2.初めまして。ナレーターをしている者です。
「で、あんた誰?」
「綾人です」
「いや、違くて、さっきから我の強い女だの、変な女だの言ってるコイツ」
「…さぁ?」
「いきなり出てきたよね。あんたの友達か何か? 私こんなやつ一緒に呼んだつもりないんだけど」
「むしろそっち側じゃねーの?」
「いやいや、こんな奴知らない。ここにはずっと私しかいなかったし」
「へ~」
「で、誰?」
…あ、私?
「あんた以外に誰がいんのよ」
私はただのナレーターです。ちなみに変な女と言ったのはこちらの男です。
「は? なに言ってんのコイツ?」
「さぁ」
害虫を見るような目を向ける女。やはり我の強い女である。
「強くねーし! そんな風に見てねぇし!」
「悪い。俺はみてた」
「…え?まじ?」
とまぁ、こんな感じでお送りしてる次第でございます。
「だから何なのよ一体! もう訳わかんない!」
混乱する女を尻目に、ピコピコとゲームに熱中する男。それはピコ太郎。
「」
あ、ごめんなさい。色々と。
「あ、もしかしてさっきのあんたのユニークスキルに関係あるのかも?」
「『真実を追う者』ってやつか?」
「そうそう、初めて見るステータスだったし、むしろそうじゃないと納得できない」
「って言ってるけど、どうなんだ?」
そうかもしれないし、そうではないかもしれない。
「あーもう! ハッキリしなさいよ!」
何でもハッキリさせないと許せない性格なのか、女は憤っていた。
「そうよ!納得できない!」
女は進行そっちのけで、見知らぬナレーターに食いつくのであった。
「誰のせいだよ!お前だよ! そうだよ、私は綾人を転生させないといけないのよ!忘れてたわ畜生」
「えー、別に行きたくない」
「この件り何回めなのよホント…勘弁してよ」
男と女は共にこの先の展開に頭を悩ませるのであった。
……
「」
「…ピコピコ」
……
「解説しろや! 何も分かんねーだろ! 読者置き去りか!」
沈黙を破ったのは女だった。ピコピコ鳴らすのはそう、男である。
「んなもん誰でもわかるわ! はいはい。で?私が綾人の転生準備を進めれば良い訳ね?」
誰でもわかるようなことを確認する女。早くしろと言いたい。
「あんた喧嘩売ってんの? 高く買うわよ?」
「……ピコピコ」
「お前はさっきから何なんだっ! お前が行くんだよ!魔王倒しに!」
女の厳しいツッコミと手刀が男を襲う。
「「…あ」」
勢いで態勢を崩した拍子に、男の手から板が落ちてしまう。
「やべっ」
「…」
放り出された板を無表情で見つめる男。何を考えているのだろうか。ナレーターの私には分からない。
「ご、ごめんなさい」
すぐに謝ることのできる女。きちんと教育を受けた証とも言える。
「あんたはいちいち一言余計なの」
それに対し男は、無言で板を拾い、再起動を試みる。
「……」
も、電源がつかないことが判明。
「えーっと、ほらあれよ! あんたが変なもの持ってくるのが悪いってゆーか、そもそも変なスキル選ぶのが悪いってゆーか…私が一生懸命進行しようとしているのに全然話を聞こうとしないのが悪いってゆうか…なんかごめん」
必死に弁明、言い訳をしようとするも全て男への愚痴になってしまう女。哀れ。
「……」
そしてこの場で最も哀れなのは、紛れもなくピコ太郎である。自業自得とも言える。
「一番えぐいこと言うのは間違いなくあんたよ」
「……ふんぬっ」
男は徐にスキルを使い、何事も無かったかのようにゲームを再開する。
「え? え? ちょっと待って!?」
その異様な光景に驚きを隠せない女。
「なんで治るのよ! そもそもスキルにそんな力があるなんて何で知ってんのよ!つか私の謝罪返して!ねぇ!話聞けええええ!」
女の咆哮が響き渡る。