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4.ただいま転生渋滞中につき


「あはははは!!!」


「うるさい黙れ!このヘタレ無能! ち、近寄るなぁ!」


阿鼻叫喚。地獄絵図とはまさにこのこと。しかし彼らは少し前に来客があったことに気がつかないでいた。


「…あの~。ちょっとすみません」


「あひっ! あひゃひゃひゃ!」 


「なんでこっち来んのよ! あーもう鬱陶しい!」


こんにちは。いや今晩は、ですかな?


「ここは何処なんですか? それに、あの二人は一体…」


さぁ。ただ明確なのは、そこにいるのがただの基地外と我の強い女だということですかね。基地外の方はピコ太郎とも呼びます。


「そ、そうですか…。ちなみに貴方は?」


ナレーターです。以後お見知り置きを。


「…色々と頭が追いつかないな」


「うヒャヒャヒャ!」


「キモい!しね! 日本に帰してやるからいっぺん死んでこい!」


「あのー! 取り込み中のところすみません。ちょっと聞きたいことがあって…」


「何よ! あんた誰!?」


「いや、さっきここに来た者なんですが…あ、僕は柿崎真哉といいます。真実の真に木村拓哉の哉と書いて、真哉」


「はぁ!?」


「だから、真実の真に…」


「知ってるわよ!聞いたわよ! 何で呼んでもいないのに居るのって聞いてるのよ!」


「それが僕にもさっぱりで…」


「あぁーもう!!なんなのよ全く! イレギュラーなやつ多すぎ!」


そう言って頭を抱え出す女。


「…ナレーターの君は、その立ち位置ってことで良いのかな?」


はい、概ね合っています。


「……そ、そうか。うん」


「アヒャh……っ!」


「き、君は…確か、ピコ太郎くんでしたね。初めまして。僕は…」


先ほどまで放送禁止用語の塊だったような男とは打って変わり、男は真剣な顔で真哉の言葉を遮りながら近づき…手の平を真哉に突き出した。


「ゲーム」


「え? げ、ゲーム? 一体なんのことですか?」


「だからゲームだよ。持ってんだろ?」


「あ、あ~…」


ちょっとコイツ何言ってんのかわかんない。と言った目で私を見つめる真哉。ごめん。ナレーターの私にも分からない。


「ゲーム出せっつってええんだよ!!!おおああああ!!!」


「ひ、ヒィいいいい!」


突然発狂し、真哉に襲いかかる男。魔王より先にコイツを退治した方が良い気がする。


「ゲッツ!」


身ぐるみを剥がされた真哉はぐったりしており。男は恍惚な表情でゲームをプレイし始める。


「この無能!なに簡単に渡してんのよ!せっかく私が頑張って壊したのにっ! つか何でお前もゲーム持って来てんだよ!修学旅行じゃねーんだぞ!ったく!」


「ひいいいいいい!!!」


登場5分経たぬ内に見知らぬ他人から鬼のような洗礼を受けた真哉であった。


……


「おい低脳」


ほぼ初対面の男に、女はこのようにあだ名を付けた。


「は、はい…」


「もう転生すんのお前でいいや。なんか面倒臭くなって来ちゃったし」


女はピコ太郎ではなく低脳を、未来の勇者へと選んだのであった。


「ちょっと待って…てことは、僕はこれから知らない街へ転送され、無能スキルが実はチート並みで、猫耳ようじょや金髪美女とハーレムしながらスローライフを送り、やがてちゃっかり魔王を退治して英雄として祀られるってことですか!?そうなんですね!」


なんと飲み込みの早い低脳なことか。もはや中脳でも良いだろう。そして暑苦しい。


「そうよ中脳。これからあなたは私から恩恵を授かり、魔王を討伐するために異世界へ転生されるのよ! 猫耳だって金髪だって黒髪だって何だってあるのよ!」


「おぉ!女神よ! 僕はこんな展開をずっと待っていたんだ! まさか本当に、夢が…夢が叶うなんて!」


「ふふっ、そうよ。貴方は勇者になる逸材として選ばれたのよ。そしてもう一回、女神って言って」


「女神様! おぉ、女神よ!そなたは美しい…」


「ガッハッハ」


絵に書いたような大口を開けて踏ん反り返る女。唾が飛び散る。汚い。しかし何ということか、女は女神だったのだ。


「あんたの前に転生しようとしてたんだけど、なんか転生したくないとかほざく頭のおかしい奴でさ?あ、そこにいる奴なんだけど。とにかく困ってたところなのよ。だからナイスファインプレー!」


真哉に向けて親指を突き上げる女神。


「彼はなぜ、異世界に行きたくないのですか? はっ!何か大いなる試練が…」


「そんなものナイナイ。アイツに聞いてみたらいいんじゃない?聞いたってどうせ理解できないと思うけど」


「そ、そうなのですね…」


「てことであんな奴ほっといて、私たちはサッサと準備しましょうよ」


「はい!女神様!」


「うふふ」


こうして物語の主人公は移り変わってゆくのである。そう、誰が主人公となってもおかしくはないのだ。


「…はい、これでおしまい、っと!」


「す、すごい…これが僕のスキル」


「あんたもステータスは平均ってとこね。よかったわね、正常な脳で」


真哉が大脳まで進化する日はそう遠くないだろう。


「で、どんなスキルだったの?」


「えーっと…『創造』って書いてあります」


「げ、まじ!?大当たりじゃん!凄いよ真哉くん! きっと何かもの凄いスキルだよそれ!」


「で、ですよね! 女神様に喜んで貰えて光栄です!」


「ちょっとそこのナレーターらしき人。これどんな能力か教えなさいよ」


教わる態度とは思えない形相で睨みつける女。いや、女神様とお呼びさせていただきます。私は苦し紛れに答えた。いや、答えるしかなかった。普通に目が怖い。


「簡単に言えば、頭に思い浮かべたことをなんでも生みだすことができる…ってことね」


「ははは、チート通り超して、もはや怖いですな…あはは」


「ちょっとアンタ、試してみなさいよ。とりあえずなんか出してみて?」


「そうですねぇ。じゃあ…えいっ!」


真哉が念じると、どこからともなく「炬燵」が出現したのだった。まさに奇跡としか言いようがない。早速入るしかないだろう。


「すっごーい!何で炬燵なのか意味不だけどー! どうやら貴方の能力は本物のようね」


そう言っていそいそと炬燵に潜る女神であったが、あることに気がつく。


「…全然あったかくないんですけど」


「え、本当ですか?」


そう言いながら真哉が炬燵の中に潜る。


「ちょ…何してんのよ!見えるじゃないのよ馬鹿!」


どうやら見えないところで制裁が行われたようである。


「み、見たところ不具合ではなさそうですね。おそらく電源が刺さってないからでしょう」


「電源…」


電源…


「どこかにコンセントがあれば…。でもこんな場所には流石にな…」


「あるわよ。電源ならあそこに」


女神は男を指差す。


「ん? ありませんよ?」


「あるのよ」


そう言って炬燵から出た女神は、男の元へと歩いてゆく。相も変わらず男はピコピコなう。


「彼と電源と何か関係が?」


女神は男を説得しようとする。も、反応がない。ので、


「いいから来いつってんだろ!!!」


強制的に(力技で)炬燵の下へ連行してきたのである。


「そこ、座れ」


「…はい」


「め、女神様? 一体何を…」


男をこたつの隣へと座らせた女神は、行き場のない電源コードを手にし、


ぶすり。


コンセントを男の両鼻に突き刺したのである。


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