第6話 心強い仲間
「すみません、ハイドルンゴブリンの討伐依頼を早急に出してくれませんか!」
ギルドに駆け込み、受付嬢に向かって一息に叫ぶ。受付嬢は厳しい顔になり、「映像記録はありますか」と尋ねてきた。
すぐに冒険者プレートを取り出し、再生魔法をかける。空中に映像が再生され、それを見ていた受付嬢の顔がさらに険しくなる。
「ちょっとこれはマズイかもしれないですね…」
「あっ、あの、何がマズイのでしょうか…?」
どこがマズイのかよくわかっていないアンナが、俺と受付嬢を交互に見ながら質問してくる。
「ハイドルンゴブリンはゴブリン集落の長となる、ゴブリンの上位種なんだ。…ゴブリン集落の脅威については知っているよな?」
「えっと…農作物に被害が出たり、人に危害を加えたりする…んでしたっけ」
「そうだ。場合によっては、小さな村なら全滅する事もある」
「ぜっ、全滅…」
全滅という単語に顔を青くしていたが、ハッと何かに気づいたように言う。
「でっ、でも、集落が出来る前ならそこまで強くないんじゃないですか?」
「あながちそうでも無いですよ」
受付嬢が映像を止め、俺達に見せてくる。
「こちらのハイドルンゴブリンですが、通常の個体より二回り程大きいんです」
ほら、と言って見せてくれた魔物図鑑。確かに、一般的な大きさよりも大きい。普通なら成人男性と同じ位の身長だが、映像のやつは人間の大きさをゆうに超えている。
「ほとんどの魔物は、体の大きさに比例して強くなるんです。普通のハイドルンゴブリンがCランク程度だとしたら、これはBランク…より少し下程度の強さでしょうね」
受付嬢が、初心者のアンナに向けて説明をする。それをマジメに聞いているアンナ。これを通して成長してくれたら本望だ。
…って、俺ら討伐依頼を出しに来たんだよな?早く依頼書を作ってくれないだろうか…。
受付嬢とアンナが魔物について話し合っていると、不意に肩を叩かれた。振り向くと、ガタイの良い中年男性が満面の笑みを浮かべながら立っていた。
「なぁ、あんたらの話が聞こえたんだが、強えハイドルンゴブリンが出たんだってか?もし良かったらだが、俺とあんたらでパーティーを組んで討伐してみないか?」
チラリと相手の冒険者プレートを見ると、真鍮――Bランクだった。正直こちらに手を貸してくれるとありがたいのだが、巷では格下から報酬をちょろまかす輩もいるらしいから、警戒する他無い。
自分だけでは判断出来ないので受付嬢の方を見やると、安心した顔で頷いた。
「セインツさんなら、実力も人柄も安心ですね。どうでしょうか、彼と一緒に討伐をするというのは。お二人には良い経験となるはずです」
巻き込んでしまったアンナに目配せをすると、ニッコリ笑って頷いた。…よし、決まりだ。
「俺達はハイドルンゴブリンを討伐する。よろしく、ええと…」
「セインツだ」
「セインツさん。早速森に向かおう」
冒険者プレートの色は、ランクによって分けられています。
F…木(Fランクは子ども専用ランク) D…鉄 C…銅 B…真鍮 A…銀 S…白金
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