22.失敗
「ごめんね、凛ちゃん。私のせいで…」
「…凛がもっと早く女神に相談してたら」
リビングに残った二人は、それぞれ自分を責めていた。
「死神なんてスキル、今まで無かったし、もっと他のスキルになると思ってたのに」
「凛がスキルなんて欲しいって言ったから…」
過去を責めても何も変わりはしない。そんなことは頭では理解している。
ただ、後悔することだけが、自分を守る唯一の慰めだったからだ。
「何で止めたんだよ!真哉!」
「綾人。君はもう少し自制すべきだ」
「もう俺が転生すりゃいい話だろ!?お前もそう思ってんだろ、なぁ!」
「それは違う」
「何が違うんだよ!言ってみろよ!」
「転生したとしてもカウントダウンは続く可能性は高い。なら今この場所で解決策を考えるべきだ」
「スキルを無くすなんてできねーじゃねーか!他に方法があるなら言えよ!ないだろ!」
「ある! きっとあるさ!」
「ねーんだよ!」
「もっと冷静に考えよう。綾人」
「はっ!いつもそうだよなお前は。真面目の真哉様だもんな!死ぬかもしれねーのに何で冷静になれんだよ!」
「僕だって死ぬのは怖いさ。だけど喚いたって現状は変わらないだろ」
「違うね! リーダーぶりたいだけだろ? 良い面してっけどよ、どうせ腹ん中では見下してんだろ!?」
「誰かがまとめ役に立たないといけない場面はあるさ。それに皆のことを見下してなんてない」
「お前みたいな偽善者が一番大嫌いなんだよ!! ああ”あ”!クソ!!」
「ここで仲間割れしたって何も解決しない!」
「うるせぇ!!」
「とにかく、今日は休もう。一旦頭を冷やした方が良い」
「あのクソ女のせいで!俺の人生っ!クソ!クソ!!」
「一旦…」
「あああああ!!!!」
「……はぁ」
「アイツ…!」
「……」
「何が私のせいだ!なのよ! あーもう、ほんっと腹立つ!」
「綾人、すっごく怒ってる…怖い」
「放っておけばいいのよアイツなんか」
「……」
「こっちから謝ってあげたってのに!少しは静かにしろっ!」
「……」
「あ、ごめんね…。凛ちゃんを責めてるわけじゃなくて…」
「女神、ごめん…」
「あー…ちがくて…!」
「……」
「…あ、凛ちゃん?」
「行っちゃった…」
「どうしてこんなことになっちゃったの」
『どうしてこんなことに…』
<凛のせいだ…>
【あいつのせいだ!】
「わたしのせいなの?私が全部悪いの?」
『誰も悪くない…。なにか方法を探さないと』
<嫌われた…>
【あいつが憎い!憎んでる俺が嫌いだ!】
「もう、どうもしたくない…」
『どうにかしないと。みんなが離れ離れになってしまう…』
<そうだ!凛が死んだら…きっとスキルも…!>
【そうだ。あの女をどうにかすれば…。きっとカウントダウンも】
「そうだ!真哉くんのスキルで…! …私…また人を頼ってる」
『なんで僕は大事な時に限って役立たずなんだ!』
<痛いのなんて嫌だよ…でも。みんなに嫌われる方がもっと嫌だ…!>
【クソ!!どうすりゃいいんだよ!】
「自分でなんとかしなきゃ! 太陽神様…!どうか私に力と勇気を…!」
<誰にも頼りたくない! 嫌われたくない!>
『僕は…』
「私は…」
【俺は…】
<凛は…>
欺瞞 怠惰
疑心
嫉妬
憎悪 依存
不満
逃避
虚栄
孤独
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反対
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現実
行動
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倫理 無実
社会
輪廻
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現在 欲求
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許し 承認
救済
繋がり
共同体
明瞭
理想
包摂
無罪
慈愛
未来
無
神
時間
人
知
生
宇宙
永遠
『また失敗か』