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第4話 アンナとの邂逅

 森の中を走る。身体強化ブーストを掛けたから、これくらいは全く苦ではない。

 ゴブリン隊を探していると、少し開けた場所にゴブリン隊がいる事を確認した。敵の数はおよそ12。奥の方にもいるかもしれない。弓である程度傷を負わせて、後は剣で首を取る。よし、この算段で行こう。


 (やじり)を敵の頭上に合わせる。手指の震えを沈め、息を止める。まだだ、まだだ………今だ!


「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」


 しまった!悲鳴に驚いて、少し手元が狂ってしまった!…狙った所とは違うけれど、まぁ当たったからよしとしよう。

 いや、それよりもさっきの悲鳴だ!誰か襲われているのか!?


 考えるよりも早く、身体が動いてしまっていた。突然現れた俺にゴブリン達は一瞬の隙を見せる。その隙を突いて、次々と首を跳ねる。辺りが凄惨な状況になるが、それに目を留めている暇なんて無い。


「大丈夫ですかー!?聞こえていたら返事をしてくださーい!!」

「…助けて、ください!」


 少し奥の方から声がする。急いで声がした方向に走ると、ゴブリン達に捕まっている女性がいた。怪我はしていないようだが、彼女の武器と思われる杖は遠くに投げ捨てられている。早く助けなければ…!



 近くにあった石をゴブリンに当て、注目を集める。

「おい!お前らの相手は俺だ!」

 石をぶつけた事に腹を立てているゴブリン達が一斉に襲いかかってくる。振り下ろされるこん棒をなんとかかわし、代わりに剣をお見舞いする。首元に真一文字を描き、倒れていくゴブリン。


 倒れた仲間を見て、さらに怒り狂うゴブリン達。さっきよりも威力もスピードも上がった攻撃に、少し体勢を崩してしまう。持ち堪えるも、追撃が待っている。

 頭目掛けて振り下ろされたこん棒を、剣で受け止める。

 っあぶなっ!ギリギリだったぞ!


 渾身の一撃をかわされたゴブリンが戸惑う。その隙に胴体を真っ二つに。ついでに左にいたヤツにも回し蹴りをして首を折る。…少し疲れてきた。残りは…後6体か。このまま押し切れるか…?


 途端、駆けてきた一体のゴブリン。咄嗟に剣を突き出し、薙ぎ払う。すると、そいつがニヤリと笑った。その笑みにゾクリと悪寒がした。刹那、奇声を上げながら斬りかかってくるもう一体のゴブリン。まさかコイツら、初めからこのつもりで…っ!




「神の御心(みこころ)よ、野に咲く花を守る(すべ)となれ…!」




 来ると思っていた衝撃が来ない。あれ?と思って辺りを見ると、あの女性が俺にホーリーウォールを掛けてくれていた。


「あっ、ありがとうございます!」

「私も参戦いたします!」

「いやっ、でも君、クレリックなんじゃ…」

「私だって戦えます!」


 彼女が俺の背中を守るように位置を取る。…クレリックとブースター。何とも奇妙な組み合わせだ。こんなんで本当にいけるのか?

 …いや、やってみせるんだ。


 ギチリ、とグリップを握る手が痛む。大丈夫、大丈夫だ。



 ゴブリンがこちらに向かってくる。それを迎え撃ち、倒していく。チラリと女性の方を見るが、あちらも戦えているみたいだ。…って、杖で殴打していないか!?杖ってそんな風に使っていいのか…?





 それぞれゴブリンを順調に倒していき、ついにはゴブリン隊の殲滅に成功した。

「っ!やっ、たぁ…」

「あの!先程は助けて頂いて、本当にありがとうございました!」

「いや、困った時はお互い様だよ。…ええっと、君は…」

「アンナです!アンナ・エリオット、Dランクのクレリックです!」


 家名持ちなのか!って事は、この子は貴族なのか…?


「エリオット様、先程の御無礼、失礼致しました。どこかお怪我はございませんか?」

「そんな!『エリオット様』だなんて呼ばないでください!それに口調もそんな仰々しくなくても…」

「ですが…」

「今の私はただの冒険者です。それに私はあなたよりランクが下です。冒険者間では、上のランクを敬うものなんでしょう?」


 胸元に下げている冒険者プレートをチラリと見ながら話すアンナ。もし貴族に対して平民の俺がタメ口なのを見られたら、物理的に首が飛ぶんだよなぁ…。でも、この子全然諦めないからなぁ…。まぁ、森の中だからいいか。


「それじゃ、口調は戻すけれど…。俺はフランク。Cランクのブースターだ。」

「フランクさん、今回のお礼に何か私に出来る事はありますか?」

「えっと……じゃあ、ゴブリン達を解体してくれる?」

「はい、喜んで!」





 20近くあったゴブリンの死体が、短時間で全て消えた。アンナは貴族だから、と少し見くびっていたが、解体の手つきの良さは普通の貴族ではなし得ないものだった。


「なぁ、アンナはどうして冒険者になったんだ?」

「えっと、それは…」

 途端に悲しそうな顔をして黙ってしまう。もしかしたら、聞いてはいけない事なのか…?


「あぁ、いや、無理に答えなくてもいいんだ。そうだ、街に戻ろうか。もうすぐ昼だし。」

「…はい、そうですね。」


 よかった、明るい顔になった。


 俺たちは街へと向かう事にした。

 読んで頂き、ありがとうございました!

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