3.ユーディーside
「さぁさ、食べて食べて、出来たてだよ。」
「…」
「毒なんか入ってないよ。それにエレノアもお腹空いてるでしょ?」
「…いただきます。」
エレノアみたいな前世も今世もお嬢様には魚の塩焼きなんて馴染みないと思っていたから、不安だったけど美味しそうに食べているから良かった。
こんな感じで少しずつ距離を縮められたらいいな。
食事のあと、することはといえば勿論。
「エレノア、足をだして。」
「な、なに、いきなり。」
「いいから!」
「ちょ、っと。」
白い滑らかな足。少し触れているだけなのに、エレノアは耳まで真っ赤になっていて、可愛らしい。何を想像しているのやら。
俺は手持ちのバックからあるものをだし、エレノアの足に塗りつける。
「傷薬だよ。少しは痛みもマシになるんじゃないかなって思って。」
「あ、りが、ん、はぁ、も、もういい、から。」
足が弱いのかもしれない。くすぐったいのか喘ぐエレノアに、止まらなくなりそうな自分が怖い。今は信頼を得ないといけない最中なのでそんなことは勿論しないが。
「ほら、背中も怪我してるんでしょ?塗るから後ろ向いて?」
「え、いや、いい、いいから。」
「擦り傷だからってバカにしてると、跡残るよ?ほら、早く。」
結局俺の言い分に納得してしまったエレノアは、背中を向けてくれた。エレノアが来ていたのは簡素なワンピースなので、背中の服をめくると、その、下着も見えてしまうのだが、これは治療中なので仕方のないことだ。
「ごめんね、エレノア、怪我、させちゃって。」
馬車から落とされたと言っていた。地面には小石や小枝が至る所に落ちているから、その時のものだろう。エレノアの白い背中には多数の擦り傷ができていた。
「貴方のせいじゃないわ。それにこんなのどうってことないわよ。」
「ごめんね、エレノア。次はちゃんと守るから。」
早く治りますようにと願いを込めて、傷口にキスをすると、「ひゃぁ!」とまたまた可愛らしいエレノアの声が聞こえて楽しくなるのだった。
「知ってる?エレノア、傷口には唾液をつけると早く治るって平民の間では言われているらしいよ?」
「そんなの、迷信でしょ。」
「なら試してみようよ。」
「ちょ、ちょっと、ハーロック!やめな、ん、ん、はぁ、はぁ。」
「ハーロックじゃなくて、ユーディーね。はい、消毒終わり。」
「ハウラン様、次勝手にこのようことをしたら、許しませんからね。」
「あー、すいません、少し度が過ぎました。」
「全く、貴方って人は。そんなイタズラ好きではなかったでしょ。ハーロックは、もっと大人な方だったと記憶しておりますが。」
「エレノア。いくら僕がハーロックとしての記憶があるとしても、ハーロックとは別人格なんだ。勿論エレノアが望むならハーロックと同じようにしてもいいけど、せっかく生まれ変わっているんなら今の僕を見て欲しいな。」
「そう、ね。申し訳ありません、ハウラン様。」
エレノアが素直すぎて可愛い。本当殿下も、前世の俺もバカだよなぁ。こんなに可愛いい女性なのに、他の奴を選ぶだなんて。きっと俺と同じように、殿下も後悔する日がくるんだろうな。
その時の殿下の顔を拝んでやりたい。願わくば、その時までには堂々とエレノアの傍にいられるといいんだけど。
「ハウラン様?」
「あー、ごめんごめん、エレノアが可愛いすぎて困ってた。」
「かわ、いい加減なこと言わないでください!」
本当、俺の元妻は可愛すぎて困る。