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告白5

どれくらいそうしていたのかわからないが、アイリスはようやく落ち着いて自分が抱きつくというはしたない行為をしていることに気がついた。


「ご、ごめんなさい」


慌ててセイウスから離れる。


「怖い思いをしましたね。まぁ……私は役得でしたけど」


空気を和ませようとわざとそう言ったのがわかり、思わず笑みがこぼれる。


「指一本触れませんと言ったばかりなのに、嘘をついてしまいました」


「いえ、私から抱きついたので………その………申し訳ありません」


セイウスは女が落としていったランタンを拾ってテーブルに置いた。


「椅子に座りませんか?」


アイリスは素直に椅子に座った。


セイウスが傍にあったショールを肩にかけてくれる。


そして自分も向かいの椅子に座った。


「でもどうしてセイウスさんがここに?」


セイウスとはかなり前に別れたはずだ。


あれから数時間は経っている。


「実は、アイリスさんをここまで送ったあとに私は街へ戻っていたのです。鍛冶屋に用がありましてね」


「鍛冶屋……ですか?」


「ええ。いつも使っている剣をメンテナンスに出していましたので、それを受け取りに行きました。そこで新しい剣を見せてもらったり、お互いの近況などを語っているとすっかり日が暮れまして……」


「バルト……従者と街で夕食を食べてから帰宅ました」


そういえばセイウスから微かにお酒の匂いがする。


「帰りは公爵邸の裏の道を通りました。そのほうが我が家に近いので。するとどう見ても公爵邸の関係者に見えない男二人がランタンを持った女性に導かれて公爵邸に入っていくのが見えたのです」


その女性はサラだろう。


「バルトと二人、嫌な予感がするという意見で一致しました。逃走のためか裏門は施錠されていなかったので、中に入りました」


公爵邸に許可もなく入ってしまえばお咎めを受ける可能性もある。それでも中に入ってくれたセイウスに感謝した。


「女がランタンを持っていたのでそれを目印にバルトと二人後をつけました。すると会話からアイリスさんを狙っていることがわかったので捕まえることにした、というわけです」


「そうだったんですね………セイウスさんが通りかかってくれなければ………」


アイリスは自分の想像にゾッとして腕をさすった。


「男とこの家の者と思われる女は食堂で拘束しています。バルトが見張っているので問題ありません。公爵夫妻は?」


「今日は夜会で出かけています」


「内通者の女がこのタイミングで手引したということですね。アイリスさんが無事でよかった」


「本当にありがとうございます!」


「いえいえ、それより………あの……」 


「なんですか?」


「怖い思いをしたあとに男性と二人きりでいるのは怖くありませんか?食堂に行けばバルトもいますし………そちらで公爵夫妻を待ちませんか?」


食堂には自分を拐おうとした人間がいる。


「いえ、自分の部屋が一番落ち着きます」


「そ、そうですか………では部屋の前で眠っている彼を起こしてきますね!」


そういうとセイウスは立ち上がり、アイリスから離れようとした。


アイリスは思わずセイウスの服の裾を握って動きを封じた。


「あ、アイリスさん?」


「今は一人でいたくありません。お父様達が帰ってくるまで傍にいてください」


真っ直ぐにセイウスを見つめる。


セイウスはふぅ………とため息をついた。


「それでしたら、ショールでしっかりと寝間着を隠してください。そんな薄着で傍にいると私が落ち着きません」


「は、はい!」


アイリスはしっかりとショールで服を隠した。


「アイリスさん、どうか私以外に無防備にならないでくださいね。男が誰でも忍耐強いわけではありませんから」


セイウスの言葉はよくわからなかったが、とりあえず頷いておいた。



 

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