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記憶が阻害する1

「ねぇリズ、この宝石なにかわかる?」


セイウスとのデートから数日が過ぎ、アイリスはふとウルフからもらった紫の宝石が気になった。


リズはスータ子爵家の令嬢で父親は宝石商を営んでいる。


もともと曽祖父は平民で宝石商で一代をなし男爵の位を賜った。


その後、父がスータ子爵家の養子に入り宝石商を続けているのだ。


この国で1番の目利きと言われるスータ子爵の娘なので、リズも宝石にはかなり詳しい。


大きな紫の宝石にリズは驚いたように目を見開いた。


「これは………一体どうされたのですか?」


「ウルフからもらったの。大きな宝石でしょ?でもアメジストっぽくないのよね。パープルダイヤモンドじゃないかと思うんだけど」


「手にとってもよろしいですが?」


「もちろん」


アイリスは素手で持っていた宝石をリズに渡そうとすると、リズは素早く手袋をして受け取った。


そしてルーペを取り出しまじまじと観察しだした。


きれいな球形のそれは自ら発光するように輝いている。


「これは………宝石ではありませんね」


やや硬い声でリズが言った。


「こんなにきれいな石なのに宝石ではないの?」


「はい。これは魔獣が作り出した魔石です」


リズは断言するように言う。


「魔石?一体どんなものなの?」


「魔石は魔獣の体内にある石です。強い魔獣ほど大きくて美しい魔石だと言われています。しかし……こんなに大きくて美しい魔石は初めて見ました」


「ウルフの魔石なのかしら?」


「いいえ、違います。ウルフの魔石はもっと小さくて色は土のような色です。お世辞にも美しいと言えません。それにこんなに見事な球形ではないです」


アイリスは小首を傾げた。


「じゃあ何の魔石なのかしら?」


「わかりませんが………ここまで大きくて美しいものとなると龍の魔石ではないかと推測します」


龍………。もしかして黒竜の魔石?


アイリスはそう思ったが口にしなかった。


「ありがとう。取り敢えず保管しておくわ」


アイリスは魔石を受け取ると引き出しにしまった。


リズとはそれ以上、魔石の話はしなかった。


「ところでアイリス様、セイウス様とのデートはいかがでした?」


そうだ、帰ってきてから誕生会の準備で忙しくリズに感想を伝えていなかった。


「街はお花がたくさん咲いてとてもきれいだったわ。噴水もとても大きくて………くしに刺さったお肉を頂いたんだけどとっても美味しかった」


「それは良かったです」


「カフェに行けなかったのは残念だけど、また街に行く口実ができたから、幸運よね」


「セイウス様はいかがでした?」


「セイウスさん?街のことをとても良く知っていて頼りになったわよ」


なぜリズがそんな質問をしたのかアイリスにはわからなった。


それよりも街の素晴らしさのことを伝えたくて仕方がない。


15の誕生日を迎えれば護衛付きで街に行くことができる。その時はリズも一緒に行けたらいいなと思っている。


「アイリス様はセイウス様を異性として意識してないのですか?」


「異性として?」


私がセイウスを?と思わず口に出しそうになった。


セイウスは確かに立派な青年に成長した。


しかし、弟のように思っていたセイウスを異性として認識するなんて考えてもいなかった。


そもそも婚約者ではなく誕生会の時だけ限定のパートナーだ。意識する必要はない。


「アイリス様にとって初めてのデートです。なにか思うところがあったのではないかと思ったのですが」


「特にないわ。街に出かけられるのであればセイウスさんじゃなくてもいいし。だって誕生会でのパートナーでしょ?」


「………セイウス様が気の毒です」


聖女は決して特定の人物を愛してはならない。


幼少期から徹底的に教え込まれたアリアの記憶があるため、アイリスは異性を意識するという意味がよくわからない。


セイウスはあくまで街を案内してくれた人物という認識で、一切ときめいたりドキドキしたりはしなかった。


アイリスはリズの言葉の意味がよく分からなくて、この話を切り上げることにした。

 



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