表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/65

黒と青3

謁見が終わると、ウィルネスはセイウスにアイリスを託して慌ただしく仕事に戻っていった。


王城を出ると、すでに公爵家の馬車が待機してきた。


セイウスも護衛のため一緒に馬車に乗ることになったのだが、そうなると王城へ帰る手段がなくなる。


そのため、セイウスは自分の馬で外から護衛に当たることを提案した。


それを拒否したのはリズだった。


「せっかくお嬢様との貴重な時間だと言うのに、外にいては会話もできません。誕生会まで忙しく、会う機会がないのであれば馬車に乗ってその機会を作るべきです」


リズの意見にセイウスは困っていた。


公爵家の馬車を借りて王城に戻ることも可能だが、時間がかかる。


そのため、セイウスの馬を護衛の1人が乗って公爵家まで行き、帰りはその馬に乗って帰る事となった。


一緒に馬車に乗り馬車が動き出すと、アイリスは申し訳無さそうな顔をした。


「せっかくの貴重な休憩時間なのに………申し訳ありません」


さっきから謝ってばかりだ。


馬車にはアイリスとリズ、セイウスが乗っている。


「アイリスさんとこうやって会話ができるのは嬉しいですよ。私の意志ですので謝らないでください」


「そう言って頂けると気持ちが楽になります」


アイリスがそう言うと、セイウスは優しく微笑んだ。


「ところで、誕生会のことなのですが」


「はい」


「私からアイリスさんにプレゼントを渡したいと考えています。何か希望はありませんか?」


想定外の質問に驚いてしまった。


「そんな!パートナーになっていただけるだけでじゅうぶんです!」


「そうはいきませんよ。本来ならドレスを贈るのが一般的ですが、おそらくすでに準備されているでしょう」


確かにドレスは両親が大張り切りで準備していて、すでにほぼ完成している。


「ドレス以外となるとネックレスになるかと思います。その………出来ることなら誕生会に付けてほしいと思っています。ドレスにあったネックレスをプレゼント出来たらと思うのですが」


誕生会のパートナーは恋人だったり婚約者、兄弟が多い。


そのため、誕生会のときにプレゼントされたものを身につける習慣がある。


セイウスの提案は一般的なものだった。


「ドレスは青を貴重としたデザインですので、持っているアメジストのネックレスを使う予定なのですが……そうよね、リズ」


アイリスはどう答えるのが正解なのか分からずにリズに助けを求めた。


セイウスは恋人でも婚約者でも兄弟でもない。


そのため、プレゼントをもらえるなんて思っていなかったのだ。


リズは『お任せを』と言わんばかりに頷くと


「お嬢様の当日のドレスは濃紺を基調とした比較的大人しいデザインのものです。お嬢様自身が目立つようにあえて抑えたデザインになっています。ですのでネックレスの色は青色か………黄色などが綺麗ではないかと思います」


いいながらセイウスに視線を移し、


「ちょうどウルフレッド様の瞳のようなブルーなどはとても良く似合うかと思います。もしくは髪の色のような黄色もおすすめです」


パートナーがプレゼントするものはパートナー自身の瞳や髪に近い色のドレスを贈ることが多い。


兄弟の場合は本人の瞳の色の宝石だったりする。


リズに言われて


「私の瞳や髪の色ですか………」


と少し恥ずかしそうに呟いた。


「お嬢様は誕生会で色んな殿方からお声をかけられると思いますので、ネックレスで牽制しておいた方がいいですよ」


「リズ!私達は付き合っているわけじゃないから、セイウスさんが牽制する必要なんてないのよ?」


「それはお嬢様の意見です」


「セイウスさんだってそんなことを言われたら困ってしまうわ。ねぇ、セイウスさん」


「あ………いえ、アイリスさんは私の瞳や髪の色の宝石をあしらったネックレスを貰うのは嫌じゃありませんか?」


と質問された。


「嫌?嫌なわけありません、。セイウスさんの瞳はとても綺麗ですし、髪だっていつもキラキラしています。その色味の宝石をもらって嫌がる女性はいませんよ!」


「そ、そうですか」


「はい!セイウスさんの瞳と髪がキレイなことに自信を持って下さい」


「お嬢様………相変わらずの天然ですね」


リズの独り言はアイリスに届かなかった。


セイウスは少し頬を赤らめながら


「それでしたら当日用のネックレスをプレゼントさせていただきます。前日にはお届けしますので」


「ありがとうございます。気を使わせてしまいました」


「私がプレゼントしたいんですから、気にしないでください」


馬車はゆっくりと公爵家へと向かっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ