15.エレノアside
「ハウラン子爵夫人にご挨拶申し上げます。エレノアと申します。」
「まぁ、そんな畏まらなくていいのよ?私たちは硬っ苦しいことは苦手だから。会えて嬉しいわ。エレノアさん。」
「わ、たくしもです。」
「今からティータイムにしませんこと?貴方のことやユーディーのことを聞かせて欲しいわ。婚約も結婚もしないって駄々捏ねていた子が結婚したいって言ってきた子なんですもの。出会いとかとても気になるわ!」
「そう、なんですか?」
「母さん、その話はやめましょうよ。」
「ユーディー!やっと帰ってきたな!全く、帰ってきたならなぜこの俺に会いにこない!」
「騒がしいわよ、レイトン。」
大きな音を立て、いきなり現れたその人は、どことなくユーディーに似ていて、兄弟と感じざるを得なかった。もし私の家でこんなことをしたら、教育係からの罰をすぐ様受けていたであろう。両親からも怒られたに違いない。だが、子爵夫人は「いつものことなのよ。ごめんなさいね」と笑っているだけ。そのおかげか少しだけ緊張も解けるのを感じた。
「申し訳ない、母上。つい、嬉しくなってしまって。エレノア嬢も驚かせてしまってすまなかった。」
「いえ、私は別に。」
「すまないついでに弟を借りてもいいだろうか?」
「借りるだなんて、私に決定権などありませんもの。ユーディーさんに聞いていただけたら。」
「兄さん、僕は母さんがエレノアに余計なことを言わないか見張ってないといけないから無理だよ。」
「よし、なにも問題ないな。じゃあ行くぞ、弟よ!」
「わぁ!ちょ、ちょっと!」
ユーディーは兄であろうレイトンさんに担がれ、部屋から出ていってしまった。抵抗する様子は見られたが、レイトンさんは力が強いらしく、結局どうにもできなかったようだ。
「あの子ったら自己紹介くらいしていきないよ。全く。エレノアさん。今のが次男のレイトンよ。」
「とても仲が良さそうな兄弟ですね。」
「そうね。悪くはないと思うわ。今は居ないけど、また戻ってきたら長男も紹介するわ。」
兄弟か。私にも妹が1人いるけれど、仲は良くないから、憧れてしまう。
「ありがとうございます。そういえば先程のお話のことなのですが、その駄々を捏ねていたという。」
「あぁ、そうだったわね。子爵家といえど貴族は貴族。家同士の婚約の話はユーディーにも上がっていたのだけれど、あの子ったら全力拒否してね。ご令嬢からは逃げるわ、蛙をご令嬢に渡すわそれはもうヤンチャしてたの。理由を尋ねたら」
『僕にはもう奥さんがいるから。だからその人以外とは絶対結婚なんてしない!』
「って。7歳の子供がよ?笑っちゃうでしょ。ふふふ。」
7歳には記憶があって、ずっと私を、前世の私を思ってくれていたってこと?なぜだか分からない。だって私が死ぬ時まで、ハーロックはあの少女に心惹かれていたはずだ。いつから、いつからそんなに私のことを…私が知らない所で何が会ったというのだろうか。
「反対、されなかったのですか?」
「そうね、ユーディーは三男だから、家を継ぐこともできない。出来るなら婿養子に入った方がどれだけ楽か。そう本人にも小さいながら説明したわ。そしたら、なんにでもなれるように頑張る!ってそこから剣術、知識、礼儀、手当り次第なんでも挑戦し始めたの。下の子があまりに頑張るものだから、上の子も感化されちゃってね。本当にいい影響を与えてくれたわ。」
ハーロックは器用で、昔からなんでもソツなくこなし、才能に恵まれていると思っていたけれど他の人と同じように努力もしていたのだろう。そう思うと、なんだかより身近に感じられた。
「で、どういう出会いなの?」
目をキラキラさせてこちらを見てくる子爵夫人を見ながら、どう説明しようか頭を悩ませるエレノアの姿があった。