表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

16.エレノアside

かれこれ2時間くらい経ったのだろうか。窓の外はどんどんオレンジ色に光っていて、キラキラしていた。

そんな中、ノックもせず、先程のレイトンさんのように現れるユーディーの姿は、少し汗をかいていて、息も途切れ途切れだった。


そんなに急いでここに、私の為に来てくれたことを考えると、胸がキュンとしてしまうのを感じた。


「エレノア、大丈夫だった!なにか酷いこと言われなかった?!」


「あら、ユーディーは私のことをなんだと思ってるのかしら。」


「目が赤いけど、もしかして泣いてた?…母上!エレノアに何を言ったのさ。エレノアを泣かすようであれば例え家族でも許さないから。」


「ユーディー、違うの。ただとても安心して、その泣いてしまっただけで。楽しい時間を過ごせましたわ。」


あらぬ誤解をされてしまっては夫人に申し訳ない。私はすぐさま訂正した。「本当に?ならいいけど。母上、その、すいませんでした。」とユーディーはすぐ落ち着いてくれた。


「全く、この子ったら。冷静沈着なあの子は一体どこに行ったのかしら。まぁ、好きな相手のことで、平静を保てるような男は、男ではないから許して上げるわ。」


前世の記憶のことは話さず、貴族籍を外された後のことだけを話した。


「なんて酷いことかしら。こんなか弱い令嬢を、あのクラマの森に1人置いておくなんて。それに、人攫いにも遭うだなんて。辛かったわね。よく頑張ったわ!」


そう夫人は優しく抱きしめてくれた。その温かさに、なんだか涙がこぼれてしまって。


私は泣きながら夫人を抱きしめかえってしまったのだ。17歳にもなろう女性が、赤の他人の母親に甘えてしまうだなんて。今思えばなんて恥ずかしいことをしてしまったのだろうか。


けれど、母親の愛というものはこういうものかと感じることができた。そうだ、私はずっとこうして欲しかったのだ。


よく、妹のローズは母に抱きついていた。それが羨ましくて私もと、両手を広げて近づくと、母は顔を引き攣らせながら「ごめんね、また今度。」と、いつも同じことしか言わなかった。


拒否される度に私の幼い心は傷ついて、結局甘えることを辞めたのだ。これ以上傷つけられたくなくて。


あの家に、あの家族に私の居場所はなかった。父、母、妹が楽しそうに話しているのを見て、その中に入ることは諦めた。だって、私が入ると父も母も顔を曇らせ、楽しそうだった会話は途端に消えてしまうから。


一体なぜ私だけこのような扱いをされるのか、最初は分からず、夜な夜な枕を涙で濡らしていた。諦めてはいたものの、理由もわからず両親から嫌われることに小さな子供が、耐えきれる訳もなかったから。


その理由がわかったのは10歳の頃。どうやら私は父と母の子供ではないかもしれない。

客間を掃除していた使用人がそう話すのを聞いてしまったのだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ