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8.それでも新客はやってくる


「…あんた誰? 何で私のベッドで寝てんのよ!」


「……ん?どうかされましたか?」


女の甲高い声で目を覚ました真哉。何やら新たなトラブルの予感。


「…おはよう…ふぁ~あ…ございまふ」


女の横で寝ていたのは見知らぬ女であった。どうやら新たな子羊が迷い込んだようである。


「おおお降りなさいよ!今すぐ!」


無理矢理布団を引き剥がす女。その拍子に子羊は床に落ちる。


「……いたい」


「だ、大丈夫ですか?お嬢さん。どこかお怪我は…」


「あんた誰よ!いつから隣にいたのよ!」


「お、落ち着いてください女神様。彼女もまた僕と同じように不自然にここに呼ばれたのでしょう」


「わ、私は呼んでないわよ?」


「えぇ。恐らくですが一定の時間が経過すると自動的に呼ばれるのだと思います」


「あなた、名前は?」


「…凛」


「凛さんですね。貴女はどのようにしてここに来られたのですか?」


「おしっこしてたら。急に」


「なるほど。僕の場合は歩道橋を歩いていた時でしたが、同じように突然のことでした」


「待って。一つ確認して良いかしら?」


「…うん」


「あなたちゃんと…その、拭いた?」


「…?」


「拭いたのかって聞いたのよ!どうなの!?」


「おしりのこと…あ、ふいてない」


「ままままさか、そのまま私のベッドに潜り込んだってことはないでしょうね!?」


「もぐった。だって紙、ない」


「きゃあああああ!!!」


「うっせええええ!!!」


太陽神もなかなかに空気の読めない奴だったようである。


「と、取り敢えずこれをどうぞ凛さん」


そう言ってウェットティッシュを渡す真哉。紳士の鑑。いや変態紳士。


「…ありがとう」


だが、ここにはトイレがない。


「即席のトイレで良ければ、今から僕が…えいやぁ!」


どこからともなく…(略)


「何でよりによって和式なのよ!」


「い、いや。作ろうと思うのが大きいほど、何故か疲れてしまうんですよ」


万能かと思われた真哉の能力だが、微妙に欠点があったようだ。


「…すごい。どうやったの?」


「関心してる場合じゃないでしょあんたは!さっさと拭いてきなさいよ!」


女に言われそそくさとトイレに入る凛。


「そういえば、女神様はトイレは…」


「それ以上言ったら殴るわよ」


「…失言でしたね」


そうこうしている内にトイレから出てきた凛。そのまま真哉の元へ行き、耳打ちする。顔を赤らめながら。


「え?なになに…?」


「お、トイレあんじゃん!まじで漏れる寸前だったからラッキー!」


遅れて起きてきた綾人がトイレに駆け込む。


「あぁ。心配しないでください。僕が後で何とかしておきますから」


真哉は恥ずかしそうに俯く凛に、ニッコリと微笑む。


「ちょマジ勘弁してくれよ!汚ったねぇな!誰だよ便所汚した奴!」


どうやら和式トイレの犠牲者はここにもいたようであった。


……


「篠崎凛。14歳。嫌いなことは子ども扱いされること」


凛の自己紹介は簡潔だった。


「僕は真哉。この方は女神様で、こっちにいるのが綾人くん」


真哉がまとめて紹介する。


「女神…さま? 神様ならこっちの人の方が適役だと思う。トイレ作れる」


「悪かったわね私が女神で。そういえば真哉はいくつなの?」


「僕は最近18になったところです。なので女神様を除けば僕が最年長ということになりますね」


「女神…おばさん」


「おばさん言うな!トイレも碌にできないお子様のあんたに言われたくないわよ!」


「…む。子ども扱い嫌い。それに、あんな形のトイレ、見たことなかった」


「私だっておばさん扱いされたくないわよ!」


どうも沸点の低い女神である。俗に言う更年期なのかもしれない。


「あんたはマジでいっぺん死ね」


「まぁま、落ち着きましょう。今から朝ごはん用意するので、何か食べたいものはありませんか?」


「何よ、誰だって歳くらい取るのに!もう少し年長者を敬いなさいよ…もう!わたし焼き肉定食!」


「…凛はオムライスがいい」


「わかりました。えー綾人くんはどうします?」


「カレー」


「カレーばかり食べてると栄養偏りますよ?そうだ、サラダをつけてあげましょう」


こうして小さい来客を含めた4人の朝食タイムとなったのである。


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