族騎士団で気に入った人物がいたら公爵邸に勤めないかとよく打診しているそうだ。
条件がいいと思った騎士が数名、公爵家の騎士になっているらしい。
書斎をセイウスと共に出る。
ウィルネスに
「気分転換に庭でも散策してきなさい」
と言われたためだ。
確かに事件後は屋敷から出ていなかった。
天気が悪いのもあったが、そんな気分になれなかった。
今日は晴天でお散歩日和だ。
セイウスはいつもと違い、アイリスの後ろをついて歩いている。
「あの………横を歩きませんか?」
確かにルーイが護衛する時は後ろを歩いていたが、セイウスにそうされるとなんだか落ち着かない。
「騎士が護衛対象の横を歩くわけには行きません」
「それだと話しにくいです」
庭に出たタイミングで立ち止まり振り返った。
「いつも通りでお願いします」
「アイリス様がそう望むのであれば、従います」
「その、アイリス様というのもやめて下さい」
「しかし………」
「できないのなら護衛騎士を解任します!」
アイリスに言われてセイウスは苦笑した。
「わかりました。ウィルネス様や他の方がいない時は今まで通りにしますね」
セイウスが横に来たのでアイリスはホッとして歩き出した。
「どうして専属騎士になることを承諾したのですか?」
「好きな女性の側に堂々といられるのに断る理由がありますか?」
セイウスに言われて、告白されたことを思い出した。
自然と顔が赤くなる。
「それに、今回のような事件が起きた時に貴女を守れる立場にいたかったのです。専属騎士なら命をかけて守れますからね」
「確かにセイウスさんが側にいてくれれば安心ですが」
国1番と言われる騎士だ。安心しない人はいないだろう。
「これから、アイリスさんに認められるようにがんばりますよ。私以外に婚約者なんて考えられない!と思われるのが目標です」
「なんですか、その目標」
思わず笑うと
「アイリスさんはやっぱり笑顔が似合いますね」
とセイウスが優しく微笑んだ。
トクンっと心臓が跳ねた気がするが、気付かないふりをする。
「せ、セイウスさんはしばらく住み込みで働かれるのですか?」
公爵邸で働く騎士は邸内の専属宿舎に住み込みの者もいる。
ルーイみたいに家庭がある場合は夜勤以外は出勤してくる形だ。
「はい、誕生会までは公爵邸に留まります」
「では騎士専用の宿舎に?」
「いえ、ウィルネス様のご厚意で客間にて寝泊まりします。私は婚約者候補なので」
「どの部屋を使われるのですか?」
「えっと………アイリスさんの部屋に一番近い部屋だと伺っています。何かあったときのすぐに駆けつけられるように。まだ部屋には行っていないので正確な場所はわからないのですが」
アイリスの部屋は3階の奥にある。ウィルネスの書斎、夫婦の寝室、図書館、各々の衣装部屋などが3階に集中している。
客間は2階だ。
「階段近くのあの部屋かしら?」
アイリスの部屋が階段側にないので、近いとは言い難いが。
「後でバンが教えてくれるそうですよ」
「私もご一緒していいですか?」
「もちろんです」
その後2人はのんびりと庭を散策した。




