11.王妃side
「全く、礼儀知らずもいい所だわ。こんな子が王太子妃?馬鹿なことをいうんじゃありません。絶対に認めませんから。」
「私が、マナーも勉学も足りないのは重々承知です。ですが、勉強すればきっと。」
「どれだけ時間をかければというの?リクア嬢は、幼少期から厳しいマナーと勉学に励み、8年かけて私も認めるほどになったというのに。貴方が思うより王太子妃、アルフレッドが王位に就けば貴方は王妃になるのよ?その地位は楽ではないの。ただただ豪華な暮らしがしたいとか、人の上に立ちたいだとか下らない理由ならやめなさい。」
「…私は、アルフ様を愛して…」
「貴方はまだアルフレッドの婚約者でもなんでもないのよ。いくらアルフレッドが強要したといっても、私の前で愛称で呼ぶなんてありえないわ。」
「で、でも、で、も。」
「ほらこの場で泣くなんてありえない。貴方はアルフレッドとこの国を壊すつもりなの?貴方の行動ひとつで、アルフレッドが責められ、国が他国から攻撃されることだってあるよ。そして、貴方の責任は貴方が負うの。泣いたって誰も助けてくれないわ。もし、貴方が涙を流したとき、助けの手を差し伸べて欲しいのならアルフレッドはやめなさい。」
センティー嬢は涙を流し、部屋を飛び出した。普通ならこの行動ですら、罰を与える対象なのだが、そこまではするつもりはない。
「母上!」
予想はしていたが、こんなに早いとは思わなかった。息子のアルフレッドが私を訪ねにきていた。
「イリスに酷いことを言っていたようですね。」
「私は当たり前のことを言っただけよ。あんなので心折れるのなら、あの子には向いてないわ。はぁー、何故エレノアとの婚約を破棄したのよ。」
「何度も説明したでしょう。エレノアがイリスを…」
何度もアルフから説明をされ、書面も渡されたのだが、あのエレノアが本当にそんなことをしていたとは
今でも信じられない。でも、
「例えそうだとしても、センティー嬢は男爵令嬢なのよ。公爵令嬢であるエレノアに罰は与えても、婚約まで解消する必要なかったでしょ。」
と思う。アルフは分かっていないのかもしれない。どれだけ王太子妃、時期王妃に相応しいご令嬢が数少ないかを。そんな中8年もかけ、厳しい教育を乗り越えたエレノアが希少かを。私も期待し手にかけ、ようやく輝きだした宝石を、息子であるアルフレッドは簡単に捨てた。しかも旦那様には話を通しているのに、私には何一つ聞かず。それが許せない。これだから男は!?と文句も言いたくなる。
「ですが。」
「エレノアを連れ帰ってきなさい。会って土下座でもなんでもして、もう一度婚約者になって欲しいと乞いなさい。」
「…」
「アルフ、貴方、エレノアのことは好きではなくなったの?あんなに彼女のことを褒めまくっていたのに。」
「いや、それは。確かにあの後彼女に会いたくなって探してはいるのです。ですが…その見つからなくて。」
「人出は増やしてもいいから、さっさと見つけさない。どこぞの馬の骨に取られる前に。あるいは、もう既に息絶えているのかもしれないわね。貴族な彼女が1人平民の街で過ごせる可能性なんて低いものね。」
エレノアは厳しい私のことを嫌っていたかもしれない。でも私はあの子のことは認めていた。容姿も礼儀もその努力家のところも。あの子こそアルフの生涯の相手として相応しい。
「何故そんな不吉なことを。」
「貴方は平民の生活というのを何一つ分かっていないのね。ご希望なら今から追い出して、平民の生活を味わってくるかしら?3ヶ月後には迎えにいくわ。もちろん所持金は多少のものよ。」
「いや、それは。」
「全く、人員を増やしてでもエレノアをみつけてきなさい、いいわね。」
「は、い。」
『母上、僕はエレノアを守れる男になります!』
エレノアと初めて会った際はそんなことを言っていたのに。本当に残念なことになってしまった。
「エレノア。どうかご無事で。」