18.ユーディーside
俺がある令嬢を守るために、学園を辞めるって行った時も誰も反対しなかった。普通の家なら「何を馬鹿な!」って一蹴されるところだろう。だからこそ、エレノアを紹介しても大丈夫だと思っていた。
けれど、絶対っていうのはこの世にないから、だからエレノアの傍にいろう。そう思っていたのに、来て早々エレノアと離れることになってしまった。このレイトン兄のせいで。
この兄は負けず嫌いで、剣術とか体術とか体を動かすことには長けていた。僕ら三兄弟の中では1番頭は劣るが、それでもダメすぎる程ではなかった。
「もう、いいか、げん、にしてよ。」
「そろそろ疲れてきたか?息が切れてるぞ。」
そりゃあ2時間も剣の相手してたら疲れてくるでしょ!というかどうしてそう、元気なの!
「レイトン、そろそろやめにしたらどうだい?そろそろ陽もくれる。夕飯のために着替えておいで。」
「ルー兄。おかえり。」
「ただいま、ユーも久しぶりだね。」
僕でさえ、気付かなかなった。一体いつから、そこにいたのだろうか。
「ルー兄、ただいま戻りました。」
今世の兄たちは、俺を超えるほど、優秀だ。
※※※
「エレノア、紹介するよ。長兄のルシファー兄さんだ。」
「初めまして、ルシファーです。」
「は、初めまして、エレノアです。」
「ユーは、やっぱり面食だね。こんな可愛いらしい子を捕まえて。」
「ルー兄、僕は面食いじゃない。エレノアだから好きなんだよ。」
たとえ、なんらかの理由で顔に大きな傷を負っても、俺はエレノアがエレノアでさえいてくれれば、それでいいのだ。なので面食いと言われることは心外だ。
「ふふ。どうだか。さて、エレノアさん。君の事情は知っています。そして、今の事情も。」
「ルー兄!」
「いつまでも知らない訳には行かないと思うよ。それに、今彼女の意思を聞くことで、私達の今後を決めるための参考にもなる。そうだろう?」
ルシファー兄さんのいうことは正しい。どうせいつまでも隠しては置けないことだろうと分かっている。でも、はっきりエレノアから、俺とは別の男の方に戻るなんて言われたら…
「今の事情とは、なんのことでしょうか?」
ルシファー兄さんは、王太子がエレノアを探していることをエレノアに告げた。そうして、エレノア自身がどうしたいかも。
「ユーディーさん。」
その話を聞いた彼女は、俺のほうに真っ直ぐ視線をやり、「貴方は私がアルフ様の元に戻るかもしれないと思って、何も話さなかったのですか?」と尋ねる。俺は、なんともいえず言葉を返せなかった。
「貴方のお気持ちよくわかりました。貴方がどれだけ私を疑っていたかも。私がいくら言葉を繋いでも貴方は私を信じようとはしないのですね。」
「ち、がう!エレノア、違うんだ。ただ僕は…」
なんと答えたらいい。さっぱりわからない。エレノア以外のことだったらいつものように冷静に考えられるのに。肝心のエレノアに大しては、全くうまくいかない。
「私とユーディーさんはもう離れるつもりはありません。私は貴方の言葉を信じることにしました。ですので、ユーディーさんも私の言葉を信じてください。そして、その…平民ですが、私と結婚してくださいませんか?」
「平民でも奴隷でもなんでもいい、エレノアがエレノアなら。生涯君だけを愛すことを誓います。だから俺を傍にいさせてください。」
「また泣いてるのね。涙脆いんだから。」
ふふと彼女は笑いながら、自分の手で涙を拭ってくれた。