告白2
「急にこんなことを言われると迷惑だとはわかっています。ましては貴女からすれば私はおじさんです」
「そんなこと」
セイウスをおじさんだなんて思ったことは一度もない。
いつも優しくエスコートしてくれる安心できる人だ。
「アイリスさん、私は貴女を困らせたい訳ではありません。しかし………誕生会の後も会うのは今の関係では難しいと思います」
セイウスはゆっくりと丁寧に言葉を紡ぐ。
「アイリスさんがどう思っているかはわかりませんが、貴女はとても魅力的な淑女です。誕生会が終わると、貴女に交際を申し込む人間が後をたたなくなるでしょう。貴女の意思とは関係なく色んな男性から求愛されるはずです」
「そんなことは………」
「私は仕事の関係でたくさんの女性に会いましたがアイリスさんほど魅力的な女性はいませんでした。すぐに貴女は社交界で話題の中心になるでしょう。そうなったとき、私と婚約しているという盾を手に入れれば貴女にもメリットはあると思います」
そう言った後、セイウスは苦笑した。
「この言い方は卑怯ですね。私が貴女と特別な関係になりたい、ただそれだけです」
まっすぐに見つめられて心拍数が上がる。
どう答えるのが正しいのかわからない。
「あの……」
何か言わないと、とは思うが言葉が出てこなかった。
「急に言われても困ると思います。ゆっくり考えてください。ただ、私は本気ですよ」
今まで優しい人だと思っていたセイウスが急に、知らない男性になったような錯覚を覚える。
「考えさせてください………まだ婚約者だとかよくわからないんです」
「もちろんです。誕生会までにお返事をいただけたら根回しします。」
「セイウスさん」
「なんですか?」
アイリスは小首を傾げた。
「私は今まで誰かを好きになったことがありません。ですので、好きという感情がわからないのです。その状態で貴方に正しい返事をする自信がありません」
「正しい答えなんてありませんよ。好きという感情は………言葉では難しいですが」
セイウスは視線を外に移した。
「私の場合はアイリスさんの姿を見ただけで、心が温かくなります。心拍数もあがりますね。貴女の笑顔を見るとその可憐さに抱き締めたくなります」
「だき………しめたく?」
「あ、もちろん実際にはしませんよ!アイリスさんとは付き合っていませんし、まだ14才です。もし……婚約者になったとしても我が国の成人である18歳までは指1本触れませんよ」
慌てるセイウスに緊張の糸が緩むのがわかった。
「ふふ………もう手は繋いでますよ」
「あれは……アイリスさんから頼まれたからです。自分からは繋ぎません」
不思議と気持ちが優しくなる。
セイウスといるといつも楽しくて自分が優しくなれる気がする。
「つ、つまり好きになるとその人に触れたくなります。そして別れた後もすぐに会いたくなります。常に貴女の事を考えてしまいます。………さすがにこれは気持ち悪いですかね」
慌てるセイウスにアイリスは思わず笑った。
「その笑顔を見ると抱き締めたくなるんですよ」
セイウスはハァッとため息をついた。
「私は理性で抑え込めますが、気を付けた方がいいですよ」
さっきまであんなにドキドキしたのに、今はいつも通りだ。
「少しでも私に対してそんな風に感じたら、婚約者になるとこを前向きに考えてください」
「わかりました」
馬車は公爵邸に到着した。




