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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

怪盗が人生を諦めていた美女を幸せにしました

作者: 阿川竜一

GREEのコミュニティ『あなたは携帯小説を書きますか?』にも連載しています。

 いきなりだが、自己紹介する。俺は『とどろきじん』。かつては怪盗『ジャック』という名で詐欺団や893、マフィアなどといった悪の組織から金品を盗み、そこから出た被害者などに金に換えて返すといったいわば義賊をしていた。しかし…俺がある場所で盗みに行った先で無関係の人が巻き添えとなってしまった…。これが原因で俺はジャックを降りた。そして会社員生活を始めた。


上司:こらー!轟!またドジったな!


俺は会社じゃ駄目社員の部類に入る。今まで盗み一筋でしかやってこなかった。今は30過ぎているから事情なんか知らない奴らは俺がただの馬鹿だの異常者などとまくし立てている。知るか…。毎日がイヤな思いを抱えながら仕事が終わり、俺は帰宅の電車を降りた矢先だった…。


轟:バッ…!?


駅のホーム。俺の目の前で女性が倒れかかり、俺は盗みで培った身体能力でとっさに飛び出して女性を支えた。


轟:大丈夫ですか!?


女性:貴方は…?


俺は女性を知っている。彼女の名前は『皐月さつきアオイ』。俺が今住んでいるアパートの隣の部屋に住んでいる。たまに食事をお裾分けする関係だ。


轟:俺です!轟です!


アオイは意識朦朧としており、ここでは人目につくので俺はアオイを家に上げることにしたのだった。



 俺のアパートの部屋。駅のホームで倒れかかっていたアオイは意識を取り戻し、俺はアオイから話を聞くことにした。かなり疲れている様子だとわかっていたからだ。


アオイ:轟さん…。ご迷惑をおかけしました…。


轟:気にしないでください。皐月さん。何かあったのですか?俺で良ければ話聞きますけど…。もしかして…仕事のこととか?


アオイ:どうしてそれを…!?


轟:なんとなくですが…。


俺は落ち着いてアオイに問い、アオイはおそるおそる口を開いた。彼女の勤める会社はブラック企業で毎日時間外労働を強いられて身体の疲れが蓄積し、その上で上司である『大牟田厚』はアオイ含めて女性社員達に無理やり「キャー」を言わせたり、マムシを見せるなどといったセクハラ、パワハラなどを行っており、アオイは心も疲弊してしまったのだという…。


轟:辞められないのですか?


アオイ:私も辞めたいと両親に相談したのですが…「甘えるな!」と言われて…。


アオイは会社を辞めたいようだが、両親に反対され、行き場を失ってしまっている。轟は心を痛くする。


轟:よく話してくれましたね。とにかく今は休んでください。


俺はアオイに毛布を掛けてやり、アオイは俺に話して気分が楽になったのかそのまま眠ってしまった。しかし…アオイの安らぎは終わってしまった…。



 次の日の朝。


アオイ:!?


アオイのスマホの着信音が鳴り響き、アオイは目を覚ますと同時にビクビクと顔を青くしていた。轟はアオイのスマホをひったくって電源を切った。


アオイ:駄目です…。轟さん…。大牟田さんが私の家に来るかも…。


轟:その大牟田って奴、俺がぶっ飛ばしてあげますよ!とにかく今は休んでください!


アオイ:でも…このままだと家賃が払えなくなってしまいます…。


轟:それなら俺の部屋に居てください!あっ!えっと…。皐月さんが良ければですけど…。


轟はアオイに下心があって同棲を勧めたわけではなかった。彼女が受けている心身のダメージにいたたまれなくなっていたからだ。


アオイ:轟さんは…どうして私にこんなに良くしてくれるのですか?


轟:実は俺も…。


轟は前に怪盗から足を洗い、会社員生活をしていたものの上述の理由で心身共に疲れていたときに毎朝出勤とときに…。


アオイ:おはようございます。轟さん。今日も一緒に頑張りましょう。


アオイと顔を合わせる度にアオイは笑顔で挨拶を交わしてくれ、それが毎日上手くいかない轟にとっての励み、支えとなっていた。


轟:(毎日俺に挨拶してくれて…。しかも眩しい笑顔…。スッキー!)


自然と轟はアオイに恋心を抱くようにもなっていったのだった。


轟:何気ないかもしれませんけど俺…。皐月さんに助けてもらってましたから…。だから俺も皐月さんの力になってあげたいんです!


アオイ:轟さん…。わかりました。思い切って会社を辞めます!


轟の熱意がアオイに伝わり、アオイは決意した。ひとまず轟はアオイに今日一日休むよう言い、時刻は夜へと差し掛かり、アオイは自室の荷物を轟の部屋へと持ってきて、休んだ。



 夜。轟は顔にアイマスク、黒のスーツ、両手に白の手袋、左肩に黒のマントを装備しており、かつては伝説の怪盗と呼ばれていた『ジャック』へとなっていた。


ジャック:ここが…皐月さんが勤めているという…。


俺はアオイが勤めているブラック企業へとやって来た。またジャックへと戻ってしまうとは…。いいや!悪さじゃない!アオイとその他の女性社員達のためだ!俺は義賊だ!今までだって悪の組織から被害者のために行ってきたことだ!俺が今回ジャックとなったのは会社と例の大牟田とかいうキャーマムシ野郎の実態を探るためなんだ!


ジャック:(監視カメラと盗聴器を取り付けて帰るつもりだが、もしも悪と思しき物があればそれは盗んでおくかだな。)


ジャックはブラック企業に向かって足を踏み出す。


ジャック:(悪いな。皐月さん。)


ピッ!ジャックは出入り口前にあった装置にアオイの社員証を認証させ、侵入した。アオイが寝ている隙にこっそり拝借したのだ。


ジャック:さて。


ジャックは会社のあちこちに監視カメラと盗聴器を仕掛け、こっそりと周囲を確認していると…。


「イヤぁぁぁ!」


ジャック:んっ!?


とある一室から女性の悲鳴が聞こえた。


大牟田:イヤぁぁぁじゃない!「キャー」を言えって言っているんじゃ!ほれほれ!キャー言え!女の悲鳴と言えばそれしかないじゃろが!


あれが大牟田か?マムシ!?うわぁ…。イヤなものを目にしてしまう…。奴はそれを残業している女性社員に見せつけてやがる…。あんなものを…「キャー」を言わせるためだけにアオイを…!本来ならこのまま帰ろうと思っていた俺だったけどアオイのことを考えていたら煮えくり返ってきた…!


ジャック:そんなに「キャー」が聞きたいならお前が言ったらどうなんだ?


大牟田:誰じゃ!?


ジャックは大牟田と女性社員のいる部屋へ堂々と入っていった。


ジャック:汚いもの見せつけやがってよ!


大牟田:お前…誰じゃ!?


ジャック:貴様に名乗ったら腐るんでな!


大牟田:変な恰好しおって…!タキシード仮面のつもりか!?


ジャック:こっちは時間がないんだ。往生するか、抵抗するか?さっさと決めろ!


大牟田:お楽しみの邪魔しよって!あの皐月が今日会社に来なかったから溜まっているんじゃぁぁぁ!キイロイコエ聞きたいんじゃぁぁぁ!


ジャック:はぁ…。


大牟田はジャックにお楽しみの邪魔をされた怒りでジャックに向かっていった。


ジャック:貴様…!ただ悲鳴を…!キイロイコエを聞きたいがために皐月さんの心を傷つけたっていうのか!?毎日お隣さんに笑顔で挨拶してくれる綺麗な人を…!


大牟田はジャックに拳の乱打を放つもののジャックはそれを軽くかわす。ジャックは大牟田の個人的な欲望でアオイを傷つけていたことが許せなかった。


大牟田:誰なんじゃ!お前は!マサトか!?金髪イケメン吸血鬼か!?ロシア人か!?真中か!?


ジャック:悪いが、どれでもない!


大牟田:あべし!


ジャックは大牟田の片足にローキックを喰らわせて体勢を崩した大牟田の背を蹴り落とした。


ジャック:さて、少しお仕置きが必要なようだな。このキャーマムシ野郎!


大牟田:なっ…何をする気じゃ!?キャー!


ジャックは縄を取り出し、大牟田の身体を縛って拘束して一晩放置した。マムシは解放したままで…。


女性社員:あの…。


大牟田の被害者となっていた女性社員はジャックに声をかける。


女性社員:ありがとうございました…。お名前を…。


ジャック:名乗る名はない。警察呼ぶなら好きにしろ。そこの野郎は社会を失うだろう。


大牟田:なっ…何じゃと!?やめろ!ワシは…。


ジャック:貴様は黙っていろ!嬉しそうな声出しやがって!


大牟田:ひっ!わ…ワシにそんな趣味はない…。ワシは女のキイロイコエを…。って縄解けェェェ!


ジャックは2次元の怪盗らしくその部屋の窓から飛び去っていった。


女性社員:かっこいい…。


こうして、一夜が明けた。


 後日。ジャックの活躍によって大牟田の女性社員に対する悪事が会社中に知られ、大牟田はクビとなった上にわい●●罪で逮捕となった。同時に世間では「怪盗ジャックが何年かぶりに現れた」というニュースが流れ、警察の方でも捜査が再開されることとなった。


轟:(おいおい…。警察まで動いてるのかよ…。今回は人助けしただけで大牟田を捕まえるのに結果的に協力しただろうがよ…。)


ジャックは義賊だ。しかし、盗人でもあるから窃盗の容疑となってしまうわけだ。


アオイ:おはようございます。仁さん。


轟:アオイさん。大丈夫ですか?


アオイ:はい。おかげさまで。本当にありがとうございました。


あの後にアオイは無事にブラック企業を退職できた。それから「せっかく住まわせてもらっては申し訳ない」と轟の部屋で家事を手伝ってくれるようになった。


アオイ:ふふ。部屋は綺麗にしないと。


轟:へーい…。


いつしか轟はアオイにため口になり、呼び方も「皐月さん」から「アオイさん」へと変わっていき、アオイも轟の事を「轟さん」から「仁さん」へと変わっていくほどの関係へとなっていった。


轟:美味しい!


アオイ:本当に!?結構自信作だったんだ!誰かに褒めてもらえることがこんなにも嬉しいなんて…。


アオイは料理も上手だった。彼女が轟と同居するようになってからは部屋は綺麗、美味しい食事と轟の心は晴れやかとなり、会社員生活でも徐々にのし上がっていけるようにもなっていった。


轟:(毎日俺のために家事やってくれて…飯も美味くて…出勤のときは「いってらっしゃい」、仕事から帰れば「おかえりなさい」って…。これはもう…スッキー!俺の嫁にしたい…!結婚したい!)


轟は既にアオイの虜となってしまったことは言うまでもなかった。


アオイ:(仁さんはあのときから私の傍にいてくれて…。私を認めてくれて…。これはもう…スッキー!)


アオイの方もあれからずっと近くにいてくれた轟に落ちてしまったようだ。お互いの存在は次第に心身ともに回復していくようになっていった。



 ある日。轟は仕事を終えて帰宅するために駅にいると。


轟:アオイさん。


アオイの後ろ姿が見えたので轟は彼女に声を掛けるとアオイは笑顔で振り向いた。


アオイ:仁さん。


轟:ただいま。アオイさん。


アオイ:実は今日、就職活動でここに訪れていたのです。


轟:そうか…。


轟のおかげで心身ともに回復していったアオイは就職活動を開始した。今度は自分の時間が持てる仕事に就こうとしているらしい。轟はアオイからそれを聞いてホッとしていた。ここは駅…。前みたいなことがあったのでイヤな予感がしていたからだ。


アオイ:私、今まではいい大学に入って、ブラックだけど大手の会社で仕事するのが幸せなんだと思っていました。でも仁さんと居て気づいたんです。本当の幸せは自分を認めてくれる人と一緒にいることなんだって…。


アオイの考えを聞いた轟は意を決して…。


轟:アオイさん。実は俺…。


轟はアオイに自分はかつて怪盗ジャックだったこと、ある事件から盗みを辞めて足を洗ったこと、ジャックに戻って大牟田の悪事を暴いたことを打ち明けた。始めは驚かれたもののアオイは笑顔になり。


アオイ:それでも仁さんが私を助けてくれたことは変わりません。貴方がいなかったら私は…。


轟:もし俺にチャンスがあるなら…結婚を前提に恋人になってはくれませんか?好きです。アオイさん。俺と付き合ってください!


轟はアオイに告白をした…。


アオイ:はい。私…『皐月アオイ』は怪盗ジャックに心を奪われました…。よって…轟仁さんが好きです!


轟:よし!


アオイは轟が怪盗ジャックだと知った上で彼からの告白を受け入れ、2人は恋人となった。


轟:じゃあ、帰るとするか。俺達の家に。


アオイ:はい。今日の夕飯は肉じゃがです。


轟:それは楽しみだ。


こうして、2人は恋人からやがて結婚に至り、いつまでも一緒に暮らしましたとさ。



 Fin ~完~


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― 新着の感想 ―
[一言] {◎テンポの良いストーリーとコミカルな怪盗の活躍に引き込まれ一気に読んでしまいました。アオイさんとお幸せに☆}
2022/02/01 22:35 退会済み
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