8.ユーディーside
『ユーディー、あなたを愛しているわ。』
『エレノア。僕もだよ。』
抱きしめた彼女の肌は温かくて柔らかくて、どこかいい匂いがして、幸福感に包まれるのだ。なんて俺は幸せなんだろうか。
『ちょ、エレノア何して―』
エレノアは僕の腕をつかみ、自分の秘所にあてる。何故か、スカートの下には何も履いておらず、暖かく少し濡れていて。
『ん、ん。ユーディー。』
扇情的な表情を僕に向けるのだった。そんな顔をされたら僕も黙っているわけにはいかず、
『ま、待って、ユーディー。』
『待てない、そんな顔をするエレノアが悪いんだから。』
「はっ!」
という所で目を覚ました。起きれば見慣れた宿の部屋で、当然エレノアもいなくて。そして、明らかに熱を持っているあれがあるのだ。
「はぁー、本当にクズだな。僕は。」
最近まともにエレノアを顔を見れない。罪悪感でいっぱいになるからだ。
あの日、エレノアが指についていたクリームを舐めた日から、どうも抑えがきかない。毎日のように、エレノアには言えない夢をみて、盛っているのだ。僕も年若い男なのだから、仕方のないことといえば仕方ないんだろうけど。
(前世では彼女に触れたいなんて考えてもいなかったのにな。)
今では何故そう無関心でいられたのかが分からない。
彼女に望まれて夫となったハーロックが羨ましすぎる。
トントントントン
「あの、ユーディーさん、起きていらっしゃいますか?」
「あぁー、うん、今起きたところ。シャワーとか浴びたいから、先に下で朝食食べてて。」
「分かりました。」
クラマの森みたく、隣で一緒に寝るのも捨てがたいけど、部屋を別室にして本当によかった。そう思うのであった。
※※※
「ごめん、待たせちゃって。」
「いえ、むしろ寝ているのにお邪魔してしまったみたいでごめんなさい。本当は私1人で出かけても良かったんですけれど。」
「それはまだダメ。そんなのされた日には、眠れなくてエレノアの部屋の扉の前で待機するしかないからね。」
「それは体に悪すぎると思うので、しませんが。」
「なら良かった。今日は何したい?」
「その、宿屋のチナさんから伺ったんですが、なんでも今日はフリーマーケット?ということを広場で行っているみたいなんです。少し興味があって。」
「そうなんだ!楽しそうだね、行こう行こう!」
最初に比べたら、エレノアも自分の意見をいうようになって、喜びを感じている。それほど俺に慣れてくれた証拠だろう。エレノアは毎日が目新しいみたいで楽しそうだし、そんなエレノアを眺めるのも楽しい。
やっぱりあの場所からエレノアをつれだしたのは間違ってなかったと改めて感じる。ただ、1つだけ聞けないことがあった。元婚約者である殿下のことをどうもう思っていたかだ。もし、エレノアが殿下を愛していたのなら、殿下との結婚を潰した俺を心の底では許していないかもしれない。
今は頼れる相手もおらず、僕に合わせるしかないけれど、獅子魂胆と僕への復讐を企んでいるのかも。まぁ、エレノアに殺されるのだったら、それはそれで抵抗などひとつもせず、素直に受け入れるけれど。
「これがフリーマーケットなんですね。全てがキラキラして輝いてみえます!」
「王都のやつはもう少し派手なんだろうけどね。」
「十分です!王都のだなんて絶対許可なんて取れませんから。」
小さな子供みたいにはしゃぐエレノアが可愛くて、可愛くて仕方がない。
「ユーディーさん、私になにか買っていただけませんか?」
「もちろん、どんなのがいい?」
「なんでもいいのです。私に似合うと思うものを選んでください。」
「んー、どれがいいかな。あ、これなんかいいと思う。」
俺が選んだのは、青い小さな石のついたネックレス。フリーマーケットで売るには、似合わない少し値の貼ったものだが、金色の髪をもつエレノアにはよく似合っている。それに、俺が思うものならばきっとこの石は、エレノアを守ってくれる気がする。
「綺麗なネックレスですね。大事にします。」
嬉しそうにするエレノアの姿をみれただけで、俺も嬉しくなってしまった。